優れた投資家はユニークさを問い、残念な投資家は業績予想を問う

(ライター:石村研二)

社長業を担っているのは実はCFO?

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):実はCFOって、海外投資家IRが好きな人多いね。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):CFOが実質的な社長業をやってはる会社って結構ありますよね。
CFOが海外IRに行った方がいいですよって社長に言わないのは、実は自分たちが社長業をやりたいって思っているのが背景にあるのかもしれない(笑)

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):海外投資家IRをステークホルダーへの「義務」とだけ捉えてしまっているのかもしれへんね。
そうじゃなくて、自分の経営に対するリトマス試験紙だったり、フィードバックをもらう「権利」だって捉えると、見え方も随分と変わってくるんちゃうかな。一回一回のミーティングをしっかり準備して臨むと、「今の話はええ気づきがあったな」だとか「よし検討してみよう」って考える機会になる筈なんやけどね。

小林:限られてる理由は、単純にトライが足りてないからって理由が多い気がする。
上手くいった例は、アイスタイルの菅原さん。時価総額が小さかったときからずっと海外IRを回っていて、Capital(※世界有数の機関投資家)に注目されるようになったし、Capitalが入ったことでシグナリング効果が出て、時価総額がぐんぐん上がっていった。時価総額が小さいと相手にしてもらえないという風に自分から遠慮してやらない会社が多いように思うけど、「めっちゃええ会社やから見てくれよ」って真面目にやれば、時間はかかるけど動いている途中で何かが生まれることもあるっていう好例だと思いますよ。

村上:実際どれくらいIR部門とかCFOの人が取締役とかCEOにフィードバックしてるかっていうのもポイントちゃうかな。色々と聞いていると、フィードバックはしっかりしているけど、形式的なもの止まり、というケースも少なくない。経営にフィードバックするっていう意識でのフィードバックまで昇華はされてないことが多々あるのかなと。
海外出張で仕事してきました、何か義務を果たしてきました、っていう報告。それに社長はご苦労って言う。これだけだと、IRが大事って思ってもらえないのも無理もないんでしょうね。

「お前、リレーならメダル狙えるんちゃう?」

小林:歴戦の強者の投資家達からのフィードバックで面白かったのが、自分の立ち位置を他社と差別化して説明することを求められ続けること。自分たちのユニークさの新たな側面を知るきっかけになりました。
例えば最初、「日本の国体で3位です」みたいな話をすると、「お前たいして速くないやろ」って言われる。けれど、よくよく話してるうちに「実はリレーは上手いんちゃうか?」ってことが浮かび上がってくる。「リレーならメダル取れるんちゃうか」と思ってリレーの練習をしていたら、そのうち本当にメダル取っちゃった、みたいなね。「業績、上がんの?下んの?」といった会話とはわけが違う。 日本の場合、財市場だけで見てしまいがちやけど、資本市場でいろんな会社を見てる方は、どこに差があるかっていうのをよく見てらっしゃるよね。

村上:スタートアップではニッチ市場を攻めて、スケールする前は大手との競争に晒されることなく収益が上がるケースもあって、クオリティが良ければ利益が出て上場できてしまうこともあるけれど、一方で上場後の資本市場が本当に求めているのはスケールするか否か。上場すると小さな市場のニッチ戦略だけだと厳しくなる。かと言って大きな市場を狙い出すと、大手との競争に真正面からぶつかる。相手の戦力との相対感やユニークネス、相対的な差別化要因がとても重要になる。
投資家は大多数の企業経営者の話を聞いているわけだから、相対的な目を持っている可能性が高い。一方、経営者の方はどうしても自分たちの事業は自分が一番分かっているという基準で考えてしまいがちではある。
もちろん、自社の事業を深く理解しておくことは経営者として非常に重要なポイントだけれど、ビジネスには自社だけではなく、市場と競合がついて回るということも忘れちゃいけません。

第1回 上場したら会社は1銘柄。スタートアップが直面する現実

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第5回 優れた投資家はユニークさを問い、残念な投資家は業績予想を問う

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第7回 スタートアップは二度死ぬ?投資家リテラシーの谷

第8回 先発のVC、抑えの機関投資家。ところで、中継ぎは?

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第10回 株主総会はなぜ被害者集会化するのか