上場したら会社は1銘柄。スタートアップが直面する現実

シニフィアンの共同代表3人が、ほろ酔い気分で放談、閑談、雑談、床屋談義の限りを尽くすシニフィ談。3人とも兵庫出身の関西人とあってか、やたらと早口、やたらと長話。全くまとまる気配のない現場を無理やりねじ伏せて文字に落とし込んだ本企画。第1回のテーマは「ポストIPO」です。

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朝倉 祐介
シニフィアン株式会社共同代表
ブログを書くのがめんどくさくて仕方ない人。シニフィアンスタイルの作成のために、数年ぶりにHTMLをいじった。
特技はいつでもどこでも自在に鳥肌を立てられることだが、活かせる機会が全くない。
profile_murakami
村上 誠典
シニフィアン株式会社共同代表
3人中最も長くスーツを着ていた反動か、この夏は専らTシャツ、ショートパンツ、サンダルを愛用する。
メラノサイトが敏感な肌の持ち主。日焼けの跡が尋常じゃない。
profile_kobayashi
小林 賢治
シニフィアン株式会社共同代表
シニフィアンスタイルの撮影担当。写真にうるさい。かつては20台のカメラを保有していたが、今は7台に減少。
共同代表の2人から「コバケンの体重が経営リスク」と指摘され続け、4月から10キロ以上の減量に成功。プロフィール写真よりも少しシャープになっている。

(ライター:石村研二)

上場したらワンオブゼム

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):私、ブログ書くの嫌いなんです。時間かかるし、めんどくさいし、なるべくならやりたくない。そこで、3人がいつもの調子で話した内容をそのまま書き起こして、プロの力で上手いことやったら、なんとなくそれっぽいコンテンツに仕上がるんじゃないかな~と。プロの力で。
そんな淡い期待を寄せつつ、ひとまず実験的に試してみよう、箸にも棒にもかからなかったら諦めよう、そんな勢い任せで始める見切り発車の企画です。どこに行き着くのかは全くわかりませんが、とりあえず話の出発点は決めておこうということで、今日のお題はポストIPOです。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):ポストIPOということだけど、上場したら企業はどう見られるかということを端的に表した言葉が最初に頭をよぎりました。「上場した途端、会社は“銘柄”と呼ばれる」。元ネタはみさき投資の中神さんなんだけど、上場企業といっても投資家からするとOne of themでしかないということを如実に突きつけられる表現で、発行体からするとやるせないなぁと。
非上場企業に対しては投資のチャンスが限られているから、基本的には投資家側も「投資させてください」っていうスタンスであることが多いわけだけど、上場した途端、投資家からは「別にお前じゃなくてもいいよ」っていう扱いになる。上場っていうのは、発行体と投資家の関係性が著しく変わるイベントだなっていうことを思い知らされた言葉でした。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):上場する前は家族の輪の中で「あなたが一番よ」って言われていたのが、上場した途端に世間の大海原に放たれて「一人でなんとかしろ」って扱われるみたいなもんですしね。

朝倉:なんだかそれまでちやほやされていたエリート大学生がいきなりドブ板営業の会社に飛び込んだような感覚ですね。

グローバル基準での相対評価

村上:上場する前は自分の身長が去年よりどれくらい伸びたのか、過去の自分との比較で評価されていたのが、上場した途端、他人との相対的な評価になって、お前より身長高いやつなんていくらでもいるよって言われてしまうことのギャップはありますね。

小林:確かに、急に絶対値から相対値に変わるっていうのはあるね。LAに大手機関投資家の名物ファンドマネジャーの方がいるんやけど、彼の場合、アリババやFacebook、テンセント、Amazonなどのグローバルテック企業に既に投資している。そんな彼に経営者やCFOが会いに行くと、「彼らと比べて、あなたがたは一体何がすごいのか説明して」と言ってくる。オリンピックでメダリスト予想するときに、ボルトやフェルプスみたいな有力メダル候補がごろごろいる中で、「え?日本の選手?何の競技?」っていう感じ。 グローバルテックの人からすると、会社はそれくらいの相対感で見られているということやね。

朝倉:なかなか大変ですよね。VCから出資を受けて良い関係を築いていたスタートアップだと、上場前は周囲から暖かく応援されていたのに、上場するとシビアな現実も突きつけられてしまう感じはするのかなと。

村上:日本の上場って、昔の元服みたいな感じかな。ある日を境に急に大人として見られてしまう。それまでは子供基準で見られてたのが、急に他の武士と比較して立派な功績あげないといけない。もちろん期待も大きいんだけど、それに答える素地が十分に仕上がっているとも限らない。不釣り合いな状況に置かれかねない。

上場企業が対する3つの市場

朝倉:よく上場企業って3つの市場に晒されているって言うやないですか。財市場と労働市場と資本市場の3つ。財市場で自社の商品が他の会社より魅力的かどうかを比べられるだとか、労働市場で自分達の会社の職場環境が他の会社よりも魅力的に映っているかどうかっていうのはよく分かると思うんですよ。ただ資本市場ってその2つに比べると、感覚的には少し分かりにくいんじゃないかと思うんですよね。

村上:確かに、ほとんどの人は資本市場と向き合った経験ってないわけやしね。

朝倉:業績も悪くないし、利益だって出ているのに、マーケットが織り込んでいた水準まで達していなかったばかりに、株価が落ちたり、株主がめちゃめちゃ怒っていたりするのを見て、「なんでなん?」と思ってしまうのも無理はないでしょうね。自分がコミットしていたわけでもないのに、アナリストや投資家から過剰に評価されて、その結果怒られても、「それは、みなさんが自分で考えてご自身のリスクの下で買ったんちゃいますか」と感じてしまう部分も、感情としてはどうしてもあるのかなと。
本来、そういった市場の期待値をコントロールすることも含めて経営者の責任ではあるんでしょうけどね。

村上:資本市場はグローバルやしね。上場によって、突如異文化コミュニケーションが求められる、みたいな。アイデンティティを問われて、急にスケールも文化も全く違う世界で、勝負しないといけない。

小林:こうしたステージ感の変化っていうのは多くの会社が共通して経験することでもあるし、課題が山積してるんじゃないかな。
上場するまでは、自分たちのことをよくわかっている投資家、言い換えると、自分たちに好意を持った理解力のある人と話してたのが、上場してからは急に会ったこともない人を多数相手にしなきゃいけなくなる。しかも、上場した直後は規模や流動性の関係からロング投資家がガッツリ入る可能性はほぼないから、短期目線の投機的な投資家も少なくない。極端なケースだと、そういった人達から「上がんの?下がんの?」みたいに聞かれて「なんでこんな事ばっかり聞かれなあかんねん」ってなってしまうのかなと。 こういう考え方のギャップが生じるような場面はなんとかしていきたいですね。

第1回 上場したら会社は1銘柄。スタートアップが直面する現実

第2回 スタートアップは東大生の夢を見るか?

第3回 『信長の野望』に学ぶスタートアップと上場企業の採用戦略

第4回 孫さんから経営アドバイスがもらえる!?そう、上場企業ならね

第5回 優れた投資家はユニークさを問い、残念な投資家は業績予想を問う

第6回 「上場企業よりも非上場の方がガバナンスが利いている」仮説

第7回 スタートアップは二度死ぬ?投資家リテラシーの谷

第8回 先発のVC、抑えの機関投資家。ところで、中継ぎは?

第9回 楽天はなぜ球団を作れた?上場メリットってなんだ

第10回 株主総会はなぜ被害者集会化するのか