INTERVIEW

【モルフォ】テクノロジーを原点に、成長の芽を育て続ける投資・人材戦略 Vol.3

2018.03.07

スマートフォンをはじめとするさまざまなカメラに、最先端の画像処理技術をソフトウェアで提供するモルフォ。同社の平賀代表取締役にさらなる成長を志向した経営資源の活用について聞いたインタビューの第3回(全3回)。前回の記事はこちらです。

(ライター:石村研二)

今後の成長を見据えたリソース配分

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):今の御社は、利益も出ていて株価も悪くない状態で、30億超の資金があります。ある意味、「踊り場」と見ることもできると思います。次なる成長に向けて、その資金をどのように活用していくのですか?

平賀督基(株式会社モルフォ代表取締役。以下、平賀):財務戦略はまだ決めきれていないんですが、一つ取り組もうとしているのが、スタートアップへの投資です。テクノロジーの目利きができるメンバーが社内にいるんです。すでにコンセプトという10人程度のスタートアップに資本参加させてもらっています。ただ、なかなかスケールしないんですよ。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):テクノロジーが好きな研究者肌の方は、あまりビジネススケールに強い意志がない場合もありますね。

平賀:僕もそうですけど、研究者っていいテクノロジーに触れていられれば幸せ、というところがありますしね。

村上:平賀さんご自身の時間の使い方についてお聞きします。経営に割く時間が増す一方で、テクノロジーの強みもキープしなければ、そもそも会社の軸となる競争優位性がなくなってしまいますよね。経営者とCTOという役割を、どのように使い分けられているんですか?

平賀:IPO直後までは、半分以上は自分でエンジニアリングしていました。ただ、ここ1-2年、ウィークデイは8割が経営で、開発が2割くらいですね。でも優秀なエンジニアがいるので、大丈夫だと思っています。本音を言うと、理想は自分の全ての時間をエンジニアリングに当てたいんですけどね(笑)。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):これから新領域に進出する際、個別の技術開発プロジェクトというよりは「このデータとこの技術があればこんなことができる」という、ビジネスディベロップメントとプロダクトディベロップメントの両側面を持つプロジェクトになっていくように思います。そのプロジェクトを始めるイニシアチブはどういう方が担われているんですか?

平賀:営業だろうが技術だろうが管理職だろうが、思いついた人がやる感じですね。

村上:では、さらに開発資金を投じるかどうかの判断はどのようにされているんですか?

平賀:開発にかける資金の振り分け方は、われわれくらいの規模の会社ではそれほど悩むことはありません。1つのプロジェクトを、3~4人で半年ほど進めたところでお客さんに見せてみて、「良い」と言われればさらに改善して行き、「お客さんから引きがなければやめる」という方針なので。

村上:では、ある程度自由にマネジメントされているんですね。

平賀:そうですね。ただ、コスト意識はちゃんと持ってもらうようにしています。どのプロジェクトにどれくらい工数を割いているかは可視化しています。それをもとに、月1回の幹部会で開発を続けるかどうかの判断をしているので、完全に放置というわけではありません。

村上:現状では1つ1つのプロジェクトへの投資額はそれほど大きくないということですが、今後ライセンスで売れるものを出していくとなると、少し骨太のプロダクトを開発するフェーズが来ると思います。そのための組織づくりなども今後進めていく予定ですか?

平賀:それも必要ですが、デンソーや医療系のエスアールエルと業務提携をし、一緒に研究開発をさせてもらっているので、その中から骨太のものが出てくるのではないかとも思っています。

AI時代にバリューを出す人材

小林:御社がこれから非連続に成長していくために一番不足しているものは何だとお考えですか?

平賀:それで言うとあらゆる面で足りていないでしょうね。たとえば人材も、今日本は景気がいいということもあって、なかなかいい人材を採用できないんです、エンジニアでも、エグゼクティブでも。

村上:大手と提携してビッグデータへのアクセスがある点は、エンジニアの採用にとって強みではないですか?

平賀:今はAIバブルですから、AIの経験がある学生が当社に就職するパターンはあまりありません。今、プログラムのチャレンジ問題をウェブに載せて、それが解けたらレジュメを送っていいという応募をやっているんですね。そこから数学系や物理系の学生が応募してくるケースが多いんですが、地頭もいいし数学的センスもあるので、1年くらい経験すればAIの分野でもトップクラスの人材になるのではないかと考えています。そういう人たちを育てるほうがいいと思っています。

今のAI人材のバブルを見ていると、1980年代~90年代に「ソフトウェアエンジニアが足りなくなる」と言われていた時期に似ている気がします。今では、IT・ソフトウェアの分野で、下請け・孫請けにいる人達がブラックな環境で働かざるをえないように、AIの分野でも、5年もしたら同じことが起きるんじゃないかと思っています。

朝倉:なるほど。エグゼクティブ人材で言うと、昨年、課徴金納付命令勧告が出て、その後経営陣の変更がありました。これは勧告も影響しているんですか?

平賀:経営陣の変更は課徴金とは別の文脈です。ただ、バックオフィスの人材のテコ入れはしています。勧告については異議申し立てをしていて、結論はまだ出ていませんが、われわれの方にも改善しなければいけない部分があったことは確かなので、そこは変えていかなければならないと思っています。

ここは意見が分かれるところだと思いますが、バックオフィス系はルーティン業務が多くて、昨日やっていたことを今日も当たり前にやり続けるという文化を持つ人が多いんです。ただ、それでは進歩がない。これからAI化によってルーティン業務が置き換えられていくと、そういった人材も、付加価値を出さなければならない。そういう意味でも、バックオフィスは業務のやり方から変えていかないといけないという意図もあり、人材の面でテコ入れを行っています。

モルフォ 2017年10月期 株主説明会資料より

村上:なるほど。今日はモルフォの事業の変遷について詳しくお聞かせいただき、ありがとうございました。

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