【マネーフォワード】日本1位のフィンテック企業からグローバルへ Vol.3

「全ての人のお金のプラットフォーム」を目指す、マネーフォワードの辻社長に同社の可能性を伺うインタビュー(全3回)の最終回。前回の記事はこちらです。

成長のために必要なのは人材

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):昨今、フィンテックに対する注目度がどんどん上がっていますが、実のところ、かなり幅広い事業領域をまとめて「フィンテック」と称していますよね。仮想通貨もあれば、決済の話もあれば、会計ソフトもPFMもある。御社として、今後はどういう事業を押さえていくのか、お考えはありますか?

辻庸介(株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEO。以下、辻):ユーザーさんとの接点を持たせていただいているので、そうした接点を経由してコンテンツを提供していく形になるとは思います。僕たちはあくまでインターフェイスですし、これだけ新たな事業やサービスが続々と立ち上がっていると、全部を自分たちでやるのは無理なので、APIでつなぐなどして、世の中の素晴らしいいろいろなサービスを提供する入り口になろうと思っています。

小林:たとえば楽天のように、プラットフォームの上にカード会社や銀行を乗せていき、自社独自の閉じた経済圏を築いていくというやり方もありますよね。そうではなく、あくまでオープンなプラットフォームとして、他社のサービスにも使ってもらうというスタイルを徹底するということですか?

辻:そうですね。僕らはユーザーさんにとって何が良いかが、一番大事だと思っています。選択肢が1つだけあるのよりも、良いものが複数あって選べたほうが良いじゃないですか。だからプラットフォーマーとしていろいろなサービスを提供するほうが僕らのやり方に合っていると思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):今あるPFMとクラウド会計という2つの事業をプラットフォームとしてまず広げるというのはわかりますが、提供するサービスの中でキラーコンテンツとなりうるものが出てきたとして、それがないとユーザビリティが上がらないという状況が見えたとすると、3つの事業を走らせたほうが良いとなる場合もありますよね。現時点ではそのようなサービスが出てくる可能性を想定しているのか、それともあくまで2事業にフォーカスして会社経営を続けるのか、現時点ではどちらの方向に行きそうだとお考えですか?

辻:いや、めちゃくちゃ鋭いご指摘ですね。今はユーザー基盤をしっかり広げていくことが第一だと考えてていることは確かです。ただ、おっしゃるようにこの先、フィンテック領域でキラーコンテンツが出てくる可能性はあります。そのときにどうするのかということは、社内で議論しています。

そこで重要なのは、まずそのキラーコンテンツが何なのかということですね。たとえば個人だと送金サービスがそうなるかもしれませんが、果たしてそうした事業を僕らが手がけて勝てるのかということですね。それと、リソースです。ベンチャーではリソースが限られている中で、既に2事業も運営しているので、さらに事業領域を広げるためには人材がボトルネックになるだろうと考えています。

MF KESSAI株式会社という新しい会社を、完全にオフィスも分けてスタートアップとして立ち上げているんですが、30歳の冨山直道と25歳の新卒1号社員が取締役、他にも若いメンバー中心となって取り組んでいます。彼らがいないとできないんですよ。
だからキラーコンテンツとなる事業を担える人材があれば、そこに張るのですが、できる人間がいないなら無理ですよね。人が全てですよ。人ってPLではコストにしか出ないですけど、BS上の一番の価値じゃないですか。

村上:金融機関では「人がアセット」とよく言います。実際、クラシックな金融サービスではそれは事実だと思うのですが、フィンテックの世界もそうなのかもしれませんね。

金融サービス全般に言えることは、信用のレベル感を高く保ち、本当にインテグリティがある人がやらないと、最終的にサービスとしての価値が落ちるということです。そういうインテグリティを持った人材は希少だと思いますが、そうした人材を金融サービスだからこそ重視していらっしゃるんですね。

辻:僕らみたいなセンシティブな情報をお預かりしている会社の場合、中身が見えないとお客様も不安ですよね。上場したことには、そういう意味もあります。金融機関との提携の時もそういう話がありましたし、パブリックになることで我々の内側を外に向けてオープンにするというのが一つの狙いでした。

それと同時に、上場する過程で管理部門や社内体制が強くなったのも良かったですね。今回、パブリックカンパニーになる過程で、会社として非常に成長して、社員みんなの意識も変わりましたし、人材を育てることもできたと思います。

グローバルへ

村上:今は国内のみでサービスを運営していらっしゃいますが、金融サービス全体で見ればグローバル化していく部分もあると思います。海外に対してもアンテナを張っているんですか?

辻:今はかなりグローバルのフィンテック事情を見ていますね。情報は集めていますし、どういうオポチュニティがあって、僕らがやるとしたら何ができるのかという部分を考え、次の一手を検討しています。僕らはたとえばソニーのような、日本を代表するグローバルカンパニーになりたいんです。将来的に日本のマーケットはどうしても小さくなっていくので、先を見るとグローバルを視野に入れておかないといけないと思っています。メルカリさんみたいに早い段階から自力でグローバルを目指すのか、孫正義さんみたいに買収攻勢でグローバル化を図るのか、戦い方はいろいろあるので、どれが良いかは毎日悩んでいます。答えはまだ出ていませんね。

それでも現段階では日本のマーケットがすごく伸びているので、そこで橋頭堡を築くことを第一に考えています。でもそうした橋頭堡が完成するのを待ってからでは遅いので、作りながらも東南アジアに視察に行くといったことはしています。ただ、そこも人材なんですよ。海外の事業を任せられる人材が1人でも欲しいんですよね。本当に1人で変わりますから。

朝倉祐介(シニフィアン株式会社共同代表):最後に、そのグローバルという視点も含めて、マネーフォワードの目指す世界観をお聞かせください。

辻:ミッション、ビジョン、バリュー(行動指針)に戻るんですが、バリューとしては、ユーザーフォーカス、テクノロジードリブン、フェアネスを挙げています。全体としてはお金の課題をテクノロジーで解決したいということですね。個人で言えば、お金が制限になって学校に行けないとか、2人目の子どもを持てないとか、そういうことが少しでもなくなればと思っています。法人に関しては、クラウド化によって中小企業のお金の流れを見える化し、経営情報がリアルタイムで把握できることで、経営のPDCAサイクルを早く回し、経営改善ができるような環境を整えたいと考えています。お金と情報がつながる世界になることで、企業の生産性を飛躍的に改善できるようになるでしょう。そうして得たデータを元に、金融機関さんと一緒にクラウドファイナンスなどの新しい融資方法を提供するといった方法によって、社会全体のお金の流れを良くしていきたいと考えています。日本でそうしたプラットフォームを築くことができたら、次はグローバルで勝負できる会社を作るということですね。

小林:日本人は真っ正面から「お金」を扱うことに逡巡しがちですが、お金のプラットフォームが広がり、法人でも個人でも、あらゆるレベルで金融リテラシーが上がっていくと良いですね。本日はありがとうございました!