【ロードスターキャピタル】不動産屋からクラウドファンディング事業者へ Vol.1

2017年9月に東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場したロードスターキャピタル株式会社。設立から5年で上場した同社は、自己資金で不動産投資を行うコーポレートファンディング事業を主軸としつつ、個人が少額から不動産投資を行うことのできるクラウドファンディング事業を展開する不動産テック企業です。同社が運営する不動産投資クラウドファンディングのプラットフォーム「OwnersBook(オーナーズブック)」では、一口1万円からオンラインで不動産商品に投資することができ、2017年10月31日時点で1万人以上の会員に利用されています。不動産業とITを融合させ、「不動産テック」という新たな業態を切り拓こうとしているロードスターキャピタルの魅力を、岩野社長に伺いました。
事業の詳細については「成長性に関する説明資料」を参照ください。

岩野達志(いわの たつし)
東京大学農学部卒。一般財団法人日本不動産研究所にてキャリアをスタートし、不動産鑑定業務に従事。
2000年よりゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンにて自己投資・運用ファンドの不動産取得部門、2002年以降はアセットマネジメント部門。2004年からロックポイントマネジメントジャパンLLC ディレクターとしてエクイティ500億円以上、案件総額3,000億円以上を実行、ロックポイントグループの日本における不動産投資業務をリード。不動産鑑定士、宅地建物取引士。

ロードスターキャピタル株式会社は2012年に創業し、不動産関連のコンサルティングや投資事業からスタート。2014年のRenren Inc.の出資以降、不動産特化型のクラウドファンディング事業として「OwnersBook(オーナーズブック)」の運営を開始。不動産投資・賃貸業であるコーポレートファンディング事業と両輪で成長を実現し、2017年9月にマザーズに新規上場を果たす。役職員は35名。登録・免許は、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、宅地建物取引業、不動産投資顧問業。2016年度は売上高約47億円、経常利益約7億円。証券コードは3482。(2017年11月1日現在)

(ライター:石村研二)

中規模オフィスに集中投資するコーポレートファンディング事業

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):まずはロードスターキャピタルの創業経緯を教えていただけますか。岩野社長と森田副社長のお二人で事業を立ち上げられた経緯を教えてください。

岩野達志(ロードスターキャピタル株式会社代表取締役社長。以下、岩野):私も森田も、以前はゴールドマン・サックス・リアルティに勤めていた時期がありました。その後、私は別の不動産ファンドに勤めていたのですが、2011年に退職して、それからは1年くらい飲食店を経営していました。2012年に森田が退職することになったタイミングで、一緒に会社を作らないかと声をかけられました。当初、「今は不動産マーケットも良くないし、仕事もないから」とやや躊躇していたんですが、気真面目な森田から「会社を作っておかないとマーケットが良くなった時に動けない」と説かれ、それもそうかと思って会社を作ることにしました。

村上:飲食店とは意外です。不況下で将来のマーケットの回復を見据えて、実績のある不動産業を始められたのですね。

岩野:ただ2人だと金融商品取引業などのライセンスの取得も難しいですし、男性2人で会社を作ってケンカ別れするケースも見ていたので、もう1人必要だと思っていました。ちょうどその時期に、同じゴールドマン・サックス・リアルティにいた中川も退職していたので、管理部門に強い彼女を誘うことにして、3人で会社を作りました。

村上:創業時点で事業モデルはどの程度見定めていらっしゃったのでしょうか?

岩野:創業したのが2012年の3月ですが、最初はガツガツ仕事をするよりも、肩の力を抜いて自分たちにできることをやろうと考え、1~2年の間はコンサルタントや仲介業のような、いわゆるフィービジネスを営んでいました。それなりに売上はありましたが、今の業態とは異なっていましたね。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より

村上:その後、主力事業の一つであるコーポレートファンディング事業を展開されたわけですね。こちらはどういった事業でしょうか?

岩野:コーポレートファンディング事業は、弊社がファイナンスをして不動産に投資する、いわゆる不動産投資業です。この事業には仕入れのルートと販売のルートがあり、ちゃんと目利きができれば、実はそれほど難しいビジネスではありません。不況になったら損するのではないかと言われますが、きちんとしたネットワークがあれば、リスクは限定的と考えています。

村上:不動産の中でもユニークなゾーンを選別して投資されていますね。

岩野:その通りです。大手不動産会社が買うような何百億円という物件は数も限られており、競合が激しくなりますが、10億円や20億円という規模のビルは物件数も非常に多いです。そうした中には相続が発生していたり、会社をたたまなければいけなかったり、いろいろな理由で物件を売り急いでいる場合もありますし、市場で適切に評価されていなかったりする場合もあります。そこでビジネスが成立すれば非常に収益性が高いんです。例えば、エクイティの利回りで20%くらいを求めるというのは、今の市場環境下であればそれほど難しくはないと考えています。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より

Renrenとの出会いで不動産屋からクラウドファンディング事業者へ

村上:中国系IT企業であるRenrenが、大株主として御社の40%弱の株式を保有されていますね。この規模で中国系テック企業が日本のスタートアップに投資をするのは珍しいことですし、不動産関係の事業というのも非常に興味深いです。Renrenから出資を受けた際の経緯を教えていただけますか?

岩野:たまたまのご縁なんです。ある時、後輩に中国人の投資家を紹介されました。それがRenrenの社長だったんです。「日本の不動産に興味があるらしいから相談相手になってほしい」と頼まれたのが始まりです。我々もその頃、アセットマネジメントのビジネスをするなら投資家が必要だという話はしていたので、彼らが投資家として資金を提供してくれればいろいろなディールもできるだろうと考えました。それで彼らに、日本の不動産市場は今投資に値するタイミングであり、ロードスターキャピタルには日本の不動産業界へのネットワークがあるといった説明をしたところ、彼ら自身は不動産の目利きができないから、日本の不動産ではなく不動産会社そのものを買いたい、という話になったんです。ただし、日本では売りに出ているような不動産会社は稀有であり、その結果、我々の会社を買いたいという話になりました。当時の我々にはそれほどアセットもありませんでしたし、買っても仕方がないと話したのですが、結局、彼らが10億円で当社の株式の約半分を取得し、大株主になりました。

村上:Renrenは不動産企業ではなく、IT・インターネット企業ですよね。なぜ日本の不動産に興味を持ったんですか?

岩野:おっしゃる通り、彼らの会社はIT企業なのですが、低金利が続いている中で、不動産市況の回復が始まっている日本は魅力的に映ったのだと思います。さらに不動産とITを融合できないかと相談が進んでいる中で、彼らがアメリカのFundriseというクラウドファンディングの会社に投資することが決まっていたんです。その流れで「君たちも不動産のクラウドファンディングをやれば良い。日本では誰もやっていないし」ということになったんです。

村上:予想外の展開ですね。中国企業らしい、大胆さとスピード感です。とはいえ、当時のメンバーでは不動産投資やコンサルティングのノウハウはあっても、ITやクラウドファンディングについてはノウハウがない分野だったわけですよね?

岩野:全くなかったですね。さらに、個人からお金を集めるビジネスは、規制上も厳しく監督される領域ですから、その点でも二の足を踏んでいました。そうしたらある時、Renrenからすぐに北京に来いと呼ばれて、そこでFundriseの幹部と話すことになりました。そこで聞いた海外のクラウドファンディングの話が非常に刺激的だったんです。我々も、不動産投資についてはもっとダイレクトに個人からお金を集めることができれば良いと考えていました。ITによって個人でも簡単に不動産投資ができる環境を整えることができれば面白いと感じていましたし、クラウドファンディングによって、不動産投資のビジネスがさらに進化する可能性を感じていました。それだったらチャレンジしようと思い、クラウドファンディングへの挑戦を決めたんです。

村上:北京に急に呼ばれてクラウンドファンディングを始めることになったというのも、面白い経緯ですね。

岩野:チャレンジは多々ありました。例えばソフトウェア開発です。我々はソフトウェアのプログラミングなんてやったことがなかったので、どうやって開発を進めれば良いのかわからなかったんです。当初はRenrenの子会社と開発を進めていましたが、慣れていないメンバーで中国のIT企業と開発を進めるハードルが非常に高く、思ったようにソフトウェア開発ができませんでした。結局、日本の知り合いにお願いをして開発を進めることにしましたが、そのメンバーが最終的に会社に合流してくれて、今は全部インハウスでできるようになりました。

村上:2014年当時ですと、イギリスやアメリカなどではクラウドファンディング事業者やレンディング事業者が多く出ていましたね。それこそLendingClubが上場するなど、最も盛り上がっていた時期だと思います。グローバルのソーシャルレンディングのトレンドは、どの程度意識されていたのでしょうか?

岩野:海外のトレンドはそれほど気にはしませんでした。我々には不動産というビジネスのベースがあり、あくまでそこが出発点です。そうした本業から、経験はないけれども可能性のあるクラウドファンディングへ進出し、新たな領域をどう伸ばしていくかを考えてきました。ベンチャー的な発想だと、「もっとリスクを取って、新しい事業に全てのリソースを投じるべきなんじゃないか」という考えになるんじゃないかと思うのですが、厳格な規制の下でビジネスをしているという事情もあり、無理をして一度でも失敗したら取り返しがつかないと自覚しています。したがって、今も非常に保守的なやり方を取っています。

クラウドファンディングで短期間に売上をスケールさせるよりも、失敗したときのリスクを考えて、コーポレートファンディングでしっかりと利益を確保しつつ、慎重にクラウドファンディングに投資しているんです。