(ライター:福田滉平)
攻略サイトを軸とした横展開
村上誠典(シニフィアン共同代表。:以下、村上):前回のお話では、徹底的にユーザー目線であったことが成功につながったと伺いましたが、他に認識されているGameWithの強みはどういった点でしょうか?
今泉卓也氏(GameWith代表取締役社長。以下、今泉):創業から最初の2年間は攻略サイトを主な事業として行っていたのですが、当時から攻略サイトに付随して様々なサービスを展開してきました。こうした事業が4年目の今、事業の柱になってきています。例えば、ゲームを見つける時もGameWithを使ってもらうために、ゲームのレビューを行ったり、動画配信を行ったりしています。攻略サイトを入り口として、来てもらったユーザーに対して提供できるサービスを増やしてきました。攻略、レビュー、動画、コミュニティといったサービス間で互いに送客をして、シナジーを生みだしていることが競合と比較した際の強みだと思います。
村上:攻略サイトから別のサービスに送客する際、どの程度サービス間でスムーズに送客できるものなのでしょうか?
今泉:攻略サイトを突き詰めていくと、「良い情報さえあればいい」となってしまうので、短期的には攻略サイトから、思ったほどのユーザー数を送客できないんです。攻略サイトに4000万人いるからと言って、その4分の1の1000万人がコミュニティーに入ってくれるわけではありません。ここは時間をかけないといけない部分です。
なので、短期的に見れば送客できる人数には限りがありますが、2年間導線を出し続けたことでユーザーが徐々に我々のプラットフォーム内に定着するようになり、我々が提供するサービスの認知度も高まってきました。ここは非常に時間がかかるところで、他社がすぐには真似できないポイントです。
攻略サイトだったらどのタイトルでも絶対に勝てる
村上:一方で攻略サイトというと、ゲームタイトルごとにユーザーがついてくるものですよね。ユーザーを長い間サイトに留めるには難しい点もあるのではないでしょうか?
今泉:仮に1日や1ヶ月といった短期間で見た場合、他のサイトに負けてしまうことも確かにあります。初速では、他のサイトに人が集まることもあるのですが、そこは無理に勝たなくてもいいと僕たちは考えています。ただ、これが3ヶ月とか半年になると、負けることはまずありません。あるゲームタイトルが大きくなっていった時に、どれくらいのユーザーがサイトを見てくれているかという勝負では、他のサイトに負けません。そのための体制強化にこの4年間取り組んできました。
村上:ユーザーの情報をアプリなどで囲い込んで行くという戦略と思っていたのですが、そういうわけではないのですね。攻略サイト一本でも「よーいドン!」で勝てると。
今泉:攻略に関しては「よーいドン!」で勝てるという前提です。とは言え攻略サイトだけでは、ユーザーがそのゲームタイトルをやめてしまったときに使われなくなるリスクがあります。10年後も20年後も、今のゲームのタイトルラインナップがずっとあるわけではない中で、あるタイトルに飽きたユーザーが、次のゲームを探すところでも使ってもらったり、ゲームを横断したコミュニティに参加してもらったり、色々な施策を行ってきました。
村田祐介氏(GameWith取締役。以下、村田):ハマったゲームがあると、ゲーマーはまず攻略サイトを検索して探すんです。見つけたサイトに目星を付けて、複数のサイトを見ながらゲームを続ける。そして、更新頻度や情報の質の高い攻略サイトに徐々に絞っていく、という行動をとります。ゲーマーは、こういった行動パターンを取るので、GameWithも最初は、多数ある攻略サイトのうちのひとつでしかありません。GameWithという名前はユーザーの目には入らず、単純にモンストならモンスト。パズドラならパズドラの攻略サイトとして認識されるんですね。
そこで、GameWithのサイトの品質の高さをどう分かってもらうか。ここが重要だと考えています。そのために今、様々な仕掛けを行っています。例えば、GameWithがモンストのガチャのキャラクターに関して、どのキャラクターがどのイベントで使えそうかということを自分達でプレビューします。すると、「このキャラクターは、GameWithで高いレーティングがされている」と、GameWithで発信されている情報を基にゲームを見るユーザーが増えてきたんですね。実際、TwitterやFacebook、2ちゃんねるでも「GameWithではこういうレーティングがされいている」ということが話題になっています。
日本独自のeスポーツを作り上げていく
村田:eスポーツやVRなど、ゲーム業界の中でも新しいトレンドが生まれるのではと期待されている領域があります。例えばeスポーツなど、GameWithのプラットフォーム上で展開をする可能性というのはあるのでしょうか?
今泉:もちろん可能性はありますが、少し先の話かなと考えています。というのも、現時点では日本だとeスポーツで生計を立てることが難しい状況です。日本にもプロゲーマーはいるのですが、普段はコンビニでアルバイトをしていたりするのが現実です。
一方で日本は、他人がゲームをプレイしているところを見るという文化が昔から受け入れられている、ゲーム実況先進国でもあります。そこでプロゲーマーに、ゲームで戦っているところだけじゃなくて、どうやったらゲームがうまくなるかといった攻略系の動画や、エンタメ色の強い実況動画に出演してもらうことで、賞金以外の収入源をつくることをサポートしたいと考えています。これは攻略サイトをやっている弊社と相性の良い分野です。
村上:ゲームの中での横展開を考えていく中でも、ユーザーの軸を守りながら、横展開をしていくということですね。
今泉:ゲームというのは非常に大きな市場です。このゲーム業界のインフラ的な会社になりたいと思っています。
村田:実は、国産タイトルで本格的にeスポーツ化できているのって、シャドウバースくらいなんです。海外でeスポーツ化したゲームタイトルは、日本ではユーザーが少なくて、日本語版がローンチされても海外と同様の規模に成りづらい状況にあります。国産のタイトルについては、eスポーツ化がどうなるのか、市場をずっと見ているところです。モンスト大会など、今のところ日本においては、国際的なeスポーツとは違う姿で行われている状況です。そういった中で、どうやってeスポーツを日本に根付かせ、市場を作っていくのかが、ひとつのポイントだと思うんです。
そのために、個別の選手を支援する動きをする他に、日本トップのeスポーツチームである「DetonatioN」と一緒にコンテンツを配信したり、eスポーツの大会運営者と一緒になってそのリーグを盛り上げたり、といったことを行っています。
継続的な成長から成長速度の加速へ
村上:今回、このタイミングで上場しようと思われた理由は何だったのでしょうか?
今泉:上場の準備自体は2年前の2期目の終わりから行っていて、管理部門や、取締役会といったところから最初は整備していきました。上場をこのタイミングにしたのは、事業の数値が、継続的に伸びていくのが見えたというのが大きかったです。
一時は、急にトラフィックが伸びたりもしていたので、それが継続的なのか、規模はどこまで目指せるのか、ということを数年間探ってきました。そうした中、ゲーム攻略以外の事業が立ち上がってきたり、2年後や3年後への仕込みもできてきて、これから先も継続的に数値を伸ばしていける目処が立ったのが理由ですね。
村上:上場に合わせて社内向けのコミュニケーションはどのようにされましたか?
今泉:上場承認のタイミングで、今後について全体にメッセージを発信しました。ちょうど会社が創業4周年の時期とも重なったので、それも兼ねて、会場を借りて総会的なイベントを開催しました。
村上:資金調達のオプションも考えていくのでしょうか?
今泉:はい、そこは考えています。規模が拡大していくと、どうしても成長率を高めていくのが難しくなっていきます。ここからどうやって成長を加速していくのか。今まで以上にレバレッジを意識しなければと考えています。
上場を通じて感じる、伝えることの大切さ
村上:上場することで新たに多くの株主の方を迎えることになりますが、そういった方々はゲームに対して理解を示してらっしゃるように感じますか?
今泉:そこは人によって分かれるところですね。ゲームについて非常に詳しい方もいらっしゃれば、ゲームのメディアなのにGameWithのことをゲームを作っている会社と見られることもあります。また、ゲーム業界にあまり良いイメージを持っていない投資家さんもいます。ゲーム会社とは事業モデルが全く違うので、そこは上手く伝えていかなければと思っています。
村上:上場したことで、世間の目が変わったり、社内の雰囲気が変わったりといったことは感じてらっしゃいますか?
今泉:上場してからそれほど日が経っていないこともあって、会社に大きな変化があったかというと、そうでもありません。これから色んな変化が起こるのだろうとは感じています。一方で、僕自身の心境の変化としては、伝えていくことの必要性を感じています。
今までの株主は、GameWithのことをよく知っている人ばかりでした。なのでGameWithやゲームに対する予備知識があることを前提に話すことができました。しかし、上場したことで、大部分の株主はGameWithのことをよく知らいはずです。これからしっかりと会社や事業のことを説明し、信頼関係を築いていきたいと思っています。
インタビューを終えて
インタビューが始まった直後は静かに語り始めた今泉社長ですが、徐々に熱っぽく語る姿が非常に印象的でした。最初の起業の経験から学んだ「人と向き合うことの重要性」だけではなく、創業後4年間を通じて様々学びを得て急速に経営者として成長されている姿を感じることができました。創業時から二人三脚で取り組んでこられた村田さんは大株主のVCや取締役という表情よりも、何か苦労を共にする「兄貴」のような存在で、お互いにGameWithを通じて刺激を与え合ってきた、そんな関係に触れさせて頂きました。 急成長する事業には多くの課題が内在します。個人としての人、組織としての人、ユーザーとしての人、それぞれ別の感情で動く生き物ですし、簡単にコントロールできるものではないからこそ難しく、また経営者に否応無しにでも「成長」というものを求めるのだと思います。今後もゲーム攻略サイトとしてだけはなく、急成長上場企業として期待大です。
シニフィアン株式会社 共同代表 村上 誠典