【クックビズ】日本の飲食ビジネスは世界で金メダルを取れる Vol.3

「フード産業を人気業種にする」をビジョンに掲げ、飲食業界特化型の人材サービスを展開するクックビズの藪ノ社長に同社の可能性を伺うインタビュー(全3回)の最終回。前回の記事はこちらです。

採用成功後に目指す、“雇用体験”の向上

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):クックビズの事業を今後成長させるための戦略と、新規事業の展望を教えていただけますか。

藪ノ賢次(クックビズ代表取締役社長 CEO。以下、藪ノ):既存事業に関しては、ある程度業務の仕組み化もでき、コンサルタントの教育期間も明確になってくるなど、事業運営の型が見えてきたので、これまで東名阪中心に展開してきたものを、他エリアに横展開していく事を考えています。具体的には、福岡や仙台といった地方都市に展開していくこと、東京においても今は1拠点しかないので3拠点くらいに増やすことを構想しています。また、求人サイトについては、サイトの認知度が上がれば上がるほど応募者も掲載企業も増え、閲覧数が増えてマッチングが増えるという好循環が生まれるので、マーケティングを強化し、サイトのユーザビリティを上げてユーザー数を増やすことに取り組んでいきます。

ただ、基本的に我々がやっているビジネスモデルは、リクルートなどが作ってきたマッチングモデルをうまく業界特化型にマイナーチェンジし、網目を細かくしてユーザーと企業の満足度を上げていくというものです。それはそれでいいんですが、それだけでは国内の飲食人材を取りきった時に成長が止まってしまうので、他領域へも事業を広げていく必要を感じています。

国内では、採用後の定着をサポートするという意味で研修事業の「フーカレ」というものを始めています。講師を派遣して店舗や企業の課題を解決していくというものですが、採用のところだけでは、いくらいい人を紹介したとしても店舗の状態が悪ければ力が発揮できないので、採用の課題と実際に入社してからの課題を分けて、両方のソリューションを提供していくということを今後はやりたいと考えています。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):研修事業というのはマネタイズが難しいと思うんですが、そこはどう考えられているのでしょうか。人材の定着率向上が目的だとしても、経営リテラシーの低い経営者に、研修にお金をかける決断をしてもらうのは難しいと思うんですが。

藪ノ:採用支援領域で売上を得ていて思うのは、このビジネスはサブスクリプションモデルになっていないということです。研修も今は一発勝負で売っているんですが、できればクラウドサービスみたいなものに寄せていって「1従業員1ヶ月いくら」といった、サブスクリプションに近いマネタイズモデルで、広く薄く収益を上げていくことができればと思っています。研修の業界で成功しているのはそういうサブスクリプションモデルなんです。それに、我々としては、最終的に採用のところで大きくフィーをいただければいいので、研修事業自体は企業側と常にコンタクトを取れる手段になってくれれば十分なんです。それが実現できれば、いずれは採用支援領域もサブスクリプション型のマネタイズモデルに近づけることができるのではないかと思うんです。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):事業で言うと、飲食店予約サイトなどは近しい領域なんでしょうか?

藪ノ:我々は人事系の人たちとのネットワークが強いので、予約サイトとは、会っている人のラインが違います。ただ、もう少し、我々が飲食系人材のシェアリングエコノミービジネスのような形態になって、一定期間、飲食人材をプールする派遣業のような形態をとれるようになったら、予約状況に合わせてヘルプ人材を出すというモデルは考えられます。その場合、最終的には予約状況にリンクしていくかもしれません。

もっと個が輝く産業に

朝倉:国内では研修事業に取り組んでいかれるということでしたが、海外への展開もお考えなんですか?

藪ノ:海外でも何かやりたいと考えて、「Foodion」という料理人が使うSNSアプリをはじめました。我々は日本一料理人のレジュメを集めてきた会社だと思うんですが、活字情報なので料理がどれくらい美味しいのか、盛り付けはどうなのか、レシピはどうなのか、といったことはまったくわからないんです。そこで、その人が持っている技術やコンテンツをもう少しビジュアライズして見せられるようにと思って、このアプリを始めたんです。

腕利きの料理人って自分のポートフォリオを持っているんですよ。今まで作った料理を写真にとってファイリングしてそれを材料に採用面談時に条件の交渉をしたりしている。それをスマホでできたらいいと思って、ポートフォリオの機能を作り、その人のアカウントを見ればその人の料理がどれくらいすごいのかをわかるようにしたりしています。

朝倉:料理人のリンクトインみたいな感じですね。

藪ノ:実は、開発コードは”CookedIn”だったんですよ(笑)。

SNSとしての機能だけでなく、読み物コンテンツとして、ミシュランに載るような料理人の人生を振り返るようなインタビューも掲載しています。

人材サービスだけやっていると、星付きのレストランのような良い企業ほどお手伝いしにくいという課題があります。彼らに対して深くアプローチしていく方法はなんだろうと考えた時に、彼らが主役のプラットフォームを作ればいいんじゃないかと思ったんです。星付きレストランのシェフがセルフ・ブランディングできるようなサイトになることで、ピラミッドで言うとトップ層が集まってきていて、そこから海外にも広がって、今はメキシコでユーザーが急増したり、インドでバズったりといったことが起きています。それでネットワークができて、経済圏ができればいいなということを考えて、取り組んでいます。

村上:チャレンジされているサービス一つ一つがどれも魅力的ですが、それぞれがつながるとさらに面白くなりそうですね。各サービスをつなげていく中で、料理人から飲食店や料理人個人に対して、各種レーティング等の連携の仕組みを導入すると面白いと思いますが、そのような計画はありますか?

藪ノ:まだまだ構想段階ではありますが、今後機能として入れていっても面白いかと思いますね。というのも、Foodionのマネタイズは採用ではないと思っているんです。シェフのプラットフォームができてくると、次はグルメな人たちが集まってきます。そういう人たちが求めるのは、「この人の作るものが食べたい」とか、「この人の接客を受けたい」とか、そういうことだと思うんです。そういうお客さんがFoodionを通じてチップを払えるようにしたりすることで、飲食人のキャッシュポイントを増やすことができる。我々はフード産業を人気業種にするというビジョンがあるので、このビジネスがいずれは、そこに貢献できるのではないか思っているんです。

クラウドファンディングみたいになってもいいですよね。例えば、店の看板娘が実は苦学生で、Foodionで投げ銭のような形でお金を集めて学費を払うとか、そういうのができたら面白いんじゃないか。

何が言いたいかというと、「個に注目している」ということなんです。今までの販促は店舗の評価なんです。でも、店舗の評価なんて危うくて、料理人が変わったら味も変わるし、看板娘がいなくなったら行く気もなくなる。人の評価の集積値が店の評価なので、本来は人の評価から店を評価しないといけない。だから個に注目してもらうことで、販促にも一石を投じたいんです。

小林:まさに私も体感したことがあります。ワインバーのシェフが変わって、その店に行きたい気持ちの半分くらいが削がれてしまった。

藪ノ:シェフの動きで客もぞろぞろ動くといったことが実現できたらいいですね。料理人って、包丁一本で世界中どこでも働けるというのが魅力なので、そういった身軽さみたいなものを、我々のサービスでどうサポートしてあげられるか。正直、今展開しているサービスの真逆を行っているのかもしれないですが、個が強くなることはそれを抱えている店が強くなることなので、個に注目することは悪いことじゃないと思います。

朝倉:「組織から人へ」といった力点の移動は、まさに今の時代背景にもマッチしていますね。最後に、今後に向けての意気込みを聞かせてください。

藪ノ:食ビジネスはグローバルで戦える、と私は信じているんです。日本のIT企業が海外の市場で勝つのは難しいとは言われていますよね。この点、私は、国民性として強い種目で戦うべきなんじゃないかなと思っています。スポーツを見ても柔道のように、オリンピックで毎回メダルを取る種目もあるわけじゃないですか。ビジネスに置き換えると、日本の場合、我々が強いのは食だと思っているので、そこで戦ったほうがいいと思っています。

フランスでも、今は星付きの日本人オーナーの店って数十店舗くらいあるらしいんですね。今の人材でそこまで勝てているんだから、飲食業界全体を人気にしてもっと優秀な人材が入ってきたら、より勝ち越していけるんじゃないかと。今までこの業界に来なかった優秀な人が来るようになれば、世界で勝ち続ける産業になると思うし、世界の食べ手の人が喜んでくれればいいと思います。

朝倉:たしかにそうですね。日本企業が海外で勝つためのヒントが今日のお話にはあったんじゃないかと思います。今日はありがとうございました。

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