INTERVIEW

【クックビズ】飲食店の成否は“飲食人”の質で決まる Vol.2

2018.01.27

「フード産業を人気業種にする」をビジョンに掲げ、飲食業界特化型の人材サービスを展開するクックビズの藪ノ社長に同社の可能性を伺うインタビュー(全3回)の第2回。前回の記事はこちらです。

”飲食人”の志向に寄り添う、リアルな情報提供

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):御社の「成長可能性に関する説明資料」にも外食産業の規模は盛り上がりつつあるとあります。このビジネスは単価にしても流動性にしても外食産業の市場に左右されると思いますが、実際はどの程度影響を受けるものなんですか?

藪ノ賢次(クックビズ代表取締役社長 CEO。以下、藪ノ):影響は大きいですね。ただ、今後飲食の領域で正社員がいきなり採りやすくなることはほぼないと思っています。これだけ景気が良くなると、他の業種でもいいという人は飲食業界から出て行って、残るのは我々が”飲食人”と呼ぶ人たちだけになり、飲食店側は彼らを取り合うことになります。飲食店はこれまで、来店するお客さんに対する差別化はやってきたんですが、従業員に対しては、たくさん採用して誰か残ればいいだろうという考え方でした。でもこれからは、有給取得を推進していったり、人事考課の制度設計を変えていったり、一般の企業のように振る舞っていかないと、求職者や従業員から評価されなくなります。なので、人材に投資している会社がここ10年で圧倒的に増えています。そこは我々に取っては追い風だと思います。

朝倉:藪ノ社長が“飲食人”と表現されている方々について、もう少し教えていただけますか?料理人もいれば接客の人もいるでしょうし、お店側にしても、ものすごい高級店もあればチェーンみたいなところもありますよね。クックビズの利用者はどんな方たちなんですか?

藪ノ:企業側で言うと、数店舗から2~300店舗のミドルチェーンと呼ばれる規模が中心です。我々のメインは中途採用支援ですので、主に経験者をターゲットに採用活動を行なっている企業に対してサービスを提供してきました。また最近では、ナショナルチェーンと呼ばれる大手企業にも、利用が広がっています。

ミドルチェーンがナショナルチェーンと差別化していくときには、正社員比率を高めてよりリッチな接客やより面白い料理を提供することで付加価値を高めようという戦略を取るので、そういう企業には我々のサービスが刺さっていると考えています。しかも、今は利用者側も、オリジナリティのあるお店で食事をしたいという傾向が強くなっているので、ミドルチェーンが活況を呈しています。

我々のサービスを利用する求職者の約半数は料理人系で、残りの半数がサービスやマネジメント系です。料理人の場合は特に最終的に独立したいと考えている人が多いので、自分がやりたいお店に近いとか、業者とネットワークを作れるとか、そういう要素を重視します。その場合、給料よりもオリジナリティのある良い料理を出しているかが重要になります。なので、我々も加工食品をどのくらいの割合で使っているのかなど、様々な情報を集めて資料として使っています。一方、サービスやマネジメント人材の場合は、福利厚生や待遇給与額やキャリアパスといった要素を重視するので、一般的なホワイトカラーの転職者に志向性が近いです。

いずれにしても、データマッチングだけで終わらず、店舗でどういった働き方ができるのか、企業の奥にある店舗をどれだけ知っているのかが重要になります。条件面だけしか語れないと、求職者に「このコンサルタントは何も知らない」と思われてしまいますから。

小林賢治(シニフィアン共同代表):飲食業界は開業も廃業も多いイメージがあるんですが、新しい店ができたときなど、開拓営業はされているんですか?

藪ノ:もちろん開拓はしますが、上場もあって認知度が向上してきているのでインバウンドの比率が高まってきています。あとは業界としてリピートクライアントが多いのが特徴です。現状の店舗が充足したとしても、新店を出すために余剰人員を抱える必要が出てくるので、常に人を探し続けている企業が多いですね。

KGI「転職成功者数」の最大化に効く、複数サービスラインナップ

村上誠典(シニフィアン共同代表):店舗の情報をデータとして集めるのは難しいと思うんですが、どのレベルまでをデータとして取って、どのように蓄積されているんですか?

藪ノ:マッチングに必要なデータは、ヒアリング項目として何十個と指定されているので、その情報はひたすら集め続けています。加えて、採用後にもヒアリングを行って、実際どういったお店なのか、正味の労働時間はどれくらいなのかというような実態もデータとして溜めています。

朝倉:飲食店に特化した人材紹介業は、他にもあるにはあると思うんですが、その中で御社が異なるところはどこなんでしょう。

藪ノ:求人サイト系のビジネスはサイトを立てて営業を何人か雇えば、それなりにやれてしまうと思います。ただ、求人サイトを単体で運営しようとすると、求職者からの応募数を稼ぐために応募に必要なデータ項目を削っていく事になります。そうしないと、入力が面倒で、求職者に嫌がられてしまいますからね。応募時には名前・電話番号・メールアドレスだけ入力すればよい、とか。そうなってしまうと、飲食店からすればその応募者がどのような人かわからないので、面接する価値がどれくらいあるかわかりません。そうなると、マッチングの確率は低くなります。

我々は人材紹介をメインとしているので、求職者は面談を経て転職に必要なレジュメがすべて埋まった状態になっています。そのレジュメがあれば、企業は時間がない中で誰を面接に呼び込んで誰にパワーを割いていくべきかがわかりやすくなります。我々のマッチングビジネスの中で、人材紹介で決まるのは実は非常に少ないんです。それ以外は公募やスカウトによって決まっているのですが、それはレジュメがあるから可能になるわけです。

この業界では、エージェントに頼りきりではなく自分でも探したいという求職者も多いですし、転職成功者数の最大化が我々の戦略なので、人材紹介をメインとはするものの、複数のサービスを用意して企業にもユーザーにも回遊してもらうようにしています。飲食特化型でエージェントや求人サイトを運営している会社はたくさんありますが、我々の強みはそうやって複数のサービスを回遊させられることなんです。飲食業界の採用課題というのは非常にハードルが高い課題なので、一つのサービスだけでは解決できないと思っています。だからこそ我々は複数のサービスで企業の課題を解決するという方向性でこの業界にコミットし続けているんです。

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