【テンポイノベーション】店舗物件を飲食店に転貸する唯一無二のビジネス Vol.2

「転貸借の商慣習を変え、店舗物件のスタンダードを創造する」との企業理念のもとで、東京周辺で居抜き店舗物件の転貸ビジネスを展開しているテンポイノベーション。同社の原代表取締役にその強みと今後の可能性について聞いたインタビューの第2回。前回の記事はこちらです。

(ライター:大西洋平)

アパマンのサブリースとは似て非なるビジネス

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):原さんは代表取締役就任を引き受けたわずか1時間後には、東京周辺での居抜き店舗物件転貸に事業を一本化することを決意したとのことですが、そこに至るまでにはどのような思考の積み重ねがあったのでしょうか?

原康雄(テンポイノベーション代表取締役。以下、原):この会社に入ってから代表取締役になるまでの約5年半で、とにかく考えられることはすべてやり尽くしたという自負がありました。そのうえで選択と集中を行うとすれば、東京周辺の居抜き店舗物件の転売に的を絞るのが一番だという結論しか出ませんでした。

村上:いろいろ試行錯誤したことで感覚が研ぎ澄まされていったわけですね。では、決断した後にはもう選択の変更ということは一度もなかったということですか?

原:一度もありません。ただ、「何のために私たちが存在しているのか」という理念と、「そのために何をやるのか」というビジョンを社内でしっかりと共有することに3年程度の歳月を必要としました。つまり、社内で人を育てるのにそれだけの時間がかかったということです。

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村上:非常にユニークで、他に例を見ないビジネスモデルだと思いますが、御社以外にも同じような事業を展開している会社はあるのでしょうか?

原:存在するかしないかで言えば、山ほど存在しています。いわゆる又貸し屋がもっと小さな規模で転貸を営んでいます。また、サブリースの手法にも似ていると言われます。しかし、そもそもサブリースがアパートやマンションといった住宅に用いられるスキームであるのに対し、私たちは店舗に特化しています。それに、契約形態は同じでも、物件を貸す側の安心感はまったく異なってきます。私たちが個別に複数のオーナーと賃貸契約を結んでいるのに対し、サブリースの場合は建物単位の一括借り上げです。一括借り上げだと、不動産オーナーは個々にどういった人に貸しているのかを知る由がありません。その点、当社の場合は個別の契約ですべての案件においてオーナーから承諾を得ていますから、どんな人が入居してどういった商売を営んでいるのかをきちんと把握できるのです。

村上:そうすると、貸す側にとっては大きな安心感につながりますね。特に飲食店に貸す場合は、不安材料が多い分、それは大きな強みになりますね。そして、「店を出したいが、いい物件がなかなか見つからない」という人たちもたくさんいますから、御社が窓口になることでそういった借りる側のニーズにも広く応えられるわけですね。

原:実際に街の不動産屋を回ってみればわかることですが、「○○屋をやりたいから居抜きの物件を紹介してほしい」と頼んで1年間にわたって通い続けたとしても、まず見つかるものではありません。しかし、当社なら毎月20〜30件のペースで契約していて、つねに新規の情報が豊富に入ってくるのです。

着実に利益が積み上がるストック型の収益構造

村上:ストック型の収益構造で売上と経常利益も順調に拡大しているようですが、その一方で売上の75%程度を物件調達コストが占めていますね。どういったかたちでマージンコントロールを行っているのでしょうか?

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テンポイノベーション「成長可能性に関する説明資料」より

原:住宅と比べて店舗物件は相場の形成がブラックボックス化していて、目の前で提示されている価格が適正かどうかを判断しづらいのが実情です。しかし、私たちは13年間、このビジネスにひたすら取り組んできており、5万件、6万件といった規模のデータベースを蓄積しています。だからこそ、物件調達時に適正価格を見極めることができます。これが結果として物件調達コストのマージンを一定に保つ経営につながっています。これが我々独自の強みですね。店舗の転貸しかやっていない会社は、日本中を見渡しても当社しかありませんから。

村上:希望の物件が見つかりやすく、価格の適正性が担保されるなら、借りる側は自然と御社を選ぶようになり、貸す側も御社に任せるのが一番だと考えるような流れになりそうですね。

原:まだまだ当社は無名で、そのような流れにまでは至っていません。当社の契約物件数1029件に対し、ターゲットとしている一都三県の飲食店舗数は約16万件に達しているとの調査データもあります。つまり、私たちはまだ0.6%しか開拓していないわけです。

村上:0.6%をもっと拡大させていくためには、何が求められているとお考えですか?

原:たかだか30人程度で展開しているので、リーチが足りていません。せめて100人規模までは営業体制を拡大させて月々50件、年間で600件といったペースで新規契約を獲得していく必要があります。

村上:「新株式並びに株式売出届出目論見書」では大手不動産会社の参入をリスクの1つに挙げていましたが、実際に競合することになった場合はどの程度の脅威を感じますか?

原:本音を言えば、まったく脅威には感じませんね。たとえば、飲食店がひしめくモンスタータウンの東京新橋でどこの不動産屋が最も豊富に情報を持っているのかについて、しっかりと把握している大手は存在するでしょうか? このビジネスには、相応の仕入れノウハウが求められるのです。

村上:なるほど、大規模物件とはノウハウは違いますし、資本力にものを言わせるだけではうまくいかないということですね。

原:その通りです。

村上:物件を借りて転貸するという御社のビジネスの場合、借りたい人がたくさん存在している環境下においては確かにリカーリング(繰延収益)が発生しやすいですね。しかし、マーケットがクラッシュするなどして新規店舗の出店が滞った場合には、なかなか転貸先を見つけられず、ある種の逆ザヤが発生するというリスクが生じるのではないでしょうか?

原:理屈のうえではありうる話ですが、現実にはありえません。なぜなら、借り手がいなければ賃貸契約を解約すればいいだけのことだからです。しかも、私たちが貸し出す際の契約期間や保証金額などの条件面は、そういった事態をあらかじめ想定した設定になっています。

村上:なるほど期間などで逆ザヤリスクをコントロールされているのですね。事業自体はマクロ要因の影響を受けやすいでしょうから、このあたりの財務的なリスクコントロールがうまくされているのは、拡大戦略を推進する上で非常に大きいですね。

原:その通りですね(笑)

村上:お話を伺っていて、御社のビジネスは成長の余地が非常に大きいということを痛感しました。さらに先を展望すれば、自社で土地を取得して開発まで手掛けることも視野にいれていらっしゃいます。事業ノウハウやリスクが大きく異なりますが、これはどこまで本気なのですか?

原:私個人としては、めちゃくちゃ本気ですよ。

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村上:しかし、そうなるとせっかくバランスシートをうまく活用し、効率的な事業モデルを組んでこられたのに、一気に所謂不動産事業者のように、バランシートのリスクを大きく抱えるアセットヘビーな経営に変わっていってしまわないでしょうか?

原:実際に自社開発に取り組んだとしても、すぐに転売することが大前提です。建物所有者になるつもりはありません。なおかつ、私たちはその物件を賃貸して転貸するので、ずっと収益を得ることが可能です。

村上:そういった自社開発まで手掛けるようになれば、御社の評判がさらに上がって、プッシュ型からプル型の営業にシフトしていく可能性も出てきそうですね。ただ、そのステージに向かううえでは、今まで以上に幅広い人材の採用とその教育がボトルネックとなってきませんか?

原:人材については、新卒から育てていくことが前提となっていきますね。やはり、社内のみんなが同じ志でビジネスを進めていくことが肝心だと思います。計画通りに事が運べば5年後には100名体制も整っているはすですし、年間1000件という受注目標も視界に入ってくるでしょう。

村上:着実にフローが生じるビジネスですし、少なくとも資金調達という側面ではIPOの必要性がなかったようにも思われますが、その点はいかがでしょうか?

原:確かにご指摘の通りですが、私たちとしては当社の知名度をもっと高めたかった。そして「私たちはこんなにすごいビジネスをやっています」ということを、より多くの人々に伝えたいのです。個人的にも、当社のビジネスのことを説明して理解していただくことが楽しくてたまりません。

村上:本日はありがとうございました。今日お話しさせて頂いただけでも、原社長がご自身のビジョンを伝えることに情熱をお持ちだということが伝わってきました。また、入社当初から経営者マインドで、かつ長期的な計画をもって行動されているというお話、大変感銘を受けました。原社長の計画が実現するのを楽しみにしております。

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