【シルバーライフ】成長市場で差別化するのは圧倒的なスケール Vol.2

高齢者向け配食ビジネスを展開するシルバーライフの清水社長に同社の可能性を伺うインタビュー(全3回)の第2回。前回の記事はこちらです。

(ライター:石村研二)

成長するマーケットで圧倒的にシェアを取る

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):2014年からフランチャイズのブランドとしてそれまでの「まごころ弁当」に加えて「配食のふれ愛」を増やし、2ブランド展開にされていますが、この2つのブランドにはどのような違いがあるんですか?

清水貴久(シルバーライフ代表取締役社長。以下、清水):実は違いはありません。業界内での我々のシェアを高めていこうと考えているので2つのブランドで展開しています。やりたいこととしては、1つのビルにいろんな店舗が入っていて店舗を選べると思ったら、実は経営は同じ会社だったといったような、飲食業界でやっていることに近いですね。屋号は違うけれど経営は同じ。最終的には、この業界内で、セブンイレブンとファミリーマートとローソンを一社でやれるような存在になりたいんです。

小林:350店舗くらいの段階で、新しいブランドの拡大に切り替えている印象ですが、そのほうが店舗数を伸ばしやすいんですか?

清水:そういうわけではなく、その時期に関東工場を作り、第2のメニュー群を作ることができたので、第2のメニュー群の生産を増やして小売を上げるために新しいブランドの店舗を意識的に増やしていったという背景です。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):2ブランドで展開されているのは、ユーザーの視点から見て、「選べる」価値を感じてもらうことを狙ってのことですか?

清水:そうですね。この、まずシェアを取っていくという戦略は、今から40年くらい前の国内向けマーケットで伸びた会社はみんなやっていたことです。マーケット全体がどんどん伸びていくときには有効な戦略だからです。この戦略は、マーケットが頭打ちになっていくと通用しなくなっていくんですが、今の我々の業界は40年前の国内向けマーケットとほぼ同じ環境なので、この戦略でやっています。そのころのダイエーさんやすかいらーくさんの戦略も参考にさせてもらっています。

小林:高齢者向けの食を展開するにあたって、一般向けの食、たとえばコンビニ系列の弁当製造会社に必要なリソースとは違い、独自に必要な要素は何でしょうか?

清水:販売面と製造面で違う能力が必要になります。製造面から言うと、我々の持っている工場は配食サービスの業界に専門特化されたかなり珍しい工場です。一般的な食品工場では大きな機械が同じものを大量に生産することで一個あたりの単価を下げます。しかし、我々の配食サービスは日常食で、毎日出すものがまったく違っているのが望ましいので、それに最適化した。日々まったく違うものを作る工場が必要になります。しかも、それを適切な単価で出せる工場です。そのような多品種ランダム生産の工場は、非常に効率が悪いので、あまりこのような工場は日本にはありません。

そのことは、販売面で必要になることにもつながります。多品種ランダム生産の工場で、適切な単価で生産するためには、販売規模がないといけません。だから我々はまず店舗網を作り、販売規模を作り、工場を後から販売規模に合わせて作るということをやってきたんです。モデルとする工場がほとんどなかったので、かなり苦労しましたが、私自身も4ヶ月くらい工場に泊まり込んで一から全部工程を組み直して、なんとかノウハウは作ることができました。

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シルバーライフ「成長性に関する説明資料」より

村上:スケーラビリティが価格競争力を生んで、それが参入障壁になるということですか?

清水:そうですね。まず販売規模がないとランダム生産の工場ではラインが維持できないので、まず販売規模を作らないといけないわけですが、すでに我々が低価格の販売網を全国に拡大したあとなので、今から同じような規模を作るのは難しいと思います。我々も10年前は550円で弁当を提供していたのが、スケールメリットで現在は450円でできるようになっているんです。そこに今から参入するのはかなり難しいですね。

村上:他の差別化要因は考えられないんですか?

清水:日常食の業界では、外食系のようにいわゆる付加価値戦略、ブランド戦略、差別化戦略はほとんど通用しません。肉じゃがはどこが出しても肉じゃがで、そこに付加価値をつけてストーリーをつけて高く売るということは難しいんです。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):シニアビジネスというと豪華列車のようなラグジュアリーなものを想像しますが、現実には逆側のほうがほとんどということですね。

清水:前期高齢者(65歳から74歳の方)の場合は、ラグジュアリーな戦略もありますが、我々のメインとなる後期高齢者(75歳以上の方)に対してはまた違った切り口が必要になります。

後期高齢者の方たちは、お金の使い方が保守的で、お金をとにかく使いたくないんです。自分が何歳まで長生きするかわからない、いつ病気して入院するかわからない、定期収入はごくわずかのお金しかない、そういう状況ですと、怖くて1円でも使いたくないと思ってしまいます。第一優先が医療費で第二優先が食費なので、そういう人たちに付加価値戦略で売るといっても難しいんです。

スケールがあれば他社は入ってこられない

小林:伸びる市場だということは、競合が参入してくる市場だということでもあると思うんですが、競合はどのような状況なんでしょう?

清水:ある程度工場も作ってやっていこうというプレイヤーも現れています。しかし、その中でも我々が最も勢いがあって伸びています。今までほとんどが地域の小さなプレイヤーだったところに、我々のようなチェーンが現れて、スケールメリットを活かした販売価格でシェアを伸ばしているという状況ですね。

小林:そういう状況で、競合として思いつきそうなのは給食のような業態ですが、そういったプレイヤーが入ってくることはないんでしょうか?

清水:過去に何回も入ってきていますが、うまく行かず撤退していっています。実はこの事業は店舗の経営を成り立たせるのが結構難しいんです。需要はあるので売上は立つんですが、配送コストが高くつくので、事業としてなかなかペイできないんです。そこをペイさせるために、どのような店舗づくりをし、どのようなルート作りをすればいいかというノウハウを我々は持っているので、それを加盟店さんに提供できるということが一つの差別化要素なのかもしれません。

小林:弁当製造業から来るとラストワンマイルができず、逆にラストワンマイルを持っている人は製造のノウハウが無いということなんですね。よくわかりました。

朝倉:新聞配達に近いとおっしゃっていましたが、朝日新聞は出前館と業務提携して、飲食店の宅配代行などをしていますね。

清水:彼らに製造が出来れば高齢者向け配食サービスに参入することも可能だとは思いますね。ただ、我々はそうならないようにダブルチェーンモデルでまず店を出し、シェアを獲得するということをやっているんです。この業界はスケールメリットがかなり強めに出るんです。仕入れから製造を一括で行うことによる効率性の高さに加え、店舗密度が高まることによる店舗間物流の効率性向上で大きく優位に立てます。こういった日常食の業界では、どちらがより良いものをより安く出せるのかが完全に差別化要因になるんです。だから、後から参入してきた他社さんに対しては競争力が違うとは言えると思います。

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