【モルフォ】AI、IoT。変化の速い時代に技術で競争を乗り切る戦略 Vol.2

スマートフォンをはじめとするさまざまなカメラに、最先端の画像処理技術をソフトウェアで提供するモルフォ。同社の平賀代表取締役に今後のビジネスの展開について聞いたインタビューの第2回(全3回)。前回の記事はこちらです。

(ライター:石村研二)

もし、スマホがなくなっても

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):今でも、業績がiPhoneに代表されるいくつかのデバイスに依存している会社が、世の中には数多くあります。その中で、デバイスの未来を含む市場の流れを先読みできる企業が大きな成長を遂げています。平賀さんは、今の市場の流れをどう感じていますか?

平賀督基(株式会社モルフォ代表取締役。以下、平賀):実は今、スマホシフトで国内売上を失った時期と少し似た状況にあります。われわれの売上の10%以上を占めているのはファーウェイとデンソーの2社だけです。売上の50%を越えるまでにはさらに5社程度が必要なくらい、顧客が分散しています。しかし、デバイスではスマホが圧倒的に多いんですよ。スマホという市場が今すぐなくなるとは思いませんが、ビジネスとしての旨味がなくなる時期が、5年以内に来る可能性が高いと思っています。ですのである程度、違う事業領域にもリソースを振り分けようと考えています。

スマホで培った画像処理、認識技術をクラウド系のサービスや自動運転の車載カメラ、医療向けの検査機器といった事業に広げていく仕込みをしている段階ですね。

村上:違う事業領域に進出する際、マーケットインで行くのかプロダクトアウトで行くのかによって、組織の作り方も変わってくると思うんですが、中期的にはどちらの方向に進まれるおつもりですか?

平賀:ガラケー時代もスマホシフト後も、お客様から「こういったものがないか?」と言われるケースのほうが多いんです。ただ競争力の強い製品というのは、お客様から言われて作ったものではなくて、自分たちで「こういったものがあったらいいんじゃないか」と考えて作った製品であることのほうが多いんです。だから、将来的にはそちらの方にシフトしていきたいと思っています。

AI時代、「データを制する者が世界を制す」

村上:スマホ以外の分野に進出するために、デンソーなどの大手と組まれていると思うんですが、大手と組むメリットは何でしょうか?

平賀:今われわれが掲げているビジョンは、「画像処理の技術と画像認識の技術を融合させて、カメラにどんどん知能を持たせていこう」というものです。その画像認識の技術を担うのはAIです。現在は「AIバブル」だと言われていて、われわれもAIの部分に力を入れていますが、AIの分野では大手と組まずに自分たちでプロダクトを作っていくことは不可能に近いんです。ディープラーニングの世界では良質な「教師データ」といわれるものが大量に必要です。そのデータを、スタートアップが独自で手に入れることはほぼ不可能なので、データを大量に持っている大手と組み、お互いにいいものを作っていこう、という体制を組んでいます。

村上:ドコモとの提携は売上を構築するための提携でしたが、今の提携は、データを保有する大手と組むことでプロダクトに競争力を持たせるためのものということですね。

平賀:そうせざるをえないんです。われわれが今、提携している会社も、その業界でナンバー1かナンバー2というところですが、そうするとデータの集まり方が全然違います。大量のデータを保有するプレイヤーが勝つ世界って、本当に恐ろしいと感じますね。

村上:そうですね。一方、デバイスソフトウェアメーカーとしては、最終的にはマーケットの面を取りたいという欲求があると思いますが、大手と提携することで他企業への展開には制約が出てくると思います。今後、どのようにバランスを取っていくのでしょうか?

平賀:はい、彼らもビジネスでやっているので、どうしても制約はあります。ただ、競争力の高いものが作れれば、大手としても、自分たちだけで利用するのではなく、外販をしていきたいという力学が働くのではないでしょうか。今は制約がありますが、それくらい良いものを作ることができれば、将来的には広く展開していけるのではないかと考えています。

カメラあるところみなビジネスチャンス

村上:今後の成長について、どのような順番で変化を起こしていくお考えですか?

平賀:ここ1-2年の売上の伸びは10%程度でとどまっていますが、ビジネスが飛躍する時というのは、スケールするビジネスモデルが軌道に乗った時ですよね。われわれのビジネスモデルの中でスケールする要素があるのは、ライセンスで1コピーごとに課金するロイヤリティモデルです。このモデルが成立しているのが、実はスマホの分野だけなんです。

ですから、そうしたモデルを他の分野にも広げていきたいと考えています。それは車載かもしれないし、医療かもしれないし、ファクトリーオートメーションかもしれない、監視カメラかもしれない。カメラがあるところならわれわれの技術が入る余地はいくらでもあるのです。今はその余地があるところにとにかくトライしていっているという状況です。いずれ、筋が良さそうな領域を取捨選択するフェーズが来ると思っています。

また、もう1つ挑戦しようとしているのが、IoTの分野です。IoTの分野では、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティング(端末の近くにサーバーを分散配置し、よりモノに近い位置でデータを処理するという考え方)の連携が今後主流になってくるはずです。エッジ側のデバイスに提供する技術はすでにあるので、クラウド側にもわれわれのテクノロジーを提供し、双方を連携させて、全体としてわれわれの技術を使っていただく世界を実現したいと考えています。そうなった場合、今まではエッジ側でテクノロジーを提供して課金するというビジネスモデルだったものが、サービス全体に課金するビジネスモデルに変化します。そのために、クラウド系の技術にも色々取り組んでいるところです。

村上:なるほど。そこは画像関連技術を持っている多くの会社が狙う部分で、大企業との競争になるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

平賀:われわれの強みはエッジ側の処理技術で、スマホでも、よりチープなデバイスでも、高度な画像処理を実現しています。その点では大手より先を行っていると思います。一方でクラウドの部分は、弱いといえば弱いので、そこは課題ではあるのですが、必ずしも自社だけでやる必要もありません。