【ビープラッツ】IoT分野の成長を虎視眈々と待ち構える、独自のPaaSモデル Vol.2

「サブスクリプションをすべてのビジネスに」というミッションを掲げ、サブスクリプションの決済プラットフォームを展開しているビープラッツ株式会社。今後の成長の鍵となるビジネスモデルについて藤田 健治CEOに伺ったインタビューの第2回。前回の記事はこちらです。

(ライター:中村慎太郎)

B2B売買のブロックチェーンのような仕組み

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):御社はプロダクトが多数あるのが特徴ですね。これは、1つ1つ個別に開発・納品しているのか、ある程度基盤となるフォーマットのようなものがあって、それをカスタマイズする形をとっているのか、いずれでしょうか。

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藤田健治(ビープラッツ株式会社CEO&Founder。以下、藤田):大きく分けると、商品が2つありまして、1つは去年の7月に出した「プラットフォームエディション」ですね。それまで10年間は、もう1つの「チャネルエディション」のみでした。チャネルエディションは、プロダクトオーナーに商品を供給してもらう場であり、色々なSaaSベンダーが登録できるようなモデルです。

新しく作ったプラットフォームエディションは、チャネルエディションでは1対1で個別に交わした契約を、多対多で繋げられるようなモデルです。近年のオープンイノベーションの潮流の中では、A社からB社にも、B社からA社にも、A社からC社にも……、と多元的に供給し合う仕組みが求められます。当社のプラットフォームエディションは、共通基盤の上にマルチテナントを設定できるのが特徴です。

当社のパッケージは、カスタマイズなしでもご活用いただくことができるのですが、事業者の基幹システムにシステム連携するといった作業が発生する場合には、顧客の個別対応にも対応しています。

(ビープラッツ「成長可能性に関する説明資料」より)

それぞれのプロダクトに対応する場合に個別に開発するのか、基盤となるものがあってカスタマイズしているのか、というご質問に対しては、どの事業者にも必要になるような標準的なクラウドサービスや通信サービスなどの事業基盤となるサービスについては、ビープラッツがモジュールとして、システム連携を進めています。また、「つながる」機能でプラットフォームエディションを活用いただく事業者が取り扱う商材についても、どんどん増えていくような仕組みになっていて、例えばマイクロソフトの製品を購入するということで興味を持ってもらった時に、後で別の会社の商品も扱いたいということになった場合には、一つのプラットフォームの中で購入できます。我々の立場からすると、どんどん顧客単価が増えていくというような形になります。

小林賢治(シニフィアン株式会社共同代表):そういう意味では、APIを充実させて、ユーザーが使う機会を増やしているということになりますか?

藤田:事業者個別のニーズにはAPIを活用いただき、どちらかというとこの事業基盤モジュールによって業界標準サービスを繋ぐことで、その業界全体と繋がりやすくなるという形になっています。

最近では4月にIoT向け通信を提供するソラコムのサービスへの対応を発表しています。ソラコムを利用するパートナーは、これまでは手動で売買を管理する必要がありましたが、導入数などの規模が大きくなると課金の管理が大変になります。

例えば、ソラコムの通信を本格的に利用するには、AWS(Amazon web service)やMicrosoft Azureを併用する場合が多く、常にソラコムの通信料の管理とクラウドサービスもセットになって管理する必要がでてきます。また、それに加えて、自社のサービスやソリューションを提供するため、更に管理が煩雑になるわけです。そうしないと翌月にならないと原価がわからないまま、顧客にサービス提供することになります。

これが一階層であれば自前で出来ることも考えられますが、日本の業界は卸売り構造が根強く、階層が複雑です。そこで我々は15ページ目にある「つながるモデル」を提供しています。1社が導入してくださると、その取引先にもプラットフォームを提供できるようになっています。

(ビープラッツ「成長可能性に関する説明資料」より)

PaaSである以上の独自のポジション

村上:素朴な疑問なのですが、御社のビジネスモデルを説明するのに、SaaSやPaaSというワードを用いたほうがシンプルに説明できるということはありませんか?

PaaS(パース):Platform as a Service 。OSやハードウェアなどのプラットフォームを、インターネット上のサービスとして提供する形態。

藤田:SaaSベンダーは、1つのアプリで1つの目的を果たすというイメージが強いと思っています。我々は事業を行うためのプラットフォームというと大げさですけど、販売管理システムと課金システムのプラットフォームであるのは間違いないので、PaaSの方が正しいです。

朝倉祐介(シニフィアン株式会社共同代表):確かに、SaaSと言う言葉からは、特定機能を持った特定のサービスというような印象を持ってしまいますからね。

宮崎琢磨(ビープラッツ株式会社CFO&Founder。以下、宮崎):もしかしたらERPに近いPaaSと言うほうが正確かもしれません。我々があまりPaaSと言っていないのは、PaaSはユーザー側が使い方を理解して、自分でインプリメントするようなイメージがあるからです。我々はどちらかというと、事業構造変革などのコンサルティングのような側面を持っていて、顧客の事業を我々のプラットフォームにマップしていくということをやっています。

村上:プロダクトとしてはある程度カスタマイズ出来ているのだけど、PaaSをある程度お客さんが使えるように、コンサルして、カスタマイズするところまでやっているので、「PaaS以上」というような在り方というわけですね。

宮崎:そうなんですよ。そういう意味で、自らPaaSとは名乗っていないにもかかわらず、ややこしいことにPaaSとして賞をもらっていたりもします(笑)。SaaSやIaaSはようやく理解されるようになってきましたが、PaaSという言葉はあまり浸透していないですよね。

村上:そうですね。海外ではPaaSという言葉も浸透しているのですが、日本ではまだ浸透していないかもしれませんね。

改めて御社の事業理解に戻ると、「IoT」というキーワードを出すと、御社自身がIoTを使ったプロダクトを提供しているようなイメージを持ちますが、そうではなく、IoTが今後成長していく過程で複雑化する課金・決済に対して、御社は、PaaSの延長としてコンサルテーションを提供していくということですね。IoT分野の成長を捕まえられるようにして、待ち構えているというような状況と考えればよろしいですか?

藤田:まさしく、その通りです。

メーカーの複雑なエコシステムに寄り添う唯一のプラットフォーム

小林賢治(シニフィアン株式会社共同代表。以下、小林):クラウドコンピューティングにしても何らかの通信のサービスにしても、最終顧客やサービスごとに利用料の詳細を把握するのは大変だったという話を聞いたことがありますが、これは、従量課金モデルの課金単位が、契約単位であり、顧客単位ではないことが課題だったという理解でよろしいですか?

藤田:はい。そこも大きな要因です。

宮崎:それに加えて、さらにサービスを転売するようなケースもあります。そうなると、メインのベンダーからは何がどうなっているのか見えなくなってしまいます。

藤田:しかも転売時にまたオプションやら追加サービスやらを加えて売ることもあるんですよ。例えばセキュリティサービスといったものですね。そうなると、右から左に料金が流れるという単純な図式にはなりません。そうすると、請求時には「いろいろまとめて100万円の請求です」というようなことになってしまうのですが、実際にどういう課金の流れを辿っているのかが管理されていないと問題も出てきます。IoTの分野では、そういった複雑な状況に当社としてチャレンジしています。

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宮崎:IoTという言葉を表に出しているのは、製造メーカーや電機メーカーのビジネスの生態系が一番複雑なので、我々のプラットフォームが適用しやすいという利点がある、というのが理由です。

これまでのメーカーは垂直統合型で生きていくことが可能でしたが、これからはクラウドや通信も組みあわせることになるので、そう単純なモデルでは生き残れなくなるのです。

そこで当社が価値を発揮できるのですが、SaaSを前面に出してしまうと単純なモデルに捉えられてしまい、我々の特徴である複雑性が際立たないのではないかという思いがあります。そういった背景から、まずは「IoT」という市場に関するキーワードを前面にお伝えしているのです。

パートナー戦略で一気に売上伸長を狙う

村上:なるほど。ここで御社の収益構造の未来について質問です。先ほど、PaaSにコンサルテーションを加えて提供していくモデル、とおっしゃっていました。コンサルは人海戦術であり利幅が薄いモデルですが、PaaSは利益が根雪化していくモデルです。こういう異なる収益のモデルを重ねていった場合に、将来成長していくとどのような収益構造になることが想定されますか?

藤田:まず、新規営業開拓や、初期段階での事業コンサル的な部分はパートナー企業と連携しようと考えています。これまでは自社で全てを実行していたので案件数がどうしても増やせませんでした。最近では、メーカーがIoTに関連して、課金・売上回収などの新規の事業モデルを検討するときに相談するパートナーの一つとしてリース会社や決済会社といったファイナンス企業がいるということがわかってきました。

IoT化が進んでいくと、コピー機のように「使った分だけ払う」モデルになっていきます。そうすると、メーカー側からすれば、これまではモノを納品した時点で確保できていた売上が、確保できなくなってしまいます。資産が大きくなってバランスシートの状態が悪くなるわけですね。

そこで、リース会社がその資産をオフセットしてあげることで、メーカーからするとバランスシート的にもぐっと楽になります。もちろん、リース会社側にとっても、既存の低金利リースモデルよりは事業リスクは上がるものの、強いパートナーと組むことで、うまくいけば収益が上ブレする新しい事業モデルが作り上げられるかもしれない、という旨味もあります。

リース会社は大企業との取引においては存在感が強いこともあり、我々自身が営業して新規事業の提案先を探して行くというよりは、リース会社などのパートナー起業の営業力を活用させていただきながら、プラットフォームの提供による月額の使用料とトランザクションを稼いでいくことに集中していくつもりです。

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村上:なるほど。そういう意味ではピュアなPaaSに向かっているわけですね。

藤田:結果的にはそうですね。

村上:IoT・クラウド化の進行で生じる複雑な問題に対して強みを持つ御社の、売上伸長の鍵が、パートナー戦略にあることはよく理解できました。これからは、人材戦略としては、どのあたりの人材を強化していきたいとお考えですか?

藤田:パートナー企業を増やすための営業も重要になってきます。当社のプラットフォームは、導入してくださった企業が積極的に取引先に売り込んでくれる販売者にも変わるというところが面白いところです。導入企業が自社製品を拡販するために、当社のプラットフォームを拡販したくなるわけですね。

村上:いいお客さんを見つけると、お客さんがお客さんを呼んでくれるわけですね。

藤田:そうなんですよ。これを「三次元の成長」と呼んでいます。

村上:生々しく言うと「芋づる式」とも言えますね(笑)。