【WASHハウス】コインランドリーを無料に。新しい事業モデルを発明する vol.3

国内では人口減少という逆風が吹く中、コインランドリーのイメージを刷新し、利用率を高めることでパイを拡大する戦略を掲げる、WASHハウス株式会社の児玉康孝代表取締役社長へのインタビュー第3回。前回の記事はこちら

(ライター:中村慎太郎)

コインランドリーがコインランドリーを超える日

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):これまで、コインランドリー市場の白地戦略や、売上拡大のためのフランチャイズ戦略について伺ってきました。続けてお聞きしたいのですが、顧客のコインランドリー利用率を上げるために、どういった試みをされましたか?

児玉康孝(WASHハウス株式会社代表取締役社長。以下、児玉):九州でも3%の利用率しかなかったコインランドリーですが、現在では広告代理店調べで宮崎県が46%、福岡県では42%まで伸ばしました。どうやって伸ばしたのかというと、広告です。

直営ビジネスであれば、広告費は会社の年商の3%程度に抑えるのが相場かと思います。ですが、我々は、フランチャイズ契約に広告費を織り込むことで、当社の年商の10%以上使える仕組みにしました。

これによって、1店舗目を出すときから広告を打つことができるようになりました。たとえば10店舗、オーナーが10人いる状態でゼロから広告を始めようとした場合、反対するオーナーが出る可能性があります。100店舗あればなおさらです。1人がやりたくないと言った瞬間に、全店舗で統一した戦略がとれなくなってしまいます。

(WASHハウス 平成29年12月期 決算説明補足資料より。広告分担金が収支モデルの支出に含まれている点に注目)

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):反対が出ることを織り込んで、最初から契約に盛り込んでおくわけですね。多店舗展開で売上のグロスを増やしながら、最初から攻めの広告戦略で顧客の利用率をあげていく。非常に優れた立ち上がりですね。

一方で、この先の展望についてお聞きします。店舗が増え続けた先には、飽和して伸びが止まる危険性もあるのではないでしょうか。

児玉:はい。いつか価格競争になることはわかりきっていました。想定した市場規模では、日本国内に20万店まで増えますが、そこまで行くと価格競争になります。その時、確実に競争に勝つために、価格をゼロにすることを想定しています。かつて携帯電話会社が携帯電話本体代金を実質無料で購入することができるような戦略ですね。

村上:価格をゼロにする場合にはどこで売上を取ることになるのでしょうか?

児玉:このあたりはあまり公にはしたくないのですが、価格をゼロにした際に重要になってくるのはタッチパネルです。「井戸端会議」という言葉があるように、洗濯の場は、昔から情報交換の場でした。店舗にあるタッチパネルが、地元の顧客にローカルな情報を発信できる媒体にするのです。

たとえば今日はシラスが安いとか、イワシが高いとか、その地域でしか活きない情報がありますが、こういった情報はコアすぎるので、当然ながら広域では意味のない情報です。ただ、これをうまく収集し、タッチパネルを活用して発信していくことが出来ると、我々は、日本で最大の情報網を持つことになります。

その結果我々は、広告媒体業としても存在感を示すことが出来ます たとえ店舗数が飽和していたとしても、広告料が取れるようになったとしたら、洗濯料金をゼロにしても成立します。

村上:まさにコンビニの戦略ですね。最終的には洗濯だけではなく、広告をはじめとして色々なものを売ることができるわけですね。地域に適したビジネス展開もしやすい、と。

児玉:2万店舗以上にするという目標は、上場の時から掲げています。そして、飽和した際にも売上が伸ばせるような仕掛けをいくつも仕込んでいます。

たとえば、現在は洗剤工場を立ち上げることを計画しています。宮崎県のバックアップもあり、順調に進んでいます。今は他社から洗剤を購入している状態ですが、自社で作るとなると、新たな売上が生まれます。あとは建物をユニット化することですね。これによって建物が移動できるようになるため、投資リスクを軽減させることが出来ます。

村上:もしうまくいかなかった時は、店舗ごと移動させられるわけですね。何割くらい使い回しできるのでしょうか?建屋自体は無理にしても……。

児玉:いやいや、建屋自体も全部です。コンテナの大きい版ですね。

村上:ということは、ほぼ100%ですか。それは凄いですね。

児玉:ここにも一つ仕掛けがあります。去年は109店舗を作っていますが、建設は自社で行っていないため、売上はなく、利益も取っていません。しかし、これを自社で出来るようにした瞬間に、新しい売上が生まれます。

ガスも同様です。今は業者に委託していますが、どこかのタイミングで、自社で扱うようになると、ここでも利益が生まれます。こういう仕掛けを最初からいくつも仕組んでいます。

村上:店舗数が飽和することを見込んで先回りしているわけですね。

コインランドリーからまったく新しいファイナンス事業へ

児玉:その他の事業展開として、ファイナンス会社の設立が挙げられます。これも創業時からの目的の一つです。今世の中でうまくいっているビジネスモデルの大多数は、ファイナンスを組み込んでいると考えています。我々は、FCオーナー向けにまだ存在していない新しいファイナンスのモデルを作ろうと思っています。

村上:なるほど。起こりうる問題に対して常に先手で解決策を持たれているわけですね。フランチャイズと不動産を知り尽くしていらっしゃるからこそですね。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):とすると、オーナーは手を挙げさえすればいいわけですね。

児玉:そうです。その結果、これまで16年間、1店舗も売上不振でお店を閉めていないわけです。この結果は、真の意味での地方創生だと考えています。真の意味で地方創生を実現するためには、地方に雇用を生み出す必要があります。豊田市が好例ですが、工場を作り、周囲に「村」が出来ていって、そこで子供を育てることが出来ます。

(WASHハウス 平成28年12月期 決算短信補足資料平成29年12月期 決算説明補足資料より。2016年の退店は0、2017年の退店は契約期間満了による1店のみ)

地元で生産活動を行い、雇用を創出することで、地元の経済圏を成立させないと、地方創生は成り立ちません。日本の一番の問題は、工場などの生産する力を、海外にアウトソースしてしまったことです。

小林:御社が地元の宮崎に本部を置いたり、洗剤工場を造ったりされている活動も、すべてそこに繋がっているわけですね。 一つ疑問なのですが、御社の本部側が、店舗を遠隔で管理していて、何かあったら駆けつけなければならないわけですよね。そうすると、一定の密度を持たせたドミナント戦略でいったほうがいいのかなという気がします。その点についてはいかがでしょうか?

児玉:はい、その通りです。ただ、一点だけ他社と違うのは、マーケティング戦略を非常に重視していることです。我々は、放送網の単位で地域展開をしています。たとえば福岡でテレビCMを流せば、山口や長崎にも放送されます。その単位での出店計画を組んでいるのです。

コインランドリー事業を世界へ

村上:最後に、海外展開の展望についてお聞かせください。

児玉:国内で築いたビジネスモデルが、海外にもそのまま横展開できると考えています。遠隔操作システムがクラウド型なので、たとえばタイにいくのであれば、タイ語をインストールするだけで展開可能です。海外展開でネックになるのは、実はビジネスモデルではなく、通貨なんです。しかしその問題も解決の見通しが立っています。国内でも携帯電話決済を導入しようとしておりますが、中国では日本以上に電子決済が定着しています。携帯電話決済が出来るようになれば、通貨すらも問題となりません。

村上:なるほど。携帯決済が可能になれば、日本国内と同様に海外進出できるわけですね。フランチャイズモデルも海外で横展開ができるのですか?

児玉:はい、そちらも準備は終わっています。海外展開時も国内同様、日本にいる我々がオーナーの資金調達を支援することで、日本と同じようにオーナー獲得・経営支援が可能だと考えています。

村上:なるほど。そこまで織り込み済みなわけですね。国内・海外ともに力強い成長が見込めそうですね。本日は、お話ありがとうござました。