【WASHハウス】投資×不動産×フランチャイズ=新しいコインランドリー vol.2

国内では人口減少という逆風が吹く中、コインランドリーのイメージを刷新し、利用率を高めることでパイを拡大する戦略を掲げる、WASHハウス株式会社の児玉康孝代表取締役社長へのインタビュー第2回。前回の記事はこちら

(ライター:中村慎太郎)

家族経営ビジネスを仕組み化で変革する

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):御社がコインランドリー事業に目をつけられ、このビジネスに伸びしろを見出した着想についてはよく理解できました。他に、このビジネスに参入する際に検討された観点はどんなものがあったのでしょうか。

児玉康孝(WASHハウス株式会社代表取締役社長。以下、児玉):大きくは先行事業者がいないかということと、少子高齢化に対応できるかということを考えていましたね。

先行事業者がいるかどうかという観点については、地元の不動産会社に務めていた時の出来事が原体験になっています。当時、その不動産会社で別会社を作らせてもらい、賃貸手数料の無料を軸にした会社を立ち上げたことがあります。全国で初めてのケースで、日経新聞にも取り上げてもらいました。しかし、同業他社からものすごく批判されました。先行事業者の反発にあってしまったわけですね。結局、私が狙ったスタイルは、実現出来ませんでした。先行事業者がいる世界は何かと業界的な制約が多く、自由にビジネスが展開しにくいということを痛感したのです。

その点、コインランドリー事業は、世界で約20万店舗、約3兆円の市場規模(WASHハウス推定)でありながら、日本には上場しているコインランドリー事業者が1社もない状況でした。誰もこのマーケットの大きさに気付いていなかったのです。

また、私はかつて証券業界で営業として働いており、毎月売上がゼロにリセットされる世界にいました。そうした経験もあり、何とかストック型のビジネスにしたいという思いがありました。事業の核があり、ネットワーク化していくことで、付帯収益を生み出し、ある時一気に事業を拡大できる仕掛けです。加えて、最低でも1兆円以上の市場があるものをやりたいと思っていました。上場を目指すにはそのくらいの規模感が必要だからです。

その結果が、コインランドリー事業です。世界中を調べた時、コインランドリーは約20万店舗もありました。約3兆円の市場です(WASHハウス推定)。日本では、誰も気づいていなかったわけです。コインランドリー業界には上場企業が1社もありませんからね。

朝倉:言われてみると確かに、コインランドリー大手、という会社は世の中にありませんね。

児玉:可能性を強く感じました。たとえばアメリカには、7,000億くらいの市場があります。日本の5-7倍くらいの規模ですね。ニューヨークには、1店舗に洗濯機・乾燥機が120台もある大規模なコインランドリー店もあるのです。日本には、そんな店舗を展開しているプレイヤーは、誰もいませんよね。

そもそも洗濯という業態は、社会的地位が低いと見られがちな傾向にあります。歴史的には、多くの国で、移民が、資本がない中、手作業で洗濯をして日銭を稼ぐところから発生した職業です。その中からある程度資本を蓄えた事業主が登場し、洗濯機を置いて貸しだすようになったのがコインランドリーの始まりです。

これが世界中に広まって、日本に入ってきたのは1970年代です。

朝倉:少し驚きましたが、70年代まで日本にはなかったんですね。

児玉:実はありませんでした。今でも監督官庁がないため、コインランドリーが全国に何店舗あるのか正確な数字は誰にもわからない状態です。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林): 業界団体のようなものはないわけですね

児玉:洗濯機を売るメーカーやその販売業者の団体はありますが、コインランドリーについてはありません。

コインランドリーはこういった環境の中で増加していきました。つまり、遊休地、たとえばビルの1Fのテナントが空いていたりした場合に、洗濯機の販売業者がビルのオーナーに洗濯機を売り込みに行くといった発想で広がっていったんです。

ビルの経営は家族経営であることが多いため、結果としてコインランドリーも家族経営的な店舗が多く存在しています。こういった背景があるため、法人が運営して、大規模にチェーンを展開するという現象に発展しづらいわけです。だから先行事業者が存在しないままになっていた。ここに目をつけました。

大規模な全国チェーンがないので、たとえば、テレビコマーシャルもなかったわけです。

人口が減少してもコインランドリーは伸びる

朝倉:なるほど。業界が成立するプロセスで大手プレイヤーが生まれにくい環境にあったわけですね。少子高齢化に対応できるかという観点についても教えていただけますか?

児玉:少子高齢化に関して言うと、ポイントになるのはアレルギーの増加の問題です。現代では、3人に2人がアレルギーを持って生まれてくるというデータもあるくらいで、小学生のアレルギー疾患者も増加しています。子供は減りますが、アレルギーを持って生まれてくる子供は増えている。洗濯ニーズが増える萌芽がここに見て取れます。特に、布団などの大物洗濯ですね。

購入して一ヶ月しか経過していない布団でも約30万匹のダニが発生すると言われています。これを、綺麗にするためには、クリーニングに出すか、コインランドリーで洗うのが一番なのだそうです。クリーニングに出すと1枚3000円ちかくかかるところを、コインランドリーなら1000円で3枚洗えます。

小林:そうなんですか。それを伺うと、さっそく家の布団をコインランドリーで洗いたくなりますね(笑)

児玉:ですよね(笑)布団専用掃除機がブームになったことからもわかるように、アレルギーに悩む人が増えるなか、日本中が布団の洗濯を求めているのは明らかです。でも、近所にコインランドリーがないから、洗えない。これが我々のビジネスチャンスです。

朝倉:コインランドリーは、単身者や学生、自宅に洗濯機のない人が利用するサービスという印象があるのですが、これからはファミリーや中間層以上も使うようになっていくということでしょうか?

児玉:既にそうなっています。今でも中間層以上が使っています。ただ、東京ではまだそうなっていなですね。九州での利用率は40%強に達していますが、東京では、8~10%しかないからです。どうしてこれほど差が出るのかというと、九州では布団をコインランドリーで洗うという文化が根付きつつあるからです。東京もいずれそうなるはずです。

我々は九州から事業を始めましたが、東京の人たちも洗えたら洗いたいわけですよ。でも、家の近所にコインランドリーがありません。なので、コインランドリーを増やせばいいのですが、駐車場があるお店は都心には作りづらいです。そこで、新宿に30坪の駐車場がないお店を出しました。実はかなりの売上があがっています。都心では、これを参考に郊外型の店舗とは異なる都市型出店の戦略を考えています。

小林:うちは猫を飼っているので、近くにあったら間違いなく使います(笑)。洗濯機の性能は、家庭用のものとどの程度異なるのでしょうか。

児玉:布団を洗おうと思った場合、価格にすると200~300万円、重さにすると1トンもの洗濯機が必要になります。なので、家庭で使うことはまずありえません。いずれにせよ、今後、日本の人口は減少しますが、アレルギー対策の市場は拡大すると確信しています。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):非常に面白いですね。普通、人口減少を見据えてビジネスモデルを考えた場合には、増加する高齢者や、観光客といった新しいマーケットにフォーカスすることが多いように思います。御社の場合、既存マーケットでありながら利用率が向上して成長することを目指していらっしゃるわけですね。

児玉:そうですね。さらに、コインランドリー事業は、ビジネスモデルとしても優れています。飲食業の経営のような仕入れもほとんどなく、人件費もかからず、ロスも出ない。場所さえ確保できてしまえば使った分だけ公共料金を払えばいいというモデルなんです。だからこそ、これまで利用率が低くてもビジネスとして成立してきてしまったわけですね。

私の分析上では、機器等の償却さえ終わっていれば、1日あたり3名のお客様が来店してくれれば、収支が合うと考えています。使う人が増えれば、当然コストは増えますが、価格設定を間違えなければ、決してお店は潰れません。

(WASHハウス「成長可能性に関する説明資料」より)

村上:海外で移民の方が目をつける理由も分かりますね(笑)

拡大を支える、『絶対に失敗しない』フランチャイズモデル

児玉:ただ、事業化する上では、問題もありました。それは、1店舗あたりの売上が小さいため、多店舗展開していく必要があることです。

我々が事業を始めた15,6年前も現在も、1店舗あたりの月商が30万円、いいお店で50万円という規模感でした。そこで1店舗100万円のお店を作ろうということで事業を始めたのです。

一方で、コインランドリーは装置産業なので、多店舗展開が極めて難しい。どんな大資本でも、世界中にコインランドリーは作れません。なぜかというと投資額の6割が機器の購入に費やされるからです。1店舗あたり3000万円として、100店舗展開すると、30億円かかります。30億円のうち、18億円を機械に使っているわけです。

そして、来年はさらに150店舗を出すとなるとさらに45億円かかるため、赤字が拡大していくだけです。こういった理由で、直営店を一気に増やしていくことは出来ません。

小林:機械の償却期間の間は、PL上では酷い状態に見えてしまうわけですね。

児玉:その通りです。一度、福岡に直営店を30店舗持たざるを得なくなったときがありました。すると、財務バランスは一気に悪化しました。

小林:実際にはキャッシュフローは回っているわけですが、数値上は悪く見えてしまうわけですね。

児玉:はい。だから、フランチャイズ化が必要でした。ところが、フランチャイズ事業というのは、たくさんの問題点を抱えています。その一つが、本部と加盟店の対立です。何か問題が生じた際に、本部は加盟店のせいにして、加盟店は本部のせいにしがちです。同じ事業をやっているにも関わらず、対立関係になってしまうわけです。

こういった問題が発生しないビジネスモデルを作る必要がありました。我々の隠れた強みなのですが、16年間で売上不振によるフランチャイズの解約が0件なんですよ。もちろん、オーナー訴訟も0件です。

(WASHハウス 平成29年12月期 決算説明補足資料より)

朝倉:0件というのはすごいですね。どういったアプローチをされているのですか?

児玉:フランチャイズのオーナーさんが「何もしなくても回る」仕組みを作りました。これは不動産屋の発想です。

不動産のオーナー業は、たとえば1億円のビルを買って、1000万円の家賃収入を得ます。ただ、オーナー業といっても投資しかしません。不動産屋が人の募集、案内、契約、家賃の案内、メンテナンス、入居者の対応、リフォームといった一連の工程を担うわけです。

この構図をコインランドリーに置き換えました。オーナーさんは何もする必要がありません。うちのFCオーナーさんは店舗の鍵さえ持っていないんですよ(笑)オンライン上で売上を見ればよいだけなのです。

小林:ということは、オーナーの感覚的には、運用不動産を購入した感覚に近いわけですね。

児玉:その通りです。

朝倉:不動産投資の仕組みを、コインランドリーの業界に持ち込むことで、御社にとっては初期投資を大幅に下げ、投資する側にとっては割のいい案件になるわけですね。

児玉:投資の世界の発想と、ファーストフードのフランチャイズと、不動産の仕組みをうまくミックスしたわけです。

朝倉:まったく新しい試みといえるかもしれませんね。

児玉:同じ装置産業としてよくコインパーキングと比較されることも多いです。しかし、コインパーキング業界は、飽和したらそれ以上成長させられません。コインランドリーも、何も考えずにやっていたら、いつかは飽和することが目に見えています。なので、それを打ち破る仕組みも最初から織り込んで事業に取り組んでいます。