COLUMN

スタートアップのビジョンをファクトに変える「エグゼキューション力」

2020.11.28

事業が形になっている会社であれば、計画立案と実行を通じて、組織としての実行力が一定程度は可視化されているものです。レイトステージのスタートアップに問われるエグゼキューション力について考えます。

本稿は、Voicyの放送を加筆修正したものです。

(ライター:岩城由彦 記事協力:ふじねまゆこ)

具体的な目標達成度を問われるレイトステージ

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):今回は、経営チームの力を構成する一要素でもある、「エグゼキューション力」について考えましょう。実行する力、やりきる力ですね。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):レイトステージのスタートアップであれば、事業がコンセプト段階で止まっているということはありません。必ず、何らかの結果を伴っているはずです。その結果というものが、組織の実力によって出たかどうかというのが重要だと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):実際に事業が成長したという結果だけでも、エグゼキューション力は示せるかもしれません。ですが、その結果が事前に中期的な目標や戦略を立てたうえで、人や組織、資金をうまく使いこなして達成できたものかどうかが、より本質的な点でしょう。

小林:打ち立てた目標に対する達成度合いはどの程度だったか、事業パートナーやステークホルダーに約束したことをどこまで実現できたかといった点も重要ですね。

村上:レイトステージの段階は人や組織、資金が増えた中で、「プラン通りに進めていけば、目標を実現できる」という予測可能性も相応に高まっていると思うんです。もちろん、競争環境やマーケット環境の変化には影響されますが、それらを乗り越えてエグゼキュートし切り、想定する KPI(重要業績評価指数)を達成できたかが問われます。

目標達成を繰り返して「勝ち癖」をつける

小林:優れたエグゼキューション力は、複数の要素から成立するのかなとも思います。ガッツがあるとかグリットが強いといった、抽象度の高いカルチャー的要素も根底にはあるでしょう。

また、計画策定能力の精度が高く、自分たちがコミットする目標の高さがどのくらいかを明確に理解しているか、会社の中に目標達成に責任を持つ文化が根付いているかといった要素も作用すると思いますが。

村上:こうした素養を備えている会社の多くは、さまざまなトラブルを組織的に解決しているものです。いろいろな目標設定に対して、しっかりとやり切る力を持った組織であるということですね。

小林:やり切ることを繰り返してきた結果、「勝ち癖」がついている会社には、そうした自信が窺えます。

朝倉:レイトステージのスタートアップとなると、近く上場するのが見えているような会社が多いですし。上場すれば当然、どういった業績予想を立てているのかが問われます。「中期経営計画を公表しないのかと尋ねられることもあるでしょう。

こうした目標や予測を毎回、外してしまうと、市場からの信頼を失うことになります。上場後、ステークホルダーの応援を受けながら持続的に成長していくうえでも、エグゼキューション力が重要ということでしょうね。

村上:目標の設定と計画を実行するうえであってはならないのは、あえて低い予算を設定して達成するという方法。そのような計画は本来、立てるべきではないでわけで、許容した時点でバツだろうと思います。

競争環境や自分たちが取れるポジションを考慮し、ストレッチしつつも達成可能な目標を立てる。そこに向かってしっかりエグゼキュートし切った上で、計画比の着地がどうだったかを振り返るのが大事だということですね。