【うるる】在宅ワークを働き方のスタンダードに vol.1

「人のチカラで世界を便利に」というビジョンを掲げ、「クラウドワーカー」の労働力を活用したビジネスを展開する株式会社うるる。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業、クラウドソーシング事業、そしてCGS(Crowd Generated Service)事業の3つの基幹事業で相互にシナジーを生む戦略、また今後の展望について、星知也代表取締役にお話を伺います。

星 知也(ほし ともや)
株式会社うるる代表取締役。1976年生まれ。北海道札幌市出身。
高校卒業後、通信機器関連の企業に入社。その後渡豪し、エアーズロックの壮大さに感銘を受け、帰国後に入社した企業において、株式会社うるるを社内創業する(ウルルは、エアーズロックの原住民語)。2006年にMBO。以降、現職。

2005年創業のうるるは、「Web上にネットワークされた世界中の人の英知・マンパワー」を活用し、働き方のスタンダードを変革することを目指すIT企業。クラウドワーカーと企業のマッチングサイト「シュフティ」、BPO事業、入札情報速報サービス「NJSS」などを運営。2017年3月に東証マザーズに上場を果たす。証券コードは3979。

(ライター:中村慎太郎)

在宅ワークを働き方のスタンダードにしたい

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):創業以来のビジネス展開についてお聞かせください。2006年の創業時はBPO事業から始まり、次にクラウドソーシングを開始、その後CGS(Crowd Generated Service)の展開を始めた、という理解で間違いないでしょうか?

星知也(うるる代表取締役。以下、星):はい、その通りです。その3つの事業を始めた大前提がありますので、まずはそこから説明させて下さい。私たちは「人のチカラで世界を便利に」というビジョンを掲げているのですが、そこには「在宅ワークという働き方をスタンダード化したい」という思いを込めています。創業した頃はちょうど、「2007年問題」が取り上げられていました。ご存知の通り、団塊世代のワーカーが退職し始める2007年頃に、日本の労働人口が大きく減少し、労働力が不足するという問題です。

当時、在宅でできる仕事は内職くらいしかなく、子供が小さくて外に働きに出られないお母さんや、家族に介護が必要な方がいて外に働きに出られない方の就労機会は非常に限られていました。しかし、インターネットが普及すれば、場所や時間にとらわれずに、外に出ないでも収入が得られる機会を提供することが可能になる。そうすれば、日本の労働力不足を解消することに繋がるのではないかと考えました。

そして、アルバイトや派遣という働き方が現在ではスタンダードであるように、在宅ワークをスタンダードな働き方にしようと考えたのです。現在はAIに注目が集まっていますが、「人のチカラ」でしかできないことには、特別な付加価値が出せると考えています。「人のチカラ」によって創出した価値を、企業や世の中に提供していくことをビジョンとして掲げた上で、最初に着手したのがBPO事業でした。

BPO事業だけではビジョンが実現できない

朝倉:ということは、BPOというビジネスを展開しようという考えよりも先に、在宅の労働力を活用しようという発想があったということですね。

星:その通りです。当時はまだBPOという言葉も一般的ではありませんでした。この言葉が普及するようになったのはここ5年くらいです。

朝倉:なるほど、そうでしたか。

星:当時、在宅勤務を希望する方々にどういう仕事をしたいかとアンケートを採ったところ、データ入力をしたいという希望を多くいただきました。私たちは、データ入力を事業としたことはありませんでしたが、企業から名刺の入力、アンケートの集計などの作業をアウトソースして頂き、一度私たちが受注して在宅ワーカーに再委託する、というビジネスを始めました。この分野で在宅ワーカーの皆さんへのお仕事を作っていこうということで、「データ入力専門店」というサービスをスタートさせました。

2018年3月期 第2四半期決算説明資料より

こういった経緯もあり、弊社のBPO事業の主力は、今でもデータ入力です。請け負った業務を在宅ワーカーの他、国内外に100社程度あるパートナー企業を活用してデータ化しています。

企業から取ってきた案件を、在宅ワーカーにデータ入力業務として再委託するわけですが、案件が何千、何万と増えていくにつれて、とてもじゃないけど捌ききれなくなりました。つまり、私たち自身の業務量がボトルネックになりつつありました。このビジネスモデルでは、マッチングできる案件数が仲介会社のパワーに依存してしまうことに気付いたのです。これでは、在宅ワークをスタンダードにするという目的が達成できない、と考えました。そこで、私たちを仲介せずに、企業と在宅ワーカーに直接繋がってもらおうと考え、クラウドソーシング事業を開始しました。

朝倉:なるほど。BPO事業では収益性が確保できないということではなく、ビジョンが達成出来そうにないという理由で、クラウドソーシング事業を着想されたわけですね。

星:その通りです。当時はまだクラウドソーシングという言葉はなかったのですが、2007年にマッチングサイト「シュフティ」を作りました。現在では37万人の在宅ワーカーに登録して頂いております。

2018年3月期 第2四半期決算説明資料より

朝倉:他社のクラウドソーシングサイトと「シュフティ」にはどのような違いがありますか?

星:他社様は、高度な案件が多い傾向にあります。フリーランスのワーカーが本業として扱うようなデザインやプログラミングの案件です。「シュフティ」の登録者は20代から40代の女性で8割程度を占めています。「シュフティ」は、名前の通り、いわゆる主婦の方が多いサイトです。そのため、すきま時間を使ってそれほど難度が高くない仕事がしたいという需要が強いのです。データ収集やコール業務なども人気があります。

朝倉:コール業務というのは例えばテレアポのようなものですか?

星:そこまで複雑なものではなくて、たとえばDMの到着確認電話などの自宅で行える簡易的なものです。機器のメンテナンスや受注をするようなコール業務は、在宅ワークではなかなか難しいのですが、「DMを送りましたが届きましたか?」とか「明日の何時に頂いているご予約に変更はございませんか?」というような確認コールは特別な訓練や経験がなくてもこなせます。

在宅ワーカーのチカラを自社プロダクトに結集

朝倉:2007年に「シュフティ」によってクラウドソーシング事業が始まったところまで伺いました。そこからCGS事業を始めた経緯を教えて頂けますか?

星:2008年にCGS事業を始めました。CGSというのは、“Crowd generated service”を略した造語です。これは、私たち自身が、在宅ワーカーの労働力を活用したプロダクトを作っていこうという試みです。例えば、「入札情報速報サービスNJSS(エヌジェス)」があります。これは、データベース化された全国の官公庁や自治体の入札情報を一括検索できる月額制のWebサービスです。

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2018年3月期 第2四半期決算説明資料より

省庁、国立病院や独立行政法人などを含む官公庁や自治体といった公共機関の数は約7000あります。こういったところが、道路を作ったり、パソコンを調達したりするときには、すべて入札になります。この入札のマーケットが、年間20兆円と非常に大きいのです。件数で言うと100万案件以上あります。

朝倉:20兆円は大きいですね。

星:はい。しかし、入札情報は約7000の官公庁のホームページに、それぞれ開示されています。なので、例えば、パソコンメーカーがパソコンの入札をチェックしようと思ったときには、約7000のホームページを見張っている必要がありますが、これはほとんど不可能であるため、多くの会社が機会損失していると言えます。

こうした入札情報を私たちが、「人力」でデータベース化しました。WEB上の情報なので、ロボットでクローリングすることはある程度は可能なのですが、入札の情報に関してはPDFのスキャン画像が多いのです。

朝倉:ワードファイルでもなくて……、印刷したものをまたスキャンしているわけですね。それはなかなか不思議ですね(笑)。

星:はい。なので、クローリングでは全ての情報を抽出できません。OCR(Optical Character Recognition/Reader)によってPDFを文字化する方法はありますが、精度が低いこともあり、「人力」でないと網羅的に情報を収集できないのが現状です。そこで、「シュフティ」のワーカーさんに仕事を割り振ることで、WEBサイトを閲覧してもらい、データベースへの登録をしてもらいます。こうして、年間に100万案件以上をデータベース化し、入札を扱っている企業に月額制で提供しています。

朝倉:そこで自社のクラウドソーシングを活用するわけですね。

星:弊社では、このようなプロダクトをいくつも展開しています。例えば、幼稚園と保育園にカメラマンを派遣する「えんフォト」、タブレットで送信した画像データを在宅ワーカーがリアルタイムで入力を行う「KAMIMAGE(カミメージ)」、コール業務を行う「フレックスコール」、「空き家活用ポータル」というものもあります。空き家が社会問題になっていますので、全国の在宅ワーカーさんに散歩のついでに空き家を探して登録してもらい、それを全国の不動産関係者に提供するというものです。このような自社で展開しているプロダクトをCGSと呼んでおりますが、これが私たちの収益のメインになっています。 シュフティがCGS事業の土台の役割をしているわけです。

2018年3月期 第2四半期決算説明資料より

朝倉:CGSは利益率が高いと伺っていますが、どういった理由がありますか?

星:在宅ワーカーに直接業務を発注することによって、コストを下げることが出来るのは想像しやすいと思います。しかし、在宅ワーカーを活用するのは実は難しいのです。というのも、品質の低いものを納品されてしまったり、仕事の途中で連絡が途絶えたりするリスクがあるからです。こうならないように、ディレクションをする必要があるのですが、私たちはこのノウハウを持っています。創業以来、BPO事業をずっとやってきた経験があるからです。