【SOU】ブランド品の適正な買取価格をオープンにするminey Vol.3

ブランド品の買取と、事業者に対するオークション販売を展開する株式会社SOU。現在のビジネスモデルにたどり着いた経緯や今後の事業構想について、嵜本晋輔代表取締役社長にお話を伺います。前回の記事はこちら

(ライター:中村慎太郎)

BtoBオークションのビジネスを海外に展開する

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):前回、中国Alipay(アリペイ)のジーマ・クレジット(芝麻信用)の話が出ましたが、今後はこのような与信情報を持ったプラットフォームを展開する事業者が覇権を握るのではないかと思います。ただ、日本でそれができるプレイヤーが実は限られていますよね。

嵜本:私たちは買取を得意としているプレイヤーであり、買取で日本一を取り、世界一を取る戦略でいきたいと考えています。他社のように、一般消費者に向けてラグジュアリーな商品を売っていくのではなく、日本国内での買取力をもっと高めていきます。同時に、これから伸びてくる東南アジアなどでも買取という切り口で同じ地産地消型ビジネスができればと考えています。

個人からモノを買い取るときは、個人情報データが取れます。古物業法上、そこはデジタルではできない部分です。そこでデジタルとリアルを融合したようなサービスを構想しています。そうしたデータを与信にも活用してビジネスにできれば面白いことになると思います。

朝倉:日本で買い取って仕入れたものを海外で販売するということですか。それとも海外でも仕入れるんでしょうか?

嵜本:海外でも仕入れたいですね。確実に伸びてくると思っています。

逆に日本のオークションに参加する海外のバイヤーも増えてきています。一方で、私たちは香港でもダイヤモンドのオークションをしていますが、約7割がインド人で、約3割が中国人です。ここに日本人はほとんどいません。

朝倉:御社のビジネスモデルだともっと海外のバイヤーが来るのでは?

嵜本:関税の問題で諦める方が多いですね。また、日本の古物商の許可も必要になります。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):御社側の工夫でオークション方法を変えて関税の問題をクリアすることは難しいのでしょうか?

嵜本:現時点では簡単ではないですね。業界慣習的な理由ですが、オークションをオンラインで世界とつなげてもうまくいかない。オークションというと「5万!」「10万!」と競っていくやり方と思うかもしれませんが、私たちの業界では、一斉に値段を出して一番高い人が落札するのが暗黙のルールなんです。後から15万、20万と乗せるのは「美しくない」とされています。

村上:実際は価格は青天井ではなく、マーケットプライスがあるということですね。プロフェッショナルとして、お互いの利益を食い合わないようにするわけですね。

嵜本:そうですね、出し合った競り価格の2千円の誤差にしびれるみたいな話ですね(笑)。そういう業界なので、各出品商品が落札されるまでにかかる時間が非常に短く、1日で多くの点数を捌くことには向いています。時計だけで10億円以上売れることもありますからね。

このあたりのノウハウを日本一持っているということは、世界一だと言っていいと思うんですよ。東南アジアはまだ買取の文化がありません。質屋の文化です。アメリカは委託で、こちらも質屋の文化です。買取があまり活発ではないわけですね。

そのため、我々のオークションのように、BtoBのラグジュアリーリユースマーケットも存在しないわけです。ここまで充実しているのは日本だけではないかと思います。ですから、BtoBのマーケットデータを持てる企業は海外でも確実に強いはずだと考えています。

(SOU『会社概要資料』より )

資産の可視化によるリユース需要の開拓

朝倉:国内市場の事業だけを見ても、まだまだ伸びていく余地が大きいと思いますが、先ほどおっしゃられたmineyと海外展開が大きなテーマとなってくるわけですね。

嵜本:そうですね。ジャンルも拡大していきますし、ひとりひとりのパーソナルなアセットマネジメント、実物資産の管理アドバイザーのような立ち位置を取っていきたいと思っています。そのあたりで不動産や車も始めると思います。

朝倉:mineyについてはマネーフォワードとも連携しており、自分が所有しているブランド品の価値が資産として可視化されているのですよね。

嵜本:可視化されますし、BtoBの市場で価格変動が起これば、ユーザーにもモノの価値の変動が伝えられます。例えばですが、「あなたの商品の価値が3万5000円分下がっていますよ。そろそろ売り時ではありませんか?」といったパーソナライズされたプッシュ通知を送ります。

(SOU『成長可能性に関する説明資料』より)

そこでワンタップで即時買取できるような仕組みを作れたら、さらに面白くなるでしょうね。

朝倉:なるほど。マクロに目を向けて伺いますが、マーケットとしての買取はどのような変化をしていますか?

嵜本:買取は年々かなり伸びていますね。ラグジュアリーな時計、バッグ、ジュエリーなどの新品市場も年間3%くらい成長しており、実際に売れている金額が2020年に3.3兆円を突破すると言われています。それに対してリユースされている割合は5〜6000億円です。

朝倉:それはかなり白地がありますね。

嵜本:3.3兆円にたいして5000億円だとしたら、約2兆8000億円が毎年クローゼットに積み上がっているわけです。その人たちはリユースを考えていません。その8割の方を動かすにはどうしたらいいかと考えて作ったのがmineyというアプリなんです。実物資産の現在価値の視覚化ですね。

アプリに登録して自分の資産を持ち歩き、必要なときにキャッシュに変えるといった感覚です。モノをお金に変えられるスペシャリストという立ち位置を取っていきたいと思っています。

(SOU『成長可能性に関する説明資料』より)

村上:mineyの取り扱い商材はどこまで増やすのですか?

嵜本:基本的には単価の高いものから優先的に取り組んでいこうと考えています。不動産、車、ワインあたりですね。そのへんはまだ自社のデータベースにないので他のプレイヤーの協力を得て、mineyアプリに蓄積するという形を想定しています。

村上:これまで、買取の分野には安心できるプレイヤーがおらず、価格だけで買い取り先が選ばれているような印象を持っていたのですが、御社の戦略を伺うと、今後も業界で強い存在感を持つことができそうですね。

嵜本:ありがとうございます。ただ、一般消費者もある程度、情報収集をして価格交渉をしてくるケースが増えています。当たり前のトレンドですが、売り手と買い手の情報格差が埋まってきているのですね。こうした傾向は、我々にとって一定程度ネガティブに作用すると思っています。適正価格がオープンになり、買取側からの価格交渉がなかなか通用しない時代になってきます。

私たちの強みは価格交渉力が強いことでした。それも、情報の非対称性があったことに加え、コンシェルジュの接客力があったからです。ですが、その立場から得られる利益が徐々に小さくなってしまっていて、今後もっとネガティブに作用する可能性があると考えたため、逆にお客様に対して適正な価格をオープンにしていこうと考え、mineyを仕掛けている次第です。

買取が難しくなっていく傾向にあるので、正しいデータをきちんと取りにいくポジションにいこうという考え方ですね。

村上:これまでの買取のプレイヤーは、基本的には、商品ごとに粗利を確定されることを優先し、できるだけ在庫を持ちたくないというオペレーションマネジメントをしていたかと思います。

一方、御社の優位性となっているのは商品単位の粗利よりも、買取の信用力を優先させる戦略なのですね。この戦略が他社ではできないポイントなのでしょう。

嵜本:まさにその通りです。競合他社は川下の、最終購買者のパイの争いをしています。我々は、売りたいと思う人に対して、買いますよというアプローチをしており、さらにまだ売りたいとすら思っていないユーザーをもっと川上で獲得していこうとしているのです。

朝倉:まだ市場に出ていないものを市場化する、マーケットそのものを作り出すという戦略なのですね。本日はありがとうございました。

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