【SmartHR】人事労務の手続きを効率化し、「すべての時間を価値ある仕事に」変えるHR SaaS

今般、シニフィアン株式会社は運用するグロースファンド「THE FUND」を通じて、株式会社SmartHRへの出資を実施しました。今回の資本参加を機に、SmartHRの事業拡大に向け、リスクマネーと経営知見の提供を行っていきます。なお、今回のSmartHRに対する出資は、2019年6月に設立された「THE FUND」の第1号案件にあたります。
テクノロジーを活用して労務を大幅に効率化するSmartHRの事業と、目指す世界観について、宮田社長にお話を伺いました。

宮田 昇始(みやた しょうじ)
株式会社SmartHRの代表取締役CEO。2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に自身の闘病経験をもとにしたクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を公開。利用企業数は公開後3年半で26,000社を突破。2019年1月には確定拠出年金や保険を駆使して「お金の不安」を解消し、いわゆる老後2,000万円問題の解決を目指す「SmartHR Insurance」を、同4月には「会議」における非合理の解消を目指す「SmartMeeting」を設立した。

(ライター:代麻理子)

複雑でアナログな人事労務をシンプルにするサービス

シニフィアン:まずはSmartHRの事業の概要について教えて下さい。

宮田 昇始氏(株式会社SmartHR代表取締役。以下、宮田):SmartHRでは人事向けのクラウド型ソフトウェアを提供しています。一言で人事といっても、採用から教育、制度・環境の整備、労務管理と幅広いですが、SmartHRは、労務における複雑で大量なペーパーワークをテクノロジーの力で簡単にするというサービスです。

具体的には、年末調整や雇用契約、社会保険手続きのような、大量のペーパーワークと、それに付随する各役所への手続等を、スマホやパソコンで簡単に済ませることができるシステムを提供しています。

企業の中の業務効率化ももちろんですが、行政手続きの簡略化を担っていることもSmartHRの特徴です。社会保険手続きは行政に届出が必要です。政府のAPIを通し、行政への社会保険手続きがオンラインで全て完結するようなビジネスを提供しております。

シニフィアン:行政手続きの簡略化は社会的ニーズも高いでしょうね。現在どのくらい企業を対象に展開されているんですか?

宮田:サービスを公開して現在3年半ですが、2万6,000社にご利用いただいています。もともとはIT企業を中心に広まってきたサービスだったのですが、最近ですと大手チェーン店様などを中心に、10万名規模の企業にもご利用いただいています。

SmartHRには、「行政手続きまでオンラインで完結」という特徴があります。その特徴ゆえ、ご利用いただいている企業で働く従業員の方のデータがどんどん溜まっていきます。そのデータは、家族構成や人事データ、所得など、ここまでまとまっているのは極めて希少性が高いものです。通常のサービスですと、一度登録したら情報を更新するといったことはあまりしないと思いますが、行政手続きのためのデータであるため、登録情報に変更が生じたら都度更新されます。

この希少性が高い最新のデータを活用して、今後様々な事業を展開していきたいと考えています。具体的には、人事向けのBI解析ツールや、確定拠出年金系サービス、それに関連する保険のサービスなどの提供を予定しております。人事の方がより意思決定をしやすくなるサービスを展開していきたいと思っています。

先が見えなくなるような自身の難病が原体験

シニフィアン:労務や福利厚生、働いている人に関連する幅広い業務を執り行っていくんですね。

宮田:はい。我々は「すべての時間を価値ある仕事に」というサービスミッションを掲げています。人事や労務の方が効率的に働けるのはもちろんのこと、ゆくゆくは従業員の方も効率的かつ安心して働けるようなサービスを作っていきたいと考えています。

こう考えるようになった理由の一つに、自身の原体験があります。今から7年ほど前に、数万人に1人といわれる「ハント症候群」という難病にかかりました。顔面麻痺や聴覚、味覚が無くなり、最終的には歩けなくなり、数ヶ月間車椅子で生活をしていました。医師からも「治るかどうか分からない」と伝えられ、当時はこの先の人生がどうなるんだろうという不安でいっぱいでした。

今はこうして元気に働けているのですが、それが可能になったのは、社会保険制度のひとつである傷病手当金を受け、リハビリに専念できたお陰だと思っています。自身の体験をふまえて、社会保険制度の大切さを痛感しました。

スタートアップならではのフットワークであらゆる手続きを簡単に

シニフィアン:SmartHRはご自身の体験をもとにつくられたんですね。SmartHRを通じて、どのような社会を実現していきたいですか?

宮田: SmartHRを民間のマイナンバーのような存在に発展させ、行政手続きとうまく繋がったインターフェースを提供していこうと考えています。例えば、SmartHRのIDさえあれば、転職に伴う手続きも簡単だし、いろんな行政手続きが簡単にできる、といったようなことを実現したいですね。

マイナンバー制度は2015年に発表され、2016年に法案が施行されました。この施行により、各企業、事業者は従業員やその扶養家族のマイナンバーを集めなければなりません。

マイナンバーを使えばいろんな手続きが簡略化されると言われていました。ですが、実情は、手続きが簡略化されることはなく、マイナンバーを書く欄が増え、管理コストだけが上がっているというような状況です。我々のようなフットワークの軽い民間の会社がサービスを通してサポートすることで、人事労務に携わる方々の「すべての時間を価値ある仕事に」を実現していけたらと思っています。

既存システムとのスムーズな連携に向けて

シニフィアン:スタートアップならではのスピード感で社会課題を解決していくのですね。そういった社会を実現する上で、宮田社長が感じている課題感があれば教えてください。

宮田:感じている課題は2つあります。まず、関連するパートナーが多いということです。行政の方もいますし、既存のシステムとも連携していく必要があります。SmartHRを採用してくださっている大企業では、既に他社の基幹ウェアやパッケージソフトウェアを入れているところがほとんどです。

もとから入っているシステムとうまく連携できないと、あまり便利にならないという事態が発生してしまいます。今後は、もともと入っているシステムとのよりスムーズな連携や、大きなベンダーさんとの事業提携が重要になってくると思います。事業提携周りに関しては、シニフィアンの皆さんにもぜひお力添えいただきたいと思っています。

HR SaaSのプラットフォームになるために

宮田:2つ目は、まだぶつかったことのない課題にどう備えるかということです。SmartHR社内にはシリアルアントプレナーがおりません。よく、「スタートアップは不確実性の塊だ」と言われますが、スタートアップで生じる問題のうち、半分くらいは事前に知ってさえいれば避けられるものだと感じています。

我々は今、どこがHR SaaSのプラットフォームになるかといった時代の変遷の真っ只中にいます。SmartHRは貴重なHRのデータを持っており、HRのプラットフォームに成り得るポジションにいると思っています。ですが、注意しないと、自分たちの一つのミスが、取り返しのつかない事態に繋がりかねません。

先日、ビル・ゲイツが「過去におかした最大の過ちは?」と聞かれた時に「MicrosoftがAndroidの地位を取れなかったこと」と答えたという記事を読みました。規模は違いますが、我々がビジネスを展開しているHRのジャンルにおいても、同じことが大いに起こり得るはずです。逆に言えば、そうしたミスをおかさぬように気をつけていれば、大きなビジネスチャンスがあることも確信しています。

経験豊富なシニフィアンの皆さんの知見をお借りしながら、余計な障害に当たらずに、正しい戦略を描き、速いスピードで成長していきたいと思っております。具体的には、コーポレートガバナンスや、資本市場との向き合い方などにお力添えいただくことを期待しています。

海外上場をも目指せるレベルの組織になれるよう、コーポレートを強化

シニフィアン:最後に、今後の意気込みをお聞かせください。

宮田:SmartHRでは現在、海外上場をも目指せるレベルの組織をつくるという目標を立てています。国内でそういったことにチャレンジできる独立系スタートアップの数はそう多くはないんじゃないでしょうか。SmartHRは、この半年で、海外投資家とのコミュニケーションや海外投資家からの出資を受ける機会に恵まれ、会社としてかつてない経験をすることができました。この経験を踏まえ、さらにはグローバル・オファリングや海外上場をも目指せるレベルの組織をつくるという風に今後も会社が目指す水準を高めていきたいと考えています。一方で、コーポレート分野での知識と実行力はまだまだ不足しています。今後はコーポレート分野に加え、英語×スペシャリティを持った方の採用を強化していこうと考えています。

SmartHRは国内だけにとどまらず、働くすべての人を後押しするプラットフォームへと拡大を続けていきます。「もっと、価値ある仕事に集中できるように。もっと、生産性を高められるように」というミッションに共感していただき、共にチャレンジをしていける方々の挑戦をお待ちしています。

シニフィアン:SmartHRのサービスをより多くの方々に広められる体制を構築できるよう、我々も引き続き経営力強化に向けたサポートに努めていきます。本日はありがとうございました!