【SHIFT】ソフトウェア開発工程を革新する「Made in Japan」品質 Vol.2

ITが末端まで浸透した現代社会において、いたる所で社会基盤を支えているさまざまなソフトウェア。それらが正常に動作を続けるために、開発元とは異なる第三者の視点から効率的で正確なテストを実施しているのがSHIFTです。同社の丹下大代表取締役社長にビジネスの概要や強み、今後の戦略について聞いたインタビューの第2回。前回の記事はこちらです。

(ライター:大西洋平)

攻めの人材採用で大型案件を続々と獲得

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):ビジネスが軌道に乗り始めたのはいつ頃からですか?

丹下大(SHIFT代表取締役社長。以下、丹下):2016年に、ある小売の大手企業の基幹システム刷新に当社が参画し、高く評価していただいたのが大きなきっかけですね。僕は大きなチャンスが到来したと思ったので、人材紹介会社に知識と経験が豊富なエンジニアやプロジェクトマネージャーを集めてもらうことにしました。対象としたのは、大手IT企業で100億円以上の開発プロジェクトを手掛けた実績のあるトップ100名です。そして、彼らを含め、半年後には42名のハイスキル人材がSHIFTに所属することになりました。

小林:思い切って経営資源を投入し、大きな勝負に打って出たわけですね。

丹下:そうです。そのコストがかさんで2017年上期は業績の下方修正を余儀なくされましたが、この採用に投じた2億円は、彼らの活躍で20億円の案件獲得につながりました。優秀な人材をそろえたことで、金融機関をはじめとする大手企業からも受注が相次ぐことになったのです。

SHIFT 2017年8月期第3四半期決算説明会資料より。2017年第1四半期に売上が減少したものの、その後注力領域が大きく伸びた結果、売上が急増

小林:なるほど。その攻めの一手が、取材の冒頭でもおっしゃっていた戦略につながっていったわけですか。つまり、最終段階でソフトの不具合を発見するテストだけにとどまらず、その上流の工程で発生するバグ(プログラム上の欠陥)を未然に防ぐためのコンサルティングサービスに注力していくうえで、強力な戦力を獲得したということですね。

丹下:「ビジネスとは煽りである」というのが僕の持論で、当初からそういった大きな仕事に結びつけていくことを狙って、積極的に仕掛けて種を蒔いてきました。これまではわずか6名の営業スタッフでこなしてきましたが、大型案件が増えてきただけに、今後は1000名規模の営業体制を築き上げたいと考えています。さらに、予定されている開発案件に関する情報を網羅的に集め、その中でこれぞと思うものを当社が初期段階から関わっていく戦略を確立したいですね。それに、エンジニアのデータベースも作ろうと思っています。

小林:私が認識している限り、競合他社はそのような上流の工程まで攻めていませんよね?

丹下:世界的に見ても、そこまでやっている競合はドイツのSAPをテストしている会社ぐらいしか思い当たりませんね。だけど、本当は初期段階から、テストの観点も踏まえて開発を行ったほうがクライアントの負うリスクが軽減されるのは明らかです。

小林:他のテスト会社では非正規社員の占める割合がかなり高いのに対し、御社では逆に正社員が多い。競合他社はもっぱら非正規社員にテストの実務を依存しており、その点でも御社は異色ですね。

SHIFT 2017年8月期第3四半期決算説明会資料より

丹下:テストの会社だと思うとそうかもしれませんが、SI(システムインテグレーター)として捉えれば違和感はないでしょう。当社では、正社員として本部から現場を指揮するエンジニアの占める割合が高くなっています。

ソフトウェア提供のボトルネックを解消する

小林:そうしますと、御社と完全に競合するのはいわゆるテスト会社ではなく、アクセンチュアやIBMといったSIになってくるわけですか?

丹下:中途採用においてもバッティングするのは、そういった大手SIですね。ただ、SI業界は開発することに終始していて、テストも含めた包括的な戦略のほうには目が向けられていません。それに、SIが抱えているエンジニアたちはテストをやりたくて組織に属しているわけではないのが現実です。99%の確率で正常に動作すると信じて自作したプログラムを、開発期間におけるせいぜい2〜3割の時間を充ててテストしているだけにすぎません。

小林:テスト特化型の会社に対しても、SIに対しても、競争優位性を構築できているということですね。

丹下:経営者からすれば、SHIFTに頼んだほうがコスト的に安い。現場の開発者には、「僕たちの仕事を楽にしてくれて助かった」と感謝してもらえる。それが当社の強みです。その一方で、当社の社員の年収にもこだわっています。30年間当社で働ける人に対しては常に年収1500万円以上を保ち、子どもを私立の大学に通わせられるという待遇を死守したい。そして、「○○銀行のシステムが正常に動いているのはお父さんが関わったからだよ」と子どもに自慢してもらいたいのです。

小林:ソフトのテストという領域は、グローバルに見てどのような点からさらに付加価値の向上を追求できるのでしょうか?

丹下:まずはBPR(業務改革)よりももっと直接的に、ソフトウェア開発のコスト削減や生産性の向上を追求することですね。もう1つは、テスト専門会社の強みを生かして技術やノウハウの集約化を進め、クライアントが属する業界に応じたベストソリューションを提供することでしょう。

例えば、現在、アプリケーションソフトは世界で年間1万3000もの数がローンチされていますが、そのうちでビジネスとして成り立っているのは、せいぜい上位100にすぎないでしょう。つまり、残りの1万2900作品は作っては捨ての繰り返しとなっているのです。

小林:確かに、ヒットを記録するのはほんの一握りで、日の目を見ないアプリのほうが圧倒的多数ですね。

丹下:その主因は食糧問題と似たようなもので、要はアンバランスがもたらしているものだというのが個人的な見解です。僕たちのようなビジネスを営んでいる人が限られていることが一つのボトルネックとなっているわけです。テストを専門に手掛ける会社をもっと増やさないと、ユーザーのもとまでシームレスに(継ぎ目なく)ソフトが届きません。だから、ボトルネックとなっている部分をどうにかしたいと強く思っています。

小林:SHIFTは上場してから3年半近くが経過していますが、IPO後も追求し続けているのは、昨今のソフトウェア開発の在り方を根本的に変えることなのですね。

丹下:僕自身、IPOがゴールだと思ったことはまったくなく、単なる通過点にすぎないと捉えています。今のようなペースで進捗していけば、これだけの業績になるという見通しは立つものです。時代の変化や資金、人材の不足などにより、達成できる時期が延びることはあるかもしれませんが、やるべきことははっきりしています。時価総額も700億円を突破した今、そこからさらに1兆円まで積み上げていくにはどうすればいいのか、その道筋は見えているのですが、悩みがあるとすれば、経営者としてのメンター(指導者)を求めているのも確かです。だから、優秀な先輩たちから精力的に話をうかがうようにしていますね。

時価総額1兆円達成に向け、さらに人材獲得に注力

小林:時価総額1兆円の達成に向けて、現時点で最も拡充すべきだと考えているのは、どういった点についてでしょうか? 経営経験ですか? それとも人材、またはキャッシュでしょうか?

丹下:やっぱり、人材ですよ。経験については、先輩の経営者に聞けばわかること。キャッシュにしても、業績や財務がきちんとしてれば調達できるものです。本当に心配しているのは採用についてで、いっそう優秀な人たちを獲得していくためにも、彼らが大いに魅力を感じて存分に楽しむことができる事業に育て上げていかなければなりません。

小林:その意味では、テストという仕事のイメージ作りも必要ですよね。ソフト業界内において最終工程の一番端っこにあるという既成概念を革新させることも求められてきそうです。たとえば、スターバックスは人材採用におけるブランディングを大きく変えたことが店舗網の拡大にも結びつきましたね。従来なら、ただの喫茶店の店員にすぎなかった職業のイメージを大きく塗り替えたわけです。

丹下:おっしゃる通りで、確かにバリスタなんて呼ばれると、憧れのようなものを感じさせますね。僕もテストの関わるエンジニアたちに対してもっとカッコイイ呼称をつけるべきだと思っていて、あれこれ試行錯誤をしているのですが、まだ現時点ではこれぞと思う言葉が見つかっていません。

中期経営計画に込めた想い

小林:ところで、御社に関して非常に特徴的だと感じたのは、中期経営計画をすごく意識した経営で、進捗状況もこまめに開示していること。ここまで徹底している上場企業は意外と少ないのが実情です。「定性的な取り組みも含めて、次のような進捗となっています」という御社の説明スタンスも独特ですね。

SHIFT 2017年8月期 第4四半期及び通期 決算説明会資料より。中計を単に立案して終わるのではなく、決算説明会資料を通じてその進捗を定期的に報告している

丹下:上場企業なので数値目標を掲げているものの、僕自身が売上や利益についてコミットしたことは今までに一度もありません。決めてしまうと、その数字に縛られてしまうからです。あくまで、数字は結果です。だから、IRの場においても、「結果としてこうなりました」と開き直って報告していますね。

小林:もう一つ、中期経営計画の中で興味深かったのは、営業力の拡充などによるエンジン強化や事業フィールドの拡大とともに、経営力という基盤システムの強化を方針として掲げていることです。どういったことを通じて、その必要性を感じたのでしょうか?

丹下:まず細かい話で言えば、管理会計を徹底しないと利益を追求できません。当社にとっては粗利がKPI(重要業績評価指標)となっており、年間4000件に上るプロジェクトを毎日リアルタイムで管理するように心掛けています。そうしなければ、何をどう改める必要があるのかという反省もできません。

また、グループ全体が今の規模まで達してくると、企業経営を“町の運営”として捉える必要が出てきています。インフラを備えてみんなが楽しく働ける環境を整えておかなければ、SHIFTの外の経済圏に出てしまう人が現れるからです。だからこそ、安心・安全に働ける環境を社内に整えることをつねに社内に対して約束しています。

小林:SHIFTという町がさらなる発展を遂げ、ソフトのテストに対するイメージを抜本的に変えていくことに大いに期待したいところです。本日は貴重な話をありがとうございました!

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