INTERVIEW

【オープンロジ】深刻な物流危機を解決するプラットフォームの構築に向けて—シニフィアンとの資本業務提携

2019.02.07

株式会社オープンロジとシニフィアン株式会社は今般、物流プラットフォームサービスの成長に向けた資本業務提携を締結しました。 現在、ECの普及に伴う宅配便取扱個数の急増により、物流キャパシティの逼迫が日本社会の深刻な課題として顕在化しつつあります。荷主である事業者にとって、事業規模に合わせた物流網は成長に不可欠ですが、その構築は難しく、手軽に安心して活用できる効率的な物流サービスが求められています。 こうした社会課題に対して、オープンロジがどのようなソリューションを提供しているのか、伊藤社長にお話を伺いました。

伊藤 秀嗣 (いとう ひでつぐ)

明治大学卒業、ネットエイジを経て定期購読のECサイト富士山マガジンサービス創業メンバーとして、営業、マーケティング、事業開発など多岐にわたる領域を担当し、成長に貢献。レガシーな物流領域をもっとオープンに革新したいという思いから2013年12月株式会社オープンロジを設立。

(ライター:中村慎太郎 撮影:疋田千里)

小規模事業者でも簡単に利用できる物流アウトソーシングサービス

シニフィアン:まずは、オープンロジの事業の概要を教えてください。

伊藤 秀嗣(株式会社オープンロジ 代表取締役CEO。以下、伊藤):オープンロジは、2014年の10月に開始した物流のアウトソーシングサービスです。倉庫をネットワーク化し、面倒な物流業務を誰でも簡単に倉庫にアウトソーシングできるプラットフォームサービスです。

これまで、商品の在庫管理や出荷管理などの物流業務をアウトソーシングしようとすると、規模の小さい事業者の場合、どうしても受け入れ側である倉庫会社が消極的にならざるを得ないという状況がありました。オープンロジが間に入って事前にオペレーションを定め、倉庫会社と契約することで、中小規模の事業者でもご利用いただくことができます。 また、今までは電話やFAXといったアナログな手法でやり取りしていた見積もりや問い合わせの作業をオンライン化すると同時に、複雑な料金体系を簡素化しました。シンプルで透明性の高い価格の物流サービスを、迅速にご利用いただくことができます。

物流業務は多数の荷主がいて複数の倉庫会社にまたがる複雑なものですが、私たちはシステムを通じてオペレーションを一元化することで、誰でも必要な時にWEBから会員登録しすぐに使えるという「物流アウトソーシングサービスのEコマース化」を、日本で初めて実現しています。 物流業務のアウトソーシング契約事業者数で見ると、アマゾンや楽天などの特定のモール展開事業者以外が活用するオープンな物流サービスとしては、当社は日本最大級の規模を有しています。

シニフィアン:主たる顧客、つまり、荷主さんはどのような方なのでしょうか?

伊藤:多岐に渡ります。BtoC、BtoB、CtoC、越境ECと幅広いEC事業者の方に使われております。ユーザー数で5,000ユーザーを突破したところです。数千坪クラスの大規模な荷主さんもいらっしゃいますし、小さい規模ですと、副業でEC事業を営んでいるような個人のお客様もいらっしゃいます。 また、国内のみならず海外の荷主さんも増えております。国内外でのEC市場の成長に伴い、規模の大小に関係なく複雑な物流業務に対して何らかのソリューションを求めている方々に広くご利用頂いております。

EC事業者にとって、物流のノウハウ不足は事業成長のボトルネック

シニフィアン:なるほど。それでは、オープンロジの事業を通じて、どういった社会を実現したいか、伊藤社長のお考えをお聞かせ下さい。

伊藤:私たちは、テクノロジーを使って誰もが安心して使える効率的な物流のネットワークを提供することで、モノの流れを変え、さらには商流自体を変えていくプラットフォームを構築しようとしています。こうしたプラットフォームを通じて、「考えない物流、無駄がない物流、売れる物流」の提供を目指しています。

ECの成長に伴い、日本の物流量は圧倒的に拡大しています。今後も大きな増加が見込まれるわけですが、その一方で、増え続けるニーズに対応する物流インフラが整っていないのが現状です。荷主、倉庫会社、運送会社といった物流を取り巻くそれぞれの事業者が分断され、困難に直面している状況なのです。

まず荷主については、最近では中小事業者を中心に、新規でEC事業に参入する方が増えています。一方でこうした事業者の方々は、どうしても物流に関する知識が不足していることが多く、自己流のやり方で物流に対応なさっていることがよくあります。その結果、自前のリソースによる事業成長が限界に達したり、物流に対する投資優先度が低いため自己流のやり方のまま個別最適化されたりしていることが少なくありません。

また倉庫会社については、中小事業者も多く、案件が急速に増えている一方、デジタル化やシステム化が十分に進んでいません。荷主や運送会社から要求されるシステム連携もままならず、未だにアナログで非効率な運用が放置されている状態です。

そして運送会社や配送会社の視点から見ると、今後のEC化率の伸びを考えた場合、宅配便取扱個数が現在の年間40億個から2倍の80億個になる可能性が、十分にあります。しかし、肝心のドライバーの人員を今の2倍にすることはとても難しい状態です。そこで荷主や倉庫との連携を進めていき、効率的な配送ネットワークを構築していくことが必要だと考えています。

こうした背景もあり、各領域のプレイヤーが最大限に自助努力をしているのにもかかわらず、各機能が分断されているために非効率な物流システムが放置されているのが現状です。 今後は個別の企業努力だけでなく、物流チェーンをITで連携し情報を共有することでモノの流れを連動させるような、ダイナミックな取り組みが重要になってくると私たちは考えています。

例えば、ファーストリテイリングさんのような大企業であれば、物流に多額の投資を行うことで、自社に最適化した物流チェーンを構築することができます。しかしながら、多くの事業者は、そこまで物流に投資できないのが現実ではないでしょうか。私たちは、物流に大規模な投資ができない中小規模の事業者でも、物流に悩む必要のない社会を作っていきたいと考えています。 また、物流のデータを活用することで、無駄のない物流を作り、その物流データを起点に、商流を変えていくようなプラットフォームを作っていこうとしています。

物流システム全体を効率化するプラットフォームに向けて

シニフィアン:物流を効率的で無駄のないシステムにしていくためには、配送会社だけが努力する、あるいは倉庫会社だけが努力するということではなく、荷主、倉庫会社、配送会社が相互に連携することが必要であり、御社のサービスはそうした連携の役割を担っていくということですね。 こうした社会を実現していく上で、今はどのような課題を感じてらっしゃいますか?

伊藤:最大の課題は、事業の成長に、私たち自身のマネジメントの成長が追いついていないということです。 おかげさまで事業は急速に伸びています。従業員もここ半年で2倍近くに増え、今では約90名の体制になっています。今後も海外進出や新規事業の展開など、積極的に事業を大きくしていこうと考えています。

そのためには、事業を伸ばす「攻め」だけでなく、「守り」を整える必要を痛感しています。「守り」があるからこそ、事業成長を狙って思いきった「攻め」の打ち手を講じることができるわけですから。攻守のバランスを整え、組織を成長させていくことが、目下の課題です。 そんな当社がポストIPOを見据えた経営基盤の強化および今後の積極的な事業展開に取り組むにあたり、経験豊富なシニフィアンのメンバーは、非常に心強い存在です。既に何度も様々な課題について密なディスカッションをさせていただいていますが、一段階も二段階もレベルアップしているのを実感しています。

シニフィアン:最後に、事業に対する思いをお聞かせください。

伊藤:私たちは、「誰もが安心して使える効率的な物流ネットワークを提供することで、モノの流れを変え、商流を変えるプラットフォームになる」という経営ビジョンを掲げています。将来的には、「物流と言えばオープンロジ」と言われるよう、社会的役割を担っていきたいと考えております。

これまでは、ECで商品を買ったら届くのが当たり前でした。ところが、物流の問題が指摘され続けているものの一向に課題を解決できていない現状を考えると、このままではその「当たり前」が、維持できなくなってしまうかもしれません。

物流は経済を支えるインフラであり、これまで以上にその改革の必要性が高まっています。商品を保管したり、出荷したりするといった業務は、どうしても軽視されがちですが、こうした業務がなければ物流は成り立ちません。こういった業務の効率化も含めて、物流はテクノロジーの進歩によって、ダイナミックに変化していくことでしょう。その一翼を担っていくことが、オープンロジの使命です。

事業拡大に伴い、我々が掲げるビジョンを実現できるようなメンバーも、今後ますます積極的に採用していきます。

シニフィアン:重大な役目ですね。シニフィアンとしても、オープンロジがより着実に事業オペレーションを遂行できるよう、組織体制・管理体制の強化や、資本政策の面での支援を続けていきます。 本日はありがとうございました。