【ニューラルポケット】AIの社会実装をグローバルで目指す—シニフィアンとの資本業務提携

ニューラルポケット株式会社とシニフィアン株式会社は今般、AIの社会実装に向けた資本業務提携を締結しました。
社会課題の解決に向けてAIを活用することの有効性、必要性が頻繁に指摘されていますが、その実現のためには、AIを単に特定用途に特化した単発のソリューションに終始させるのではなく、汎用的なサービスに発展させ、社会実装していく必要があります。
ファッション領域でAI解析技術を洗練させてきたニューラルポケット社が目指す姿について、重松社長にお話を伺いました。

重松 路威 (しげまつ ろい)
ニューラルポケット株式会社代表取締役社長。 東京大学工学部卒業、東京大学大学院修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社、独フランクフルト支社、米シカゴ支社を経て、2016年に同社パートナー(共同経営者)に就任。AI・IoTをグローバルでリードし、多様な産業におけるAI活用や事業化を支援。洋服検知や需要予測、街づくりやターゲット広告等の多様なAI技術を通じて、様々な生活シーンにおける消費者のライフスタイルを革新すべく、2018年にファッションポケット(現・ニューラルポケット)を創業。

(ライター:中村慎太郎 撮影:Kota Hamaguchi)

AIを活用した「未来の社会」を作る会社

シニフィアン:まずはニューラルポケットの事業内容について教えて下さい。

重松路威氏(ニューラルポケット株式会社 代表取締役社長。以下、重松):一言で言うと、AIのエンジニアリング技術を使って、未来の社会を形成するサービスを作る事業に取り組んでいます。国内のみならず、新興国を中心に海外展開も行っています。

具体的には目下、3つの事業に取り組んでいます。まず、ファッションのトレンド分析・活用事業です。アパレル企業向けにファッションのトレンドを可視化して、商品企画に活用する情報を提供するサービスです。導入企業はすでに多数あります。2019年2月時点で、弊社のサービスを利用した企画商品は、全国2000店舗超で扱われています。今月(2019年2月)には、三陽商会との提携を発表したところです。

トレンドを考慮した商品企画が実現できることで、より消費者が求める、ワクワクするような商品を全国の店舗に届けることができます。それは、アパレル企業にとって、無駄な商品を作って値引きしたり、焼却処分したりするといった経済的にも環境的にも負の部分を減らすことにも繋がります。 全国の消費者にとって、トレンドを取り入れた豊かな生活を実現するサービスであり、アパレル企業にとっては、よりビジネスの収益性を高められるサービスといえます。

世界に先駆けたスマートシティの実現を目指す

重松:2つ目の事業は、急成長しているスマートシティ事業です。街単位、モールなどの施設単位で生活者・消費者の行動分析、属性分析を行うことで、消費者にとってより良い場を作っていくことができます。実際にスマートシティを作るデベロッパー企業のみならず、モールなどの商業施設、あるいは駅、新しく開発が進む街など、多岐に渡るお客様にご利用いただけます。
1つ目のファッション事業とも関連しますが、属性分析では、よくある年齢や性別の分析に留まらず、消費者のより詳細なファッション志向をベースにしたペルソナの特定を行うこともできます。

また、三次元の動画から、人の動きの解析も実施しています。三次元空間における、人の空間認識と動きを一瞬にして解析することで、新しい施設や街における、消費者の行動や興味、あるいは何をすれば人の動きが変わるのかといったことを知ることが出来ます。

現在、中国ではアリババが同様のサービスを展開していますが、POC(Proof of Concept。概念実証)の段階を超えて、実際に社会実装するという点において、世界に先駆けたスマートシティ事業であると自負しています。

最後に3つ目の事業として、AIデジタルサイネージ広告事業を開発しています。広告市場6兆円の中で、インターネット広告と並んで急成長が期待される領域が、IoT化されたコネクテッド・サイネージ広告です。日本において数少ない急成長産業であるIoT領域での事業確立を図っています。

2019年時点で、デジタルサイネージは日本全国に約17万台あるそうですが、毎年30%の割合で増えていると言われています。この市場規模拡大によって、この5、6年の内に6000-7000億円の新しい市場が出現すると言われています。

デジタルサイネージを閲覧する消費者を解析することにより、現在、インターネット上で行われている人と広告のマッチングを、リアル空間で実現することを目指しています。そのためには、広告の新しいあり方を定義していく必要があります。
リアルな空間に存在する広告媒体とオンライン上のデータ、そしてAIの技術をいかに繋げていくかかが問われるのです。

人間洞察をベースにしたファッション、スマートシティ、デジタルサイネージ事業

シニフィアン:これらの3つの事業は、一見すると性質の異なる事業のようにも思えるのですが、どのような関連があるのでしょうか?

重松:確かにばらばらの事業に見えるかもしれませんが、これら3つの事業は視覚情報をベースにした人間に対する洞察という点で一貫しています。 他人がどういう人間なのかを判断する際、人は80%程度を外見―つまり顔や服装に依存していると言われています。つまり、1つ目の事業であるファッション解析は、人の属性を知る上で非常に有効な手段なのです。

ファッションが解析できるということは、ペルソナを解析できるという強みに直結します。これを活かして我々は2番目の事業、スマートシティ事業を展開しています。
また、そこからさらに、その空間の中にいる生活者・消費者に対してベネフィットを提供するためのデジタルサイネージ事業を派生的に開発しているのです。
このように全く異なるように見えて、一貫した強みのもと、一連の事業を展開しています。

新興国も対象とした日本発のグローバルAI企業を目指して

シニフィアン:今展開されている3つの事業に加えて、これからさらに新たな事業が加わっていくと思うのですが、それらの事業を通して、どのような社会を作っていきたいとお考えですか?

重松:我々は、人類が今までに経験したことがない社会を、現実的に作っていこうと考えています。スマートシティという言葉は、10年以上前に出てきていますが、未だに世界にはスマートシティと呼ばれる街は存在していません。

スマートシティの実現に向けて、具体的な技術、収益モデル、ビジネスを定義することによって、新しい体験のある街を現実的に作り込んでいきます。その街にいる消費者、企業、ならびにプラットフォーマー自身も収益を獲得できる、Win-Winの経済原理が成り立つようなビジネスモデルを構築し、まったく新しい街、社会の実現を目指しています。

また、日本のような先進国のみならず、一足飛びでイノベーションが起こっていくようなアジアを中心とした新興国における街作りを手がけていきたいですね。特に中国、ベトナム、東南アジア、インドネシア、タイです。そういったところにおいて、日本発のグローバルAI企業、総合AI企業として先駆けてサービスを提供することを目指しています。
その実現のために、社員の約3分の1以上は外国籍の方を採用しています。最近ではアジアのみならず、ヨーロッパから来ているメンバーも増えています。

シニフィアン:非常に大きなテーマに取り組まれていますが、実現していく上での課題を教えて下さい。

重松:現状の課題は、新しいサービスを提供して、それを消費者に体験してもらい、それを次の施策へと落とし込むというサイクルを、現時点ではまだ作れていないことです。こうしたサイクルを何度も繰り返し、実際の消費者の声を聞き、あるべきサービスを作り込んでいく必要があります。これが会社にとっての一番の課題です。

技術力やビジネスの構築力は成長していると思っています。一方で、実際に消費者の声を聞く経験が足りていません。この課題を解くためには、経験豊かな有識者の方々、あるいは、ネットワークを豊富に持った方々に、ご支援とアドバイスを頂くことが不可欠だと考えています。

今回、シニフィアンにご支援を頂くのも、その点に期待しているところもあります。新しい街を作っていくなかで、実際にどういう都市・地域で実現していくのか、どういった人を巻き込んでいくのか、みんながベネフィットを得られるような収益構造、ビジネスモデルをどのように定義するべきなのか、また、マーケティング効果の測定を、どのように行うべきなのか。今後、我々に求められる素養は多岐にわたると考えています。

こうした課題を社内のみで解くのではなく、専門家を巻き込んで、一丸となって取り組み、我々の目標を実現していく。それが今、会社の一番大きな課題だと思っています。

シニフィアン:ありがとうございます。最後に意気込みをお聞かせください。

重松:AI事業はグローバルでの競争が激化しており、日本企業が世界で先行できている状況ではありません。2020年のオリンピックや、2025年の大阪万博などを起爆剤にして、新しい発想を活用しながら、この状況を打破することに力を入れて取り組んでいきます。