【ニューラルポケット】スマホ型ドライブレコーダー「スマートくん」に見るAI社会実装の未来

「AIエンジニアリングで未来の社会を形にする」をミッションに掲げるニューラルポケット社は2019年12月5日、スマートフォン型ドライブレコーダーアプリ「スマートくん」をリリースしました。これまで主にファッション領域でAI解析技術を洗練させてきたニューラルポケット社が、なぜスマホドライブレコーダーアプリを開発したのか、同社の周COOに伺いました。

Disclaimer:ニューラルポケット社は、シニフィアン株式会社の資本業務提携先です。

周 涵 (Han Zhou)
ニューラルポケット株式会社取締役COO(最高執行責任者)。大阪大学経済学部卒業。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて、主に先端産業・ハイテク業界を中心にAIやデジタル技術活用等のプロジェクトを担当、複数の国・地域に跨って、ビジネスにおけるテクノロジー活用推進の取り組みに従事。先端的なテクノロジーをより生活に近い所に応用し、社会やライフスタイルを革新していくことを目指して、2019年よりニューラルポケットに参画。

(ライター:代麻理子 編集:正田彩佳)

すべてのスマホをAI解析機能搭載ドライブレコーダーに

シニフィアン:新たにローンチされた「スマートくん」の内容について教えてください。

周涵(ニューラルポケット株式会社取締役COO。以下、周):「スマートくん」は、世界初のAIを搭載したスマートフォン型ドライブレコーダーアプリです。「スマートくん」には、「運転録画機能」、「運転レポート機能」、「AIによるデータ活用」という3つの特徴があります。

まず、「運転録画機能」ですが、一度アプリをダウンロードして頂いた後は、一切の通信が発生せずに、運転中の外の様子を録画できます。ダウンロード時以外は通信量を使わないので、普段使っていないスマートフォンでご利用いただくことも可能です。(※iPhone8以降の端末)2019年12月段階ではiOSのみでの対応になりますが、来年にはAndroidでもお使い頂けるよう開発を進めています。

昨今話題となっている、痛ましいあおり運転事件をうけて、運転に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。調べによると6割以上のドライバーがドライブレコーダーの搭載を望んでいます。しかし、従来のドライブレコーダーは、2万円前後の本体価格の他、2〜3万円ほどの設置費用がかかるため、利用ハードルが低いとは言えません。弊社が持つAIエンジニアリング技術で、それをどうにか解消出来ないかとの思いで「スマートくん」を無料でご提供させていただくことにしました。

また、スマホアプリでは、利用者登録が必要なものも多いですが、「スマートくん」には利用者登録もログインも一切不要です。出来るだけ利用者の負担を減らせるようにと心がけて開発しています。

2つ目の特徴である「運転レポート機能」は、スマホの外向きカメラで撮影した映像を、AIが解析することで、前の車との車間距離や急ブレーキ・急発進の検知、速度測定をし、スマホ上でアラートを鳴らしたりするものです。運転のパフォーマンスに関わるものを検知して、サーバー側でではなく端末側でAI処理をするのが特徴です。 (運転レポートの生成機能は2020年始のアップデートで実装予定)

3つ目の特徴である「AIによるデータ活用」は、アプリに内蔵するAIに、GPSはもちろんのこと、交通状況、道路状態、沿道状況、天候状況、屋外の広告掲示等のデータを取得できる機能が備わっているということです。これらのデータは、個人の情報にひもづかない形で取得するので、安心してお使いいただくことができます。

シニフィアン:これまで、ファッショントレンド分析やスマートシティー構想に向けた開発など、法人向けの事業を営んできたニューラルポケット社が新たに一般消費者向けにスマホAIドライブレコーダーを提供するようになった経緯を教えてください。

周:AIによるファッション解析からスタートした弊社ですが、事業を進めている中で、サーバー側でデータ処理をするのではなく端末側で処理をする技術は、様々な用途への広がりを持たせられるのではないかと考えるようになりました。また、場所の制約から解放されることが、AIの未来として大きなポイントになると考えています。

そういったことに力を入れて開発を進めている中で、AIによるデータ処理の究極的な姿は、一人一人が持っているデバイスで行えることなのではないかという考えに至り、スマホを使ったサービスの検討を始めました。

近年、あおり運転事件や自動運転技術が話題に上ることにより、みなさんのモビリティ領域への関心が高まっています。そうした時代の潮流の中で、弊社が今まで培ってきた独自のAIエンジニアリング技術を活かせないかと思索したのがきっかけです。

端末側データ処理の展開で、AIの社会実装を加速させる

シニフィアン:今回「スマートくん」を発表され、今後一般のユーザーの方々に使っていただくわけですが、今後のプロダクトや事業の発展性として何かお考えのことがあったら教えてください。

周:最終的には街づくりや自動運転に繋げていきたいと思っています。自動車の走行中の道路・沿道の情報は、今後人口減少が進むような自治体での街づくりに役立つと考えています。具体的には、道路の舗装メンテナンスの必要度や街中を徘徊されるお年寄りの方をいち早く見つける見守り機能などです。行政においても効率化・省人化が求められる今、スマートくんで検知できる情報は今後の街づくりに大きく貢献できると考えています。

また、自動運転は革新的な技術が必要になるため、1社1社が各々単独で開発するには、あまりにも膨大なリソースが必要になります。現在、中国の百度(バイドゥ)が自動運転バスである「アポロン」の量産を試みたり、TRI(Toyota Research Institute)による自動運転実験車の研究開発が進められたりしていますが、皆でオープンにデータを集めるような開発の実現にまでは至っていません。

弊社は、自動運転の技術がレベル3や4(ドライバーの存在が必須である、条件付き自動運転、および高度自動運転)のまま停滞してしまっている理由は少なからずそこにあるのではないかと考えています。シェアリングエコノミーではないですが、個々の会社が単独で車を走らせ、100台、1000台とデータをとるのではなく、世の中の多くの人々が持っているデバイスやコンピューティングパワーを活用させてもらうといったアプローチがより良いのではないかと、私たちは考えています。

「スマートくん」は、ドライブレコーダーという便益をユーザーに無料で提供する代わりに、各人がお持ちのスマホのコンピューティングパワーを、個人情報を取得しない形で使わせていただき、将来的に自動運転に繋がるデータベースをつくることを構想しています。
具体的な動きとしましては、2019年12月4日付けで、MaaSサービスの事業創出を進めているMONETコンソーシアムに加盟をいたしました。コンソーシアム参加企業や地方自治体等連携した活動を今後加速していきたいと思います。

シニフィアン:一般の利用者の方々に、便利なアプリケーション機能を提供しつつ、社会全体でよりよい街づくりの実現や、自動運転車の開発につなげていくという取り組みなのですね。最後に、「スマートくん」の他に並行して行っている 他事業の現況を教えてもらえますか?

周:「スマートくん」に加え、ファッション事業、デジタルサイネージ広告事業共に、収益モデルが見えてきています。それぞれに異なる事業軸に見えますが、端末側のAIによるビックデータ処理・解析で、スマートシティーの実現を目指すという点は共通しています。通信ネットワークの制約を超えてAI処理の提供ができるという技術を活かし、AIの社会実装の一翼を担えるよう、今後もより一層力を入れて取り組んでいきます。