【メルカリ】社内ディスカッションと、社員への情報公開を重視 Vol.1

インターネットを通じてモノやサービスを購入するのが当たり前となったeコマース全盛時代。次に待ち受けていたのは、一般の人々が気軽に売り手にもなれるという革新的な世界でした。それを創造したのが株式会社メルカリ。もはや同社のサービスについては詳しく説明する必要がないほどに普及しています。いったいどのような組織・戦略が、同社の独創的な事業を生み出しているのでしょうか? 取締役社長兼COOの小泉文明さんに、メルカリという会社の舞台裏について詳しく話をうかがいました。

小泉文明(こいずみ ふみあき)
1980年生まれ、山梨県出身。早稲田大学商学部を卒業して大和証券SMBC(現・大和証券)に入社し、ミクシィやDeNAなどのIPO(新規株式公開)を担当。 2006年にミクシィに移籍し、社長室長や経営管理本部長を経て2008年に取締役執行役員CFOに就任。2012年に同社を退社し、スタートアップ支援を経て、13年12月にメルカリに入社。14年3月に取締役に就任し、17年4月に創業者の山田進太郎氏から社長を引き継いで現職に就く。

2013年2月設立のメルカリは、フリマアプリ「メルカリ」で日本国内のみならず米国などでも多くの人々に知られる存在となっています。また、本やCD、DVD専用フリマアプリ「メルカリ カウル」やグループ会社のメルペイを通じてペイメント事業にも進出を予定しています。2018年6月に東京証券取引所マザーズ市場に上場。証券コードは4385。

(ライター:大西洋平)

経営陣によるディスカッションの頻度がハンパない!

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):IPOした新興企業に普段インタビューする際は、まずは事業の概要についてお聞きするのですが、すでに認知度が90%台にまで達している御社の事業内容について、今さらこと細かくお聞きするのはあまり面白味のないことだと思います。そこで、今回は普段とは異なる切り口から質問させていただければと思います。

小泉文明(メルカリ取締役社長兼COO。以下、小泉):なるほど。わかりました。よろしくお願いいたします。

小林:まずは、経営陣の雰囲気からうかがいたいと思っておりまして。

小泉:おーっ、そう来ましたか。

小林:メルカリにはかなり経験豊富な人材がたくさん集まっていますが、日々においてみなさんはどのようなコラボレーションを行っているのかということを知りたいですね。各自がそれぞれの持ち場で自由に活動しているのか、それともみんなが顔をそろえて侃々諤々の議論を繰り広げているのか、どちらなのでしょうか?

小泉:どちらかと言えば、後者になるでしょうね。まず、毎週火曜日には社内の取締役4人(小泉取締役社長、山田進太郎代表取締役会長、濱田優貴取締役CPO、 John Lagerling取締役CBO兼US CEO)にメルペイ代表取締役(メルカリの取締役も兼任)の青柳直樹を加えた5人を中心としたエグゼクティブチームのミーティングを開いています。そして、毎週金曜日には日本の経営陣の集まりとして、Johnは外れる一方で執行役員数人にも加わっての経営会議があります。各自の持ち場から出てきた意見の吸い上げとそれらに関するディスカッションを週2回、1時間半程度を費やして行っています。その場で、大きな方針はだいたい決まっていきますね。他にも、国内経営陣とグローバル経営陣がそれぞれ3カ月に1、2度のペースでオフサイト(合宿会議)を開催しています。こうしてかなり密にコミュニケーションを交わしているので、経営陣の中の誰が取材に対応しても、しゃべっている内容がいつも同じだとよく指摘されますね。

小林:グループのそういった会議とは別に、メルペイはメルペイとしての経営会議も開いているわけですよね? 

小泉:メルペイ内では青柳さんを中心にディスカッションを行って自分たちの方針を打ち出し、彼がグループの会議の場で国内経営陣やグローバル経営陣に対し、「こんなアイディアが出ているんですけど、いいと思いませんか?」といった提案が行われるわけです。そして、その場において議論されて進んでいく流れですね。経営経験者が多いので、それぞれに話を投げてみるとけっこう面白い答えが返ってきますよ。

小林:あらかじめアジェンダを決めて、ディスカッションをやっているのですか? それとも、いろいろな話がワーッと錯綜しているとか?

小泉:たいていはワーッとなっちゃいますけど、オフサイトではちゃんとアジェンダを決めていますよ。

小林:3ヶ月で1-2回というのは、かなり頻繁なペースですね。

小泉:都内のホテルにおいて朝の9時から夜の8時頃まで、事業のことから組織のことまでアジェンダに沿って話し合っています。日帰りもあれば泊まりもあります。ちなみに、7月、8月はそれが毎月1本ずつありました。月の中盤に国内経営陣が1泊2日の長めのオフサイトをやって、その翌週にグローバル経営陣によるものが1日。だから、経営陣のコミュニケーションはメチャクチャ多いと思いますよ。

小林:逆に言えば、それだけ頻繁に話し合っていると、1対1の話を意識しなくても、その会で自然と意見がすり寄っていくわけですね。

小泉:僕と進太郎さんとの場合、頻繁には顔を会わせていませんが、毎週の1on1では1時間程度はみっちりと話しますね。自分のフィールドではないけれど、ちょっと進太郎さんに伝えておきたいことを僕が発信する一方、進太郎さんからは僕のフィールドに関することでちょっと伝えておきたいことが返ってきます。比較的いろいろなネタで意見交換しています。そして、「今日は特にネタがないよね」とか言いながら始めても、終わってみれば1時間近く話し込んでいたりするわけです。

Slackを通じてほとんどの情報を社内でオープンに

小林:そういった体制は、かなり初期の段階から整っていたのですか? 何かキッカケのようなものもあったのでしょうか?

小泉:初期の段階からありましたね。僕がけっこう合宿好きなもので(笑)。ミクシィに在籍していた頃も、僕を含めた3人の経営陣が週3回も定例ミーティングをやっていましたよ。トップダウンで決めたうえで、それをみんなに知らせてその先は現場に任せるという流れの中では、上の考えを1つにするということが大事ですから。

小林:箸の上げ下げに至るまで細かく決められると、下で働いている人たちは気持ちが萎えるのではないかと思うのですが、何は上が判断して、どこから先は下に任せてしまうというイメージなのでしょうか?

小泉:その事業をやるのかやらないのかとか、大枠の部分は経営陣で決めますが、それから先の「どうやって山に登るのか?」という戦略については経営陣も確認はしますが、実行含めかなりの部分を現場に任せていますね。ただ、「みんながけっこう頑張っているけど、これはちょっと無理かも?」といった状況の場合は、どれだけ現場が高い理想を追求していても、経営陣の判断として冷徹に打ち切りますね。3カ月の1度のオフサイトで大きな方針を決めて、そこから3カ月はそれに向かってみんながオーッと突っ走っていくという感じです。

小林:見事に経営と執行が分離していますね。続けるのか続けないのかという部分は、経営陣が決めるべきことで、それが社内でちゃんと認識されているから現場も納得するということでしょう。

小泉:それに、当社ではほとんどの情報がSlack(ビジネス向けチャットツール)を通じてオープンになっていて、社内の人間は誰もが目の前でどんな話が進んでいるのかがわかっています。

小林:把握する側としては、Slackのやりとりから雰囲気や温度感がわかると思います。では、上が決めたことを現場に伝えることについても、やはりSlackを通じてなのでしょうか? それとも、別のアプローチなのでしょうか?

小泉:僕たちは毎週金曜日に全体定例会を開いていますが、プレゼンテーションにだらだらと時間を費やすようなことはやっていません。経営陣が決めたことを伝える場として、何らかの大きな戦略を打ち出す際や人事政策を大きく見直す際などには、僕と進太郎さんと濱田が前に出てパネルディスカッションを全員の前で行っています。聞く側も話す側も、1対1のプレゼンテーションはけっこう疲れてしまうじゃないですか? その点、パネルディスカッションは聞く側も話す側も気が楽です。それに、その後でフリーのQ&Aでは、かなり率直な意見も出てきて刺激になります。だから、パネルディスカッションは非常にオススメです。

小林:率直と言えば、どういった内容の意見や質問が多いのでしょうか?

小泉:事業のことにしても組織のことにしても、いろいろ出てきますよ。「その事業から撤退する背景を教えてください」などと突っ込んでくるケースもありますし、「撤退することを納得できません!」という意見をぶつけられることもあります。僕たちとしても、そうやってはっきりと言ってくれたほうが「なるほどな」と思えるのでありがたいです。Q&Aもシステムで誰でも投稿出来るので、結構Qが多い日もありますし、時間の都合でその場で回答できなかったことは、Slackで事後報告するようにしています。