【ブティックス】丁寧な電話相談で介護業界のニーズを掴む Vol.1

介護業界に特化した BtoC の e コマース事業、BtoB の展示会事業、そして M& A 仲介事業などを展開するブティックス株式会社。介護保険制度の改定や、介護業界特有のニーズを踏まえ、介護事業者・サプライヤー・高齢者をマッチン グする事業を展開しています。現在のビジネスモデルにたどり着いた経緯や今後の事業構想について、新村祐三代表取締役社長にお話を伺います。

新村 祐三(しんむら ゆうぞう)
ブティックス株式会社代表取締役社長。1966 年生まれ。早稲田大学を卒業後、リード エグジビションジャパン入社。エレクトロニクス、液晶、半導体、IT、眼鏡、出版、宝飾、文具、フラワー等の各分野で、展示会開催の総責任者を歴任し、2004 年、同社取締役に就任。2006年、ブティックス株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。

2006 年創業のブティックス株式会社は、eコマース事業「けあ太朗」や、商談型展示会「CareTEX」、M&A 仲介事業「介護 M&A 支援センター」などを展開することによって、介護業界内の細やかなニーズに応える事業を広く展開している。2018 年に東京証券取引所マザーズ市場に新規上場。証券コードは9272。

(ライター:中村慎太郎)

介護用品のレンタルから e コマースへ

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):本日はよろしくお願いいたします。まずは最初に、起業されようと思われた経緯をお聞かせください。

新村 祐三(ブティックス株式会社代表取締役社長。以下、新村):ロングストーリーになりますが(笑)。妻の実家が介護用品のレンタル事業を行っておりまして、その事業に関わったのが始まりです。

同社は介護保険制度が始まってすぐに事業を開始し、当初は順調でした。しかし、5年後に最初の制度改定があり、かなり要介護度の高い方でないと保険が適用されなくなりました。それまでは介護保険で介護用品をレンタルしていた方が、急に借りられなくなってしまったのです。そのあおりで、介護保険に依存していた同社の経営が一気に悪化してしまいました。私は経営相談というかたちで相談に乗っていたのですが、このままでは経営が行き詰るのは時間の問題、という状況でした。

私自身、もともと会社を起業したい気持ちは持っていたので、色々悩んだ末に、思い切って勤めていた会社を退職し、同社を立て直すことを入り口に、事業を始めようと決意しました。39 歳の時のことです。そして、その会社を買い取り、事業に参画しました。

小林:完全にゼロからではなく、バイアウトでのスタートなのですね。

新村:そうです。ただ、かなり逆風の状況でしたので、むしろゼロからのスタート以上に大変な状況でした。事業を始めて、すぐにわかったことですが、介護保険に依存する事業は、制度改定による影響がとても大きいんですね。当時、介護保険の適用範囲が狭まったことで、レンタルしていた商品が次々に返品される状況でした。その打開のために、私自身、かなり営業に回ったんですがまったく契約が獲得できず、業績は下がる一方でした。そのような中、このまま介護保険制度に依存した事業を続けていても、たとえ一時的に持ち直したとしても、次の制度改定でまた業績が落ちてしまい、安定した経営ができないのではないか、と考えました。

一方で、それまで介護用品をレンタルされていたお年寄りの方が、介護保険の適用基準を満たさなくなったために、返さざるを得なくなり、困っている、という話をあちこちで聞くようになりました。そして、中古や新品の用品を自費で購入されている方も多いということもわかりました。それなら、介護保険でレンタルが出来なくなって困っている方々のために、介護用品を少しでも安く販売できれば、ニーズに応えられるのではないか、同時に、販売事業に軸足を移せば、これまでの介護保険に依存する状況から脱却できるのではないかと考えました。

そこで考えたのが、介護用品のインターネット通販です。介護用品をインターネットで販売すると実店舗がないぶん安く販売できます。実店舗より広がる可能性があると考え、事業に参画して半年ほどでネット通販を始めました。そのために別会社を設立し、その会社が現在の我々の母体となっています。

小林:なるほど。そう言った経緯で、最初に参入されたeコマース事業が介護分野だったのですね。

新村:はい。とはいえ、eコマースの知識も介護の知識もほとんどなく、本当にゼロからのスタートでした。始めた当初は、ほとんど商品が売れず、月の売上額が20~30万円程度で、粗利にすると数万円、という状況でした。毎月100万円近い赤字が続き、資金は日に日に目減りしていきました。

介護用品の専門店スタイルを展開

小林:事業が軌道に乗り始めるのはいつ頃でしょうか。

新村:約半年後のことです。危機的な状況が続き、どうにか突破口が開けないかと、必死の思いで自分が作った通販ショップや、競合他社のショップをまじまじと見ていると、あることに気づきました。お客様の目線で、商品を買うつもりで自分のショップを見てみると、車椅子・靴・杖・衣類・ベッド等、あまりにも多くの商品ジャンルがあるために、かえって「欲しい商品」が探しにくいショップになっていることに気づきました。しかも、例えば「車椅子」だけを探そうとすると、今度は品ぞろえが中途半端で、欲しい商品がなかなか見つからないのです。

「何でもあるけど、何にもない(商品ジャンルは幅広いが、本当に欲しいものはごく僅かしかない)」。これでは売れるはずがない、と思いました。

そこで考えたのが「これしかないけど、何でもある(商品ジャンルを単一ジャンルに絞り込み、そのかわりそのジャンルに限っては、日本一の品ぞろえにする)」、専門店(ブティック型ショップ)の展開です。

最初に着手したのは、介護靴でした。まずは介護靴の取り扱いでは日本一のショップにしようと考え、日本の介護靴メーカーのほとんどすべての商品をサイトに掲載しました。靴はサイズが合わないと不安ですから、業界でいち早く、返品無料・サイズ交換無料にしました。さらに電話接客もきめ細かく行い、ネット通販でありながら実店舗さながらの対応で、かつ価格も安価に設定しました。

(ブティックスが運営する介護靴専門通販「くつ急便」)

介護靴専門店を始めたことでガラッと状況が変わり、どんどん注文が入るようになりました。これはいけると思い、介護靴を始めた10月に続いて12月には車椅子の専門店をはじめました。そこから次々に専門店型のネット通販を立ち上げていったわけです。

小林:そうして今では24サイトを運営することになったわけですね。

新村:はい。介護靴も車椅子も日本最大級の品揃えです。たとえば介護靴では、外反母趾の方向けのものや、装具を付けている方に向いたものなど、用途毎に様々な商品を取り揃えています。選び方のポイントも、できるだけ詳しく掲載し、お客様の様々なニーズに対応しています。

小林:来客される方は「介護 靴」などの検索ワードで見つけてくることが多いのでしょうか?

新村:検索流入が非常に多いですね。あとはネット上でリスティング広告も出しているのでそちらからも入ってきます。

小林:確かに、特化型である分、より明確なニーズを持っている方の目を引きやすいというのもあるかもしれませんね。

丁寧な電話接客で市場ニーズにこたえる

新村:おっしゃる通りです。それから、専門店化したことに加えて、電話接客をきめ細かく行ったことも良かったと思います。eコマース事業を展開される会社さんは、みなさん、電話対応はやりたがらないですからね。

小林:そうですよね。コールセンター機能とeコマース運営、介護用品の仕入れなど、これまで経験されていないことに取り組まれてきたわけですが、いずれも手探りですか?

新村:はい、経験も知識もなかったですからね。当時、ネット通販は電話対応しないものだという固定概念がありましたが、ターゲットユーザーのニーズを考えるとあった方がいいわけです。当社では、介護ベッドがかなりの売り上げを占めていますが、1台の客単価は30万円ほどです。これはネット通販でカートにポンと入れて買う商品ではありません。なので、最初は電話で問い合わせがあります。

大体のお客様は、買う前に「商品を見たい」とおっしゃいますので、まずはメーカーのショールームをご案内するのですが、ショールームに行った際に、見るべきポイントをお教えするため、予め、お身体の状態などをヒアリングさせていただきます。

その結果、「お客様なら、3モーターの商品がよいですね」とか「マットレスはこういう種類がいいですね」といった感じで、1時間程度お話することもあります。そうすると、ショールームに行っても同じ説明を聞かされるだけだろうから、もう見に行かなくてもいい、ということになって、「じゃあそれをください」と買ってくださるわけです。

小林:それは新しい業態の感覚がありますね。ネットで商品を見つけるけれど、実際は電話によってクローズすると。

新村:はい。高額商品になるほど、電話での注文が多いです。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):最初のとっかかりを持つことが難しい商材だからこそ、ネットの役割が「発見」に特化しているところが面白いですね。

小林:購入者はご本人ですか、それとも親族の方ですか?

新村:だいたい高齢の親御さんを持つ40代~50代の方が多いですね。杖や靴などは70代ぐらいのご本人のこともあります。ネットは見られるけどネット決済ができないというご相談の電話もあります。

村上:そういった場合は代引きの方法などを案内されているんですか?

新村:そうです。きめ細かい電話の対応が喜ばれて支持を受けています。ご購入された方から別のお客様を紹介していただくこともあります。

村上:コールセンターの方々はアルバイトの方ですか?

新村:当初はすべて社員でした。商品知識はもちろん、ホスピタリティが重要で、困っている方のニーズをできるだけ聞いてお応えしようという精神で対応させていただいています。

村上:単なる入電対応センターではなく、営業組織というほうが近いかもしれませんね。体制的にはどれくらいの規模感ですか?

新村:数年前まで、20人くらいの社員でやっておりましたが、今は蓄積したノウハウがありますので、マニュアルを作って外部のコールセンターにお願いしています。