シニフィアンの共同代表3人が、ほろ酔い気分で放談、閑談、雑談、床屋談義の限りを尽くすシニフィ談。今回は時事ネタとして「カルビー松本晃前社長のライザップCOO就任」をテーマに取り上げ、このサプライズ人事をどう見ているのか、そして、松本前社長を口説いたライザップ瀬戸社長の魅力とは何かについて語ります。 本稿は、Voicyの放送を加筆修正したものです。
(編集:箕輪編集室 三枝窓香、篠原舞)
サプライズ人事がもたらす化学反応への期待
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):最近あった時事ネタでいうと、退任なさったカルビー株式会社(以下、カルビー)の松本前社長がRIZAPグループ株式会社(以下、ライザップ)のCOOに就任なさるというニュースですね。サプライズ人事にびっくりする事は多々ありますけれども、今年一番驚いたニュースはこれなんじゃないかなという気がします。
小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):驚きましたね。カルビーでも業績を上げられて、名経営者として名を馳せた中での退任だったので。退任のアナウンスの時も市場では驚きをもって受け止められていましたけど。皆が次の動向を注目していた中、急成長中の新興企業に行くと。まぁ、新興とはいえライザップが上場したのはかなり前なんですけどね。
朝倉:結構前ですよね、2006年。
小林:当時は社名も違いましたからね。それがライザップビジネスモデルで大きく伸びて、さらにM&Aを通して非常に多角化され、どんどん株価が上がって今や時価総額としてはカルビーとほぼ同じ規模になってるという。
朝倉:ライザップが。
小林:5,000億円くらいですかね。まぁ、今日上がって5,000億円ですね。
朝倉:なるほど。松本さんって、現時点で本をお書きになったら最も読みたい経営者ですよね。
小林:確かに。
朝倉:日経ビジネスオンラインで連載していらしたから、そのうち出版するんじゃないかと睨んでいますけど。今、一番話を聞いてみたい方ですね。だから今回のニュースには驚きました。
小林:ですよね。しかもCOOっていうポジションで、瀬戸さん(代表取締役社長 瀬戸健)と二人三脚でやられるっていうのもなかなか面白いコンビですよね。
朝倉:社長じゃないんだっていうね。
小林:そうなんですよ。瀬戸さんって、私は一度しかお会いしたことないんですけど、不思議な魅力のある方というか。非常に聞き上手で、包容力がある方で。
村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):確かに、ライザップのイメージと、瀬戸さんのイメージが必ずしもイコールじゃない感じがして面白いですね。CM含めガンガンやっていた一般的な印象と、瀬戸さんのキャラクターの印象とが違うので、それがさらに松本さんと重なったらどうなるんだっていう。そういう意味でみなさんおもろいなぁって感じているのではないかと。
小林:楽しみなコンビですね。
朝倉:ビジネスないしは金融市場のメインストリームからは、元々はあまり注目されていなかった会社じゃないですか。
小林:そうですね。
朝倉:それがみるみるうちに急成長してきたと。2006年以降に上場した会社で、上昇倍率で行くと1位か2位くらいの勢いでしょ?
村上:1位でしょ、多分。
小林:だと思います。
朝倉:だって一番低いとき数十億円くらいだったでしょ?
小林:数十億円だった。多分下の方だったと思います。
村上:アンビシャス(※)上場は2006年ですね。130倍くらい。(※札幌証券取引所が開設する新興企業向けの株式市場のこと)
朝倉:今もアンビシャスに上場しているんでしょ?
小林:そう。アンビシャスの時価総額全体の95%以上をライザップが占めてます。
朝倉:じゃあ札幌証券取引所はライザップのおかげでもっている状態ですね。
村上:松本さんに関しては当然素晴らしいご経歴ですけど、外資系で仕事をやられて、クラシックな日系でやられて、今をときめく新興企業に行かれてという、3種類の会社の経営陣をやられるのは本当に珍しい。なので、ライザップに深く入られた後に気付かれることも多いんじゃないかと思います。非常に楽しみですよね。3種類の経営経験がある方なんてほとんどいないじゃないですか。
朝倉:確かに。外資も日系も経験してらっしゃる。元々伊藤忠の子会社の社長として大活躍なさっていたんですよね?
小林:ちなみにアンビシャスが最も低迷していた時の株価は、一株単位で2.63円。これが最低のところから比べるとMax1,000倍くらいになってる。
朝倉:1,000倍かぁ。すごいなぁ。
村上:え、100倍超じゃないの?1,000倍?
小林:うん。2.63円から2,940円!でも社名も違うし、当時豆乳クッキーダイエットで上場されているんですよね。その後大胆にピボットされて今に至るわけですが、瀬戸さんの粘り強さには本当に感服しますね。どこかでお話されてましたけど、わーって一気にうまくいったものが、今度は急に下火になったときに、くるんって手のひらを返されるっていうのも経験されて。人の良い時と悪い時の扱いの差みたいなのも痛感した、とおっしゃっていたのが印象的でした。
村上:食べ物つながりでもある。どこかでその繋がりも活きてくるかも(笑)
朝倉:瀬戸さんが初めて松本さんにお会いになったのは今年だって言ってましたよね。
感受性の高さと胆力が人を魅了する
朝倉:ライザップ社長の瀬戸さんのキャラクターが、ライザップの事業から受ける印象と違うっていう話が出ましたが、僕は一度、瀬戸さんと一緒に北海道へ旅行に行ったことがあります。その時のことが強く印象に残っています。 ご自身でおっしゃっているから言っていいと思うんですけど、瀬戸さんはものすごいチャーミングな方で、なおかつちょっと抜けたところがある、愛すべきキャラなんですよね。 覚えているエピソードが、「僕はノートパソコンを失くしちゃうから、社内で唯一ノートパソコンを持たせてもらえない」という話。あと、学生時代にすき家でバイトをしていたらしいのだけど、バイト後に着替えるのを忘れて、すき家の制服のまま大学に行って、大学で気付いたと。 「どんだけ抜けてるんですかー!」っていう話をしていたら、その瞬間に、瀬戸さんがホテルの部屋の鍵を失くしていることに気づいた(笑)
一同:(笑)
朝倉:どこまでなんや!っていう。 で、そのときは経営者数人で合宿をしていて、ニワトリを自分で捌いて、命をいただくことの重みを感じるという趣旨の野外体験をやったんですよ。 僕は動物に慣れているから、割と平気でピシャッといけちゃうんだけど、瀬戸さんは感極まって、おいおい泣いてました。だけど最後は「やらなきゃいけないんだ、自分たちは日々食べているんだから」って捌いていらっしゃったのを見て、とても人間味あふれる一面を見た気がしましたね。
小林:なるほどね。感受性がすごく高い方だなぁとは、私も一度お会いした時に思いました。
朝倉:ものすごく高い方だと思います。ライザップは外部から多くの経営幹部を招聘していますが、一人ひとりを人たらし的に巻き込んでいかなきゃいけない時に、感受性の高さや親しみのあるキャラクターが効いているんじゃないかなと。 僕から見るとライザップは、かつてライブドアがやろうとしてできなかったことをやっているような会社というイメージがありますね。
小林:今回、松本さんがすごい話題になりましたけど、実は瀬戸さんは前からかなり人に対する吸引力を発揮していて。孫さんの若き右腕と称された元SoftBankの方とか、あるいはファーストリテイリングのエグゼクティブクラスの方とか。 業界で名を馳せた方や実績のある方がライザップグループにどんどん参画されてるんだけど、それは彼のキャラクターに加えて、もう一つは「普通、そのクラスの人に真正面から誘いをかける人っていないでしょ」というような人に思い切って声をかけてるっていうところが大きいんじゃないかと。
朝倉:松本さんに真正面から声をかけているんですもんね。
小林:思い切って声かける、突撃する胆力というか。
朝倉:言ってみるっていうね。
小林:共通するところでいうと、株式会社FiNCの溝口くん(代表取締役社長 溝口勇児)とかもこういうのあるかもしれないけど。
朝倉:(DeNAの)南場さんもですよね。経営者になってある程度自分がそれなりのポジションを築くと、フラれるのが怖くてなかなか言えないですよね。
小林:なかなか言えないです。
朝倉:ハッキリと口に出して口説けないから、口説かれている当人は気づいてもいない、なんてこともある。後から「あれって口説いてたの?」みたいなね。フラれることに対しての恐怖感。 失うものは何もないんだから、言ってしまえばいいのだけど、恥というか……本来恥でもなんでもないんだけど、躊躇する人は多いですよね。そういうことを感じることなく言える人は強いなっていう印象。
小林:そうだね。
村上:それを言うと、前回松本さんがジョンソン・エンド・ジョンソンに移られたときは23社から選んだっていうのを何かで見たんですけどね。多分今回もめちゃくちゃオファー来てたんじゃないかな。
小林:少なくとも数社は来てたってね。
村上:その中で慎重に選ばれる方だから、相当何かあったんじゃないかなぁっていうのと、松本さんって実は元々理系の博士課程をお持ちで、理系出身の経営者でもあられる。かつ、実はヘルスケアをやられていて、ライザップのような会社でヘルスケアもやられるってことでいくと、実はいろんなコンテンツが隠れているんじゃないかなという気がしています。とにかく慎重に選んだ結果であるはずじゃないかなと思います。
朝倉:これからますます、松本さんの入られた後のライザップに注目ですね。
朝倉 祐介
シニフィアン株式会社共同代表 兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
村上 誠典
シニフィアン株式会社共同代表 兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。
小林 賢治
シニフィアン株式会社共同代表 兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科修了(美学藝術学)。コーポレイト ディレクションを経て、2009年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、執行役員HR本部長として採用改革、人事制度改革に従事。その後、モバイルゲーム事業の急成長のさなか、同事業を管掌。ゲーム事業を後任に譲った後、経営企画本部長としてコーポレート部門全体を統括。2011年から2015年まで同社取締役を務める。 事業部門、コーポレート部門、急成長期、成熟期と、企業の様々なフェーズにおける経営課題に最前線で取り組んだ経験を有する。