INTERVIEW

【UUUM】YouTuberの悩み解決が気づけばビジネスに Vol.1

2017.10.18

今や、小中学生のなりたい職業ランキングで上位に君臨するようになった“YouTuber”。彼らがのびのび活動できるよう、日々、様々なサポートをするのが“MCN”と呼ばれる事業者です。そのMCNの中で、日本におけるパイオニアとして業界を牽引してきたのがUUUM社です。「クリエイターマネジメント事務所」「動画コンテンツ事業者」「インフルエンサーマーケティング企業」と、様々なアングルを持つ同社の可能性について、鎌田社長にお伺いしていきます。

鎌田和樹(かまだかずき)

UUUM株式会社 代表取締役/CEO 19歳で上場企業へ入社。 出店担当として社長より直々に携帯電話ショップ出店を任命されテレコムサービス株式会社にてソフトバンクショップを単月100店舗出店。 ショップ運営、アライアンスなどさまざまな経験をつむ。 2011年からはイー・モバイル一次店の代表取締役を務める。 数々の功績を残した後、孫泰蔵氏との出会いから衝撃をうけベンチャーの道へ。 その後、HIKAKINとの出会いをうけて30歳を手前に独立。

UUUM株式会社は2013年の創業以来、HIKAKINをはじめとする数多くの人気YouTuberを中心とするクリエイターをサポートしながら、様々なコンテンツを世の中に発信。YouTube上の広告収益の一部をYouTubeから受領するアドセンスと、顧客企業の商品やサービスを紹介する動画を制作・公開する広告によって収益化している。2017年8月30日にマザーズ上場。資本金6億3886万円、社員数172名(2017年9月時点)。

(ライター:石村研二)

「ユーチューバー、ヤバいかも!」と感じたHIKAKINとの再会

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):この度は上場おめでとうございます。ユーチューバー(YouTuber)のマネジメントを行う御社の事業は、日本ではまだ十分には知られていませんが、そもそもなぜこういった事業に取り組もうと考えられたのですか?

鎌田和樹(UUUM株式会社代表取締役。以下、鎌田):僕は19歳から10年くらい光通信に在籍していました。そのうちの後半は、携帯電話の販売をしていたんですが、その時にHIKAKIN(注:UUUM社に所属する、国内チャンネル総登録者数No.1のユーチューバー。同社のファウンダーでもある)に出会っているんです。会社のイベントでヒューマンビートボックスをやってもらったんですね。

光通信での仕事は順風満帆でした。順風満帆すぎてなんだかやる気がなくなってしまうくらいだったんです。そんな時に、孫泰蔵さんから「起業したら」と言われたんです。それまでは起業したいと思ったこともなかったんですが、他に取り立ててやりたいこともありませんでしたし、「起業してみてもいいかな」くらいに思って、どんな会社がいいか考えてみたんです。

そんな時にたまたまHIKAKINと再会する機会があって、何をしているのかと聞いたら「ユーチューバーやってます」と言われたんですね。当時はまだユーチューバーなんて何やってるかわからない怪しい奴らと捉えられていましたし、僕も最初は怪しいなと思いました。でも、さらに聞いてみると「シンガポールでエアロスミスのスティーブン・タイラーと共演した」と言うんですよ。それで「ユーチューバー、やばいかも」って思ったんです。

それが起業の1ヶ月前くらいのことでした。2013年の6月に起業したんですが、ユーチューバーにレビューしてもらった商品を販売する、今で言うインフルエンサーマーケティングのような事業をやるオンセールという会社を作ったんですね。佐俣アンリさん(VC・ANRIのパートナー)に出資してもらって1000万円で始めて、ジャパネットたかたみたいな会社を目指そうと思っていました。それで3ヶ月やってみたんですが、なんだかいまいち手応えを感じることができませんでした。

ただ、ユーチューバーたちと仕事をする中で、みんな色々なことに困っていることがわかったんです。企業と仕事をするようになっても、商談をどうやって進めたらいいかわからないとか、「代理店から『法人じゃないと契約できない』と言われたんだけど、法人なんてないです」とか。単純に困っている人がいたら助けたいじゃないですか。僕は光通信で総務も営業も経験してきたので、彼らをサポートすることができると思ったんです。それでアンリさんからまた調達させてもらって、その年の10月からユーチューバーのマネジメントをはじめました。

小林:その最初の段階からHIKAKAINさんとは一緒にやっていたんですか?

鎌田:そうですね。HIKAKINの最初のマネージャーは僕です。社名を決めるときも、HIKAKINが「ドットコムのドメインが取得できる社名がいい」と言っていて色々検討したんです。でもなかなか良い名前がなくて「うーむ……」って悩んでいたら、「『ウーム』でよくない?」みたいな感じで決まったんです(笑)

小林:なるほど。事業を始めてみて、初期の段階から売上は立っていたんですか?

鎌田:最初はMCN(マルチチャンネルネットワーク:複数のYouTubeチャンネルと提携し、収益化などを行うサービスプロバイダ。YouTubeによる認定資格が存在する)の権利もないし、アドセンスから売上が入ってくる仕組みもなくて、ただ楽しいからやっているといった状態でした。困っている人がいたら助けるし、僕自身も動画を見るのがとにかく好きなので、動画を作っている人に会えたら楽しいしって感じで。

小林:それがビジネスとして軌道乗り始めたのはいつごろなんですか?

鎌田:ビジネスという意味では創業の時にMCNの契約をさせてもらいました。その頃はちょうどHIKAKINがテレビCM に出たりしてユーチューバーがフィーチャーされてきた頃だったので、タイミングも良かったんだと思います。2014年の2月と3月に単月黒字になって、お金をちゃんと生み出すことができることは確認できました。そこから軌道に乗ったのは、ちょうどその時期にジャフコさん(日本最大のベンチャーキャピタルの一つ)との出会いがあって、その年の4月に5億円を調達できたのが大きかったですね。

「ユーチューバーをやるならとりあえずUUUM!」

小林:最近では人気のユーチューバーも多くなってきましたが、上位のユーチューバーたちの多くが御社を選んでいるように見受けます。ユーチューバーとの利益の配分も含めて、ユーチューバーがUUUMに所属する動機はどのようなものなんですか?

「成長性に関する説明資料」より

鎌田:配分に関しては、海外のMCNだとアドセンスからの収益の内、30~40%を会社が取るし、一般の芸能事務所なんかは売上の50%を取ると言われていますが、僕らは20%に設定しています。そもそもユーチューバーたちから見れば、MCNは「何もしてくれないのにお金を取っていく」存在だったんですね。「MCNはユーチューバーから搾取している」と否定的に捉えられていたんです。実際、なろうと思えば誰でもユーチューバーになれるし、自分で動画を作っているわけですから、事務所が出演交渉をしてテレビ局が作る番組に出演するテレビのタレントとはパワーバランスが違うはずですよね。つまり、僕らはユーチューバーが動画を作ることに依存している部分もあるわけで、彼らには敬意を払わないといけない。そういうことを色々と考えて、この配分に落ち着いたんです。

僕らはとにかくユーチューバーが困っていることを聞き続けて彼らに提供するサービスを磨き上げているので、ユーチューバーのことを一番理解しているという自負があります。何か困ったことがあれば彼らの家に行くのは当たり前ですし、風邪を引いたら経口補水液や風邪薬を送ったりもします。制度的な面でも、例えば保険会社と掛け合って保険を作りましたしね。ユーチューバーの仕事はプライベートとの境界が曖昧で、動画撮影中に怪我したとしてもそれを賄える保険がなかったんですよ。だからそういう保険を作ろうと。とにかくそういうことを1つ1つ、ユーチューバーのためだけを考えてやってきたんです。

UUUM社のクリエイターサポートのメニュー(同社Webサイトより)

そうした地道な活動を続けることで、結果的にUUUMがユーチューバーの中でブランドになって、「芸人になるなら吉本興業」といった感じで「ユーチューバーをやるならとりあえずUUUM」と言われるようになれたんだと思います。

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