INTERVIEW

【SOU】ブランド品を買い取り、古物商に販売するオークション事業 Vol.1

2018.11.16

ブランド品の買取に特化したウェブマーケティング、リアル店舗による買取事業、自社開催のBtoBオークションなどを展開する株式会社SOU。ブランド品のリユースという考え方を浸透させ、ブランド品の売買に新たな価値を与える事業を展開しています。現在のビジネスモデルにたどり着いた経緯や今後の事業構想について、嵜本晋輔代表取締役社長にお話を伺います。

嵜本晋輔(さきもと しんすけ)

株式会社SOU代表取締役社長。1982年生まれ。関西大学第一高校を卒業後、Jリーグクラブ「ガンバ大阪」へと入団し、同時に関西大学へと進学。選手引退後、2007年ブランド買取専門店「なんぼや」をオープン。2011年、株式会社SOUを設立し、同社取締役社長に就任。

2011年創業の株式会社SOUは、ブランド買取専門店「なんぼや」、予約もできる買取専門店「BRAND CONCIER(ブランドコンシェル)」、BtoBオークション事業「STAR BUYERS AUCTION」、BtoC販売事業「BRAND RESALE SHOW ZIPANG」、「ALLU」、そして資産管理アプリ「miney」を展開し、ブランド品のリセールにおける細やかなニーズに応じる事業を広く展開している。2018 年に東京証券取引所マザーズ市場に新規上場。証券コードは9270。

(ライター:中村慎太郎)

プロサッカー選手からブランド品買取事業の経営者へ

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):本日はよろしくお願いします。まずは、事業内容と創業の経緯を教えてください。

嵜本晋輔(株式会社SOU代表取締役社長。以下、嵜本):はい。高校卒業後、Jリーグクラブのガンバ大阪に入団して、プロとして3年間プレイしました。しかし、戦力外通告を受けて退団することになりました。

翌年、佐川急便に入社し、佐川急便大阪SCというチームで、午前中に仕事、午後からサッカーという生活を1年しました。その後、21歳でサッカー界から引退しました。

朝倉:21歳でサッカー選手からビジネスの世界に転身なさったんですね。

嵜本:そうですね。引退後は、父親が大阪で経営していたリサイクルショップを、2人の兄と一緒に継ぐことになりました。当時扱っていたものは電化製品、家具、オフィス用品、中古用品です。いわゆる街のリサイクルショップですね。

当時は大きくて単価の低いものを扱っていましたが、技術の進歩と共に利ざやを取りにくい商材になってきました。そこで、今後の事業の柱になる新たな商材は何があるだろうと考えた結果、ラグジュアリーブランドがある意味でブルーオーシャンであることに気づきました。そういった経緯で、ブランド品の買取専門店を大阪で2007年にオープンしました。

MKSコーポレーションという会社で買取専門店「なんぼや」をオープンし、2009〜2011年に新たに洋菓子、スイーツを作る部門も始めました。その事業が少しずつ成長しはじめ、兄2人が洋菓子に、私はリユースのほうにと分社化することになり、2011年12月に株式会社SOUを設立します。それから今期で8期目に入りました。

朝倉:お兄様達のスイーツ事業も伸びているみたいですね。

嵜本:そうですね。チーズタルト専門店PABLO(パブロ)は全国で55店舗、世界で約20店舗あります。年商は、40〜50億くらいあります。兄貴たちも頑張っています。

朝倉:世界展開もされているんですね。それでは、SOUのビジネスモデルについて教えてください。

自社開催のBtoBオークションで人材を育成する

嵜本:もともとMKSコーポレーションでスタートしたブランドの買取事業をそのままSOUに移管する形で始まりました。基本的にラグジュアリーブランドの買取販売をメインに展開しています。

まず、リスティング広告などを用いて、一般のお客様をウェブ上で集客します。そして、リアル店舗に送客し、コンシェルジュがブランド品を鑑定して買取します。

買取した商品が2、3日でオフィスに届き、検品し、メンテナンスした後、BtoBの自社オークションで商品を売却します。これが現在の我々のビジネスモデルです。

(SOU『2018年8月期決算説明会資料』より)

朝倉:なるほど。BtoBのオークションですね。創業当初は消費者に直接販売していたんですか?

嵜本:はい。当初は他社の運営するオークションサイトで売っていましたが、非効率だと感じたこともあり、他社が開催するBtoBオークションで商品を売却し、そこで得られた資金で新たな店舗増資につなげていくということを続けていました。

朝倉:そういったBtoBのオークションはいろんなところで開催されているのですか?

嵜本:はい、全国的に開催されています。

朝倉:もともと御社は一出品者として他社が主催するオークションに参加されるところから始まったわけですね。

嵜本:そうです。ただ、一つ問題がありました。このビジネスでは、買取の際、過去の相場を参考にしており、コンシェルジュとしてはその相場以下で買い取れれば、元を取れることが多いのです。その結果、コンシェルジュは自身の仕事は買取が全てだと錯覚してしまいます。

しかし、これではメンバーの成長が止まってしまいます。本当は、彼らにも、いくらで売れたかまで興味を持ってほしい。そう考えて、2013年4月に自社オークションを立ち上げました。目の前で仕入れた商品が売れていく場を作れば、モチベーションが高まり、メンバーが成長していくんじゃないかと考えたんです。

朝倉:なるほど。人の育成という課題感からBtoBオークションを構想したわけですね。それまでの事業展開から考えると、オークションへの進出はけっこう大きなジャンプに見えます。

嵜本:そうですね、成功する保証がないなかでしたが、自社のリアル店舗で買った商品を、商品管理センター兼オークションルームに集約し、他社にBtoBで販売するようになりました。スタート時は2億4000万ほどだった出来高が、今では4日間で約15億円です。

我々は消費者向けに買取専門店を展開していますが、このビジネスは、店舗数が増えるほど仕入れが増えます。そして、仕入れが増えるほど、オークションでの出来高も増えるので、買取店舗が増える度に成長している感じですね。

朝倉:年間のオークション開催日数や取扱高はどうなっていますか?

嵜本:前期でいうと、国内については、毎月4回の定例開催で48日です。海外では3ヶ月に1回なので、4回です。なので、合計すると52日ですね。2018年8月期では国内・海外合わせて約200億の出来高となっています。

(SOU社が主催するオークションの様子)

朝倉:出品商品はすべて自社で買い付けたものですか?

嵜本:はい。99%自社で買い付けたものです。

朝倉:なるほど。基本的には自分たちで買い付けたものを売っていくというモデルなわけですね。

嵜本:はい。こういった形態は、我々以前にこの業界にはありませんでした。従来の古物商は、一般消費者から買い取ったものを、一般消費者に売るのがほとんどです。

私たちはCtoBtoBで、事業者に商品を売り、売れ残った一部を一般消費者向けに販売しています。鮮度の高い状態で、古物商を営む事業者に対してオークション販売しているのです。ここが他社とは違う私たちの特徴ですね。今のところ、総売上の約95%がBtoBで、残りの5%ほどがBtoCによるものでした。

競合他社がオークションに参加する理由

朝倉:2013年に、自社オークションを始めたことでビジネスモデルが固まり、今に至るというわけですが、オークションに参加される小売業者はある意味ライバルでもあるわけですよね。

嵜本:買取の競合ですね。

朝倉:なのに、御社のプラットフォームサービスに乗っかるわけですよね。競合他社からすると、SOUはどのような存在なのでしょうか?

嵜本:一般消費者から魅力的なブランド品を買うという意味では競合です。ただ同時に、他社から見れば、我々も魅力的な商品を仕入れるための取引先でもあるという関係です。

(SOU『成長可能性に関する説明資料』より)

例えば、私たちの競合である大手業者 さんも、オークションに参加して数千万円分の商品を買っていかれることもあります。他社からしても、自分たちで仕入れることができればうちに来る必要はありません。しかし、我々は買取に強みがあるので、他社が仕入れられない魅力的な商品を持っており、SOUから仕入れざるを得ないのです。

朝倉:他社から見れば、御社が存在することで、中間マージンが増えているという見え方もあるわけですよね。消費者から直接買い取ることができれば利幅が大きいはずですが、他社ができなくて、御社だからできるという理由はどこにあるのでしょうか?

嵜本:買取の量は、我々が日本でトップクラスと思っています。ウェブマーケティングからリアル店舗への送客を、創業時から徹底的に磨いてきているため、また全国に63店舗、買取専門店を展開しているため、競合他社よりも集客力が強いのです。また、仕入れ量に加え、買い取る商品の質も高いと自負しております。

競合他社からすれば、自分たちが買い取れないものを、我々が買い取っているため、商品のラインナップを整えるために、SOUから買っている状態ですね。

朝倉:なるほど。集客力が強みなのですね。それを他の事業者が追随できない理由はあるのでしょうか?例えば、ウェブマーケティングだって、専門のチームを組めばできると思うのですが。

嵜本:他社のことなので想像も含みますが、古物商の多くは同じ店舗で買取も販売もしているので、リソースが分散してしまいます。

私たちは創業時から買取に特化しているため専門性が高く、改善の頻度も圧倒的に高いのです。店舗内装のクオリティ、コンシェルジュの接客クオリティなども、他社を圧倒するレベル感でお客様に提供できるように心がけています。

買取店を利用いただくお客様に納得いただきながらも、より高い粗利でより良い商品を買取できているところが、できそうでできないノウハウです。決定的にこれだというものは無いのですが、地道な努力を積み重ねた結果、集客の仕組み、リアル店舗への送客の仕組みが整っているため他社には真似できない水準に達しています。そこが差別化のポイントだと思っています。

朝倉:今のビジネスモデルでいちばん重要な機能は、どれだけ買い取りができるか、ということになりますか?

嵜本:そうですね。最重要ですね。一般消費者からの仕入れを制すればこの業界を制することができるくらいのインパクトがあります。後はオークションに流せば、ほぼすべて、利益を確定して販売することができます。我々と同じビジネスモデルを構築しようという方もいますが、現在ではCPA(顧客獲得単価)も高くなっているため、単純に大きな資本が参入してウェブマーケティングに注力したとしても、リアル店舗がなければ高額商品は買い取れません。そのあたりは他の企業が真似しても追いつけないところなのかなと思います。