INTERVIEW

【シルバーライフ】競争原理を通してより強力なチェーンを築く Vol.3

2017.12.13

高齢者向け配食ビジネスを展開するシルバーライフの清水社長に同社の可能性を伺うインタビュー(全3回)の第3回。前回の記事はこちらです。

(ライター:石村研二)

加盟店同士が切磋琢磨することで事業はさらに成長する

朝倉祐介(シニフィアン共同代表):『成長可能性に関する説明資料』の中でシルバーライフの特徴として、チェーン店内の競争戦略という部分がありますが、この競争政策もシェアを獲得することにつながっているということでしょうか?

シルバーライフ「成長性に関する説明資料」より

清水貴久(シルバーライフ代表取締役社長。以下、清水):我々のチェーンではどのお店も配達エリアは自由に拡張できます。加盟していただく時点で、他のお店が来るかもしれないということに納得できる人だけ加盟してくださいと説明しています。シルバーライフ同士で競争が起きることで、他社との競争においても我々の店舗のほうが生存確率は高くなると考えているからです。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):競争原理が働くことで、売上が上がっていない店舗が自然と抜けていくということも狙っているんですか。

清水:そうですね、意図的にそうしています。営業系の業界でもあるので、オーナーさん個人の積極性のあるなしがその店の売上に関わってきます。腕次第でどこまでも伸ばせる状況なので、それに魅力を感じる人は有力な店舗になってどんどん伸びていって欲しいですね。私自身が店長だったときには「あのエリアを俺にやらせてくれればもっと売上あげられるのにな」と思っていましたから。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):最終的にすごく有望なフランチャイズが出てきてもいいとお考えですか?

清水:オーナーさん同士が切磋琢磨していってチェーン全体を盛り上げていって欲しいですね。

積極的な設備投資でスケールメリットを追求する

小林:工場に投資しようとされた時点ではそこまで店舗数は多くはなく、リスクがあるタイミングだったと思うんですが、それでも踏み切られたのはなぜだったんですか?

清水:そこでアクセルを踏まないと大手に参入されてしまうと思ったからです。今も頑張ってアクセルを踏んでいるつもりなんですが、それでも不十分で焦っています。本当は3年前にこういう状況を作っておきたかった。

村上:上場されたのも、資金力を高めて成長のスピードを上げるためですか?

清水:そうですね。主に設備投資です。事業を大きくするためには設備を良くしていいものを安く出せるようにしなければならない。そのためには資金が必要だから上場しようと考えたんです。

村上:高齢者の方々の情報をある程度押さえられていると思うんですが、そこからビジネスを拡大していくプランはお持ちですか?

清水:いくつか考えてはいますが、お客様の情報を使って別の商品に展開していくというのは構想段階で、まだうまくいっていません。先に述べたとおり、将来の支出が見えない中で、お金を使うことに保守的な方々も多いと考えるので。先々で考えられるのは、おそらく一番は薬でしょうね。いまはまだ規制が強いんですが、それがある程度緩和されれば、食事の後には必ず薬を飲むなど、配食と薬は相性が良いので、横展開の可能性はあると思っています。

別の成長戦略として、我々の機能の一部を他社に開放するということは考えています。例えば我々の配送網に他社の商品を乗せる。薬でもいいですし、他社のお弁当を配ってもいいと思っています。または、我々の製造網を開放して、他社向けの商品を作ることもできると思います。

小林:新規参入をある程度歓迎するスタイルを取るのは、製造の開放であればスケーラビリティが上がってスケールメリットをより享受できるからだと理解できるんですが、競合する同業他社にまで配送網を開放する狙いはどこにあるんでしょうか?

清水:より多く、お客様の情報が得られるからですね。もしあるお客様が、今注文している他社のお弁当をやめたとしたら、そのスイッチの瞬間を捉えて我々のお弁当を勧めることもできますし、お客様のニーズを知ることができますから。伸びるマーケットなので、目先の利益よりもとにかく設備投資した方がいいという考えなんです。投資家には「それはあまり言わないほうがいい」って言われましたけど。(笑)

小林:いや、ちゃんとした投資家が聞くとむしろ魅力的なんじゃないでしょうかね。

村上:より長期に投資してくれる機関投資家だったら、むしろもっと打てと言うかもしれない。

清水:ただ、まだこういう業種があることすら気づかれていない状況なので、まずは知名度を上げて、こういう業界があるんですよということを知ってもらうことからですね。上場に至るまで、どこのベンチャーキャピタルからも何の声掛けもなかったんですよ。誰からも何からも来なかったんです。我々のビジネスはみなさんが知らないうちにすごく必要とされていて、地下水のように広がっていたんですよっていうことを知ってもらいたいですね。

村上:上場において、キャピタルを獲得すること以外に知名度を上げることも大事だったということですね。

小林:生産について、現状で6割が委託と書かれていたと思うんですが、その部分も内製化する計画なのでしょうか?

清水:内製化比率は高めていきたいとは思っていますが、生産量も増やしていくので、提携先を解除するということにはなりません。むしろ、内製も委託も両方増やす中で比率としては内製を増やしていくというイメージです。

小林:製造能力も配送能力も御社のエコシステムに乗ったほうが得だよという状態を作ることで、逆に敵になるより広い意味で味方になっているというイメージなんですね。

清水:そうなりたいと思っています。

小林:高齢者にとって必ず必要だが介護保険依存ではないゾーン、という意味で、「食」というのが際立ったゾーンであることがわかりました。本日はありがとうございました。

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