INTERVIEW

【シルバーライフ】高齢化社会の課題を解決する成長ビジネス Vol.1

2017.12.11

急速な高齢化の進展が指摘されて久しい日本社会ですが、2000年時点では2200万人だった高齢者人口は、2017年時点では3514万人に達しています。それに伴って増加する社会保障費用の問題など、日本は高齢化社会における課題先進国であると言えます。こうした高齢化社会に発生する課題を食の観点で解決しようとしているのが、2017年10月に新規上場した株式会社シルバーライフです。「(自分たちの)業種があることすら気づかれていない」とおっしゃる清水社長に、高齢者向け配食ビジネスの意義と可能性について伺います。

清水貴久(しみず たかひさ)

平成10年4月 警視庁入庁 平成11年9月 株式会社ベンチャーリンク入社 平成14年2月 有限会社マーケット・イン設立代表取締役 平成21年9月 株式会社シルバーライフ入社 FC開発部長 平成24年9月 株式会社シルバーライフ代表取締役社長

2007年創業の株式会社シルバーライフは、①高齢者向け配食サービス「まごころ弁当」「配食のふれ愛」のフランチャイズ本部の運営と加盟店への食材販売、②高齢者施設等への食材販売「まごころ食材サービス」の展開、③相手先ブランドによる冷凍弁当のOEM販売 の3つを事業の柱とする食材製造販売会社。高齢者向け配食サービスでは、2ブランド合計店舗数563店舗(2017年7月末)と業界第一位。2017年10月にマザーズに新規上場。2017年度業績は売上52億円、経常利益5億円。証券コードは9262。

(ライター:石村研二)

高齢化社会を支える、30年成長し続けるビジネス

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):まずは、シルバーライフの事業について教えて下さい。

清水貴久(シルバーライフ代表取締役社長。以下、清水):高齢者向けの配食サービスです。体や心が衰えてきて自分たちだけでは食事の準備が辛くなってきた方々に、毎日のお食事をお届けするサービスですね。2007年に世田谷区で開業し、フランチャイズ方式で増やしてきまして、現在は550以上の店舗を展開していて、店舗数では業界一です。

ビジネスモデルとしては、原材料を仕入れて、それを自社工場や提携先の工場で調理し、冷蔵の食材パックにして全国の加盟店向けに送ります。加盟店は、そこでお弁当箱に盛り付けをして、周辺のお客様に配送します。ルートを決めてルート通りに毎日配達していく、いわゆる新聞配達方式です。別の展開として、配送ルートを活かして全国の老人ホームや障がい者施設に食材パックの状態での販売も行っています。1パックから送料無料にしているのですが、今は人手不足でどこの施設も手作り調理ができなくなっているので需要はあります。さらにもう一つのビジネスは、OEMで他社向けに我々が作る冷凍弁当を提供しているものですね。

業績としては、売り上げは毎年同じような割合で継続的に伸びています。将来予想についても、今後20年30年と伸び続ける市場だと考えています。

シルバーライフ「成長性に関する説明資料」より

小林:主にどのような方々がサービスを利用されているんですか?

清水:高齢者の方が我々のサービスにたどり着くまでには3つの段階があります。まず、誰しも毎日の食事は自分でなんとかしたいと思いますよね。自分たちで好きなところに食べに行きたい、好きなところに買い物に行って料理したい。これができるのが第1段階です。それが難しくなってきたら、第2段階では大体の場合、家族に頼ることを考えます。しかし、この場合の家族というのは主に独立した子どもたちで、それぞれ生活があるのでほとんど助けにならないんです。せいぜい、週末に交代で様子を見に来てくれるくらい。そもそもお子さんがいらっしゃらない方もいらっしゃいますし。

そういった背景で、第2段階は難しいということになると、次の第3段階では、国などの公的機関に頼れないかと考えます。この場合、主に介護保険制度を使うことになるわけですが、これで全てを賄うことはできません。そこで、我々が選択肢として出てくるんです。

例えば、週2回、火曜日と木曜日はヘルパーさんが来て、土日は息子さんが来るから、月・水・金の穴を配食サービスで埋めようとなるわけです。

小林:そういった方々は御社のサービスに出会う前はどのような生活スタイルだったんでしょう?

清水:高齢者向け配食サービスの業界ができたのは15年くらい前ですが、その頃からシルバーライフと同様の事業者は存在していました。ただ、自力で食事の準備をできないといった方がほとんどいらっしゃらなかった。高齢者人口の増加に伴って必要になってきたビジネスなんです。

高齢者人口は、2000年時点では2200万人でしたが、2017年時点では3514万人です。その間人口は殆ど変わっていませんから高齢者の割合が急速に増えているんです。社会保障の費用を見ても、1990年前後では約47兆円程度でしたが、今では約120兆円に増えています。そのうち半分が年金です。このまま同じレベルの社会保障を維持したとしたら2030年代には170兆円必要になると言われています。働ける世代が減少していくのにこれは不可能な数字と言わざるを得ません。だから国は社会保障を減らしていかざるを得ない。そうすると、売上の大部分を介護保険に頼っているようなビジネスはこの先10年15年で立ち行かなくなると思います。

すでに介護保険ではカバーできない部分が出てきていて、そこで我々のような介護保険制度がなくても実費だけで成り立つシルバービジネスが最後の選択肢として出てくるという状況なんです。

シルバーライフ「成長性に関する説明資料」より

加盟店を活用したスケールするビジネスモデル

小林:加盟店を経営されている方々については、もともと地域で配食サービスをされていた方が多いんですか?それともぜんぜん違う事業から移られた方が多いのでしょうか?

清水:ほとんどがぜんぜん違う畑の方々ですね、主に30代から50代の脱サラの方々です。

小林:加盟店は御社が開拓し、指導されているんですか?セミナーのような形で?

清水:そのとおりです。私は実は、この業界を作った「宅配クック123」というチェーンの加盟店を15年前にはじめて、オーナー店長として売上ナンバー1とナンバー2の店舗を持っていました。業界自体ができたのが15年くらい前なので、正直言って私以上にこの業界で店舗での販売実績を作った人はいないと思っています。だから、店舗の経営のことだったらわからないことはないと言えますので、「全てお教えします」といって加盟店さんにお話をさせていただいています。

小林:加盟店側で行うオペレーションとしては、基本的に発注、盛り付け、配送だけですか?注文数の変更なども簡単にできるんですか?

清水:そうですね。店舗調理を行わないのは、食中毒防止も兼ねています。手作り調理というのは個人に資する部分が多いのでリスクが高いんです。衛生的に管理された工場で、食材を調理し菌検査も行い、リスク低減をはかった食材でないとお客様に安心・安全は提供できないのです。また、食数の増減に関しては柔軟に対応できますが、この業界では、顧客はずっと同じパターンで注文してくるので、加盟店さんから見れば発注の時点で将来のその日に何食売れるかがほぼわかっているんです。だからその部分は特に難しい事はありません。

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