INTERVIEW

【SHIFT】ソフトウェアのテストに特化したプロ集団 Vol.1

2018.03.30

IoT化が進む今、PCや携帯情報端末、金融機関のATMはもちろん、家電や自動車、ドローンなどにもソフトウェアが組み込まれています。しかし、人間が記述したプログラミングに欠陥があれば、ソフトウェアが正常に作動しない恐れが出てきます。今後、自動車の自動運転が実用化されれば、ソフトの誤動作は人命に関わる重大事に発展する可能性もあります。2014年11月に上場したSHIFTは、そういったリスクを回避すべく、様々なソフトのテストを専門に手掛けることで急成長を遂げている企業です。同社の概要や強みや今後の展望などについて、丹下大代表取締役社長に話を伺いました。

丹下大(たんげ まさる)

2000年に京都大学大学院学研究科機械物理工学修了後、インクス(現 SOLIZE)に入社。わずか3名で発足した同社のコンサルティング部門を5年間で50億円の売上を稼ぎ出す140名体制の部隊に成長させる。コンサルティング部門のマネージャーを経て、2005年9月にSHIFTを設立し、代表取締役に就任。

2005年9月設立のSHIFTは、ソフトウェア開発の最終工程において不可欠なテスト(正常に動作するかどうかの確認作業)を専門に請け負っている。そして、開発当初から不具合を未然に防ぐための措置を講じるコンサルティングにも注力し、テストや品質保証のための体制構築支援、自動テストのためのスクリプト 作成業務などを提供。2017年8月期は人材採用コストが影響して前期比で減益となったものの、その一方で大幅増収を遂げており、ビジネスは順調に拡大中。2017年8月期の売上高81億7400万円、営業利益3億9100万円。証券コードは3697。

(ライター:大西洋平)

最終工程のテストのみならず、コンサルティングも展開

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):まずは、御社のビジネスの概要についてご説明願います。

丹下大(SHIFT代表取締役社長。以下、丹下):当社が手掛けているのはソフトウェアのテストで、このビジネスに特化してから8年程度になります。銀行や証券会社などの基幹システムや、 ERP(企業資源計画)、会計システム、ECサイト、モバイルアプリ、ソーシャルゲームなどがテストの対象です。

小林:ソフトウェアのテストとはどういったものなのか、専門外の人にもわかるように教えていただけますか?

丹下:完成後にソフトが正しく動作するかどうかのチェックを行うというのがその1つです。もっとも、それはあくまで対処法にすぎません。こうしたテストはソフトの開発工程の中で最も下流に位置するため、瀬戸際で不具合を発見できるものの、上流の工程で発生するバグ(プログラム上の欠陥)を未然に防ぐことにはつながらないのです。そこで、力を入れているのがコンサルティングサービスです。不具合が出ないような仕様書作りなど、これまでのテストで培ってきた知見やデータを元に、上流の工程からソフト開発に携わっています。ソフトの開発はV字モデルと呼ばれる手順に沿って進められていきますが、僕たちはその全行程における品質に関わっているわけです。

小林:テストには、やはり開発とは異なるスキルやノウハウが求められるのでしょうか?

丹下:そうですね。しらみつぶしに検証を重ねていくだけでは、コストばかりがかさんでしまいます。当社ではこれまでに培ってきた知識やノウハウに基づいて、不具合が起きがちな箇所を狙い撃ちするという効果的なテストを実施しています。

また、当社が求めるレベルの技術を有するエンジニアを抽出するために、テストに関する検定試験を実施しております。年間5000名が受験して合格率が6%程度にすぎないという難関試験なのですが、これを突破した人が当社のテストに携わっています。

小林:知識やノウハウの蓄積がより効率的なテストを実現していくわけですね。

丹下:そうですね。当社のエンジニアたちは、1人当たりの生産性が極めて高いことも大きな特徴です。実績が自動計算されて収入が積み上がっていく出来高制を採用しており、仕事に対するモチベーションも非常に高いです。私がこうして生産性にこだわっているのは、前職であるインクス(現 SOLIZE)での経験も大きく影響していると思います。

小林:実は、インクスが経営破綻した経緯から(※2009年に同社は民事再生適用を申請)、採用でインクスのOBの方とたくさんお会いしたのですが、非常に優秀な人材がそろっているという印象が強かったですね。

丹下:社長がかなりの予算を投じて、優秀な人材の獲得に力を入れていたからですよ。インクスは携帯電話などの部品に用いる精密金型を3次元CADで高速生産して業績を伸ばし、僕が辞める頃には、当初約60名だった社員の数が1700人程度まで増えていました。新卒で入社した僕が関わることになったのは、コンサルティング部門の立ち上げです。まだ会社全体の売上が20億円程度であった時期に、当時の日本を代表する大企業からいきなり15億円を超える大型案件を受注し、まるで最新兵器を相手に竹槍で戦うような状況でした。正面から挑んでも討ち死にするのは必至だったことから、あれこれ考えた末に僕が開発したのがプロセステクノロジーというものです。

小林:それは、いったいどのような技術なのでしょうか?

丹下:2カ月間にわたる金型の製作行程を自動的に計算するというものです。この技術を開発して特許を取得した結果、大型受注を続々と獲得できるようになり、コンサルティング部門だけで会社全体の年間売上の3割以上を稼ぎ出しました。

小林:それによって、わずか3人で立ち上げたコンサルティング部門が140人体制にまで拡大していったわけですね。

丹下:その頃にはコンサルティング部門のマネージャーを務めるようになっていたのですが、慢心気味の社内のムードとは裏腹に、僕は危うさを感じていました。コンサルティングというものは、水もののビジネスだからです。だから、「このままじゃ、きっと会社がつぶれてしまいますよ」と社長に忠告しました。案の定、2008年9月のリーマンショックを機にコンサルティング部門の売上は急激に落ち込んでしまい、その翌年には民事再生法を申請するはめになってしまったのです。

小林:丹下さんが会社を辞められたのはその前ですか?

丹下:ええ。僕は2005年にインクスを辞めて、その年の9月にSHIFTを設立しています。もともと僕は、小学校6年生のときに自分で会社を作ることを母親と約束していましたし、とりあえず30歳になったら実行しようと考えていましたから。

既存のテストはコストがかさみ、携わる人も後ろ向き

小林:ソフトのテストという領域を会社の事業にすることになったのは、どのような経緯からなのでしょうか?

丹下:インクスのことが教訓となったので、製造業だけには手を出すまいと思っていましたが、特に何をやろうと決めてから会社を興したわけではありません。当初は業務改善のコンサルティングから始めて、幾度か失敗を繰り返してきました。すると、2007年に大手IT企業でシステム開発の責任者を務めていた前職の先輩から、「丹下くん、ソフトのテストに高いコストがかかって生産性が悪いので、どうにかしてくれないかな?」と相談を持ちかけられたのです。

小林:どうして生産性が悪かったのでしょうか?

丹下:3社にテストを外注し、相当な額の予算を投じていました。本来、テストは特定の時期に集中して行われる作業なのに、3社から派遣されてきたスタッフたちは年がら年中雇われていたわけですから、いたずらにお金がかかっていたわけです。しかも、発注先の選定はコンペではなく、3社の持ち回りで、価格競争が働いていない状況でした。

小林:その有り様では、お金がかかりすぎるのは当然でしょうね。

丹下:コンサルティングを進めていくうちに、僕はテストの世界には方法論が存在していないということに気づきました。やはり、開発者にとってはプログラミングがやりたいというのが主たる思いであって、テストのほうはどうしてもおざなりになりがち。夢中になって開発に取り組んだ後、最後にテストを徹夜してどうにかこなせば、また新たなプロジェクトに着手できるのだという苦行のような感覚なのです。だから、誰もこの領域にテクノロジーを持ち込んだり、優秀な人材を投入したりしません。それゆえ、非常にチャンスが潜んでいるブルーオーシャンだと僕の目には映ったわけです。

小林:誰も手をつけていないからこそ、改善を図る余地がたくさんあるということですね。

丹下:僕が関わるようになってから、テストにかけていた予算は翌年に30%近く抑えられ、さらにその翌年には当初の85%を超えるコストカットを実現しました。こうして手応えをつかんだことから、2010年以降はそのIT企業以外でもテストの業務を受注するようになった次第です。

小林:なるほど。紆余曲折を経て、ソフトのテストというブルーオーシャンを発見したわけですね。

丹下:本当に、それまでは失敗ばかりでしたよ。2006年に携帯電話のナンバーポータビリティがスタートした際には、「位置情報を活用したビジネスが絶対に当たる!」と確信していました。そして、そのサービスのローンチまでこぎ着けたところで、2週間後にDeNAからモバゲーが出て、その瞬間に完敗したと悟りました(笑)。