INTERVIEW

【RPAホールディングス】生産性を圧倒的に高めるロボットで日本社会に革命を Vol.2

2018.05.19

工場におけるFA(ファクトリーオートメーション)のように、これまでホワイトカラーと呼ばれる労働者が手作業でこなしてきた業務をロボット(ソフトウェアロボット)が代行するのがRPA(Robotic Process Automation)。このRPA事業を推進することで生産性を飛躍的に高め、労働人口の減少が進む日本社会に貢献しようとしているのがRPAホールディングスです。同社の高橋知道代表取締役にこのビジネスに辿り着いた経緯や今後の展開などについて伺ったインタビューの第2回。前回の記事はこちらです。

(ライター:大西洋平)

RPA革命を自らのアドテク事業で体現

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):RPA事業に関しましてはあとでさらに詳しく伺うとして、2008年のリーマンショック以降は他にも新規事業としてアドテクに手を広げていますが、これはどういった経緯からだったのでしょうか?

高橋知道代表取締役(以下、高橋):これは、会社設立以来のコンサルティングビジネスで、某大手企業クライアント様のアドテクに関する新規事業コンサルティングを手掛けていました。なかなかこのサービスは黒字化を達成できなかったのですが、それでもクライアント企業は体力があるので、リーマンショック後もコンサルティングを継続していました。しかし、ついに2012年になってエグジットすることとなり、僕たちが引き継ぐことになったのです。事業譲渡という形式ではなく、僕たちがセグメントという子会社を用意して同じような仕組みのサービスを用意し、クライアント企業が事業をエグジットするのに際して、お客様の受け皿となりました。そして、他にもいくつかのサービスを引き継いでスタートしたのが僕たちのアドテク事業なのです。

小林:なるほど。まさに「コンサルがご縁で」という展開だったわけですか。御社がコンサルティングして立ち上げたサービスでなかなか軌道に乗らなかったものを、クライアントから顧客ごと引き取ったという流れですね。

高橋:そうです。クライアント企業様のエグジットをソフトランディングさせるのがその目的でした。もっとも、まさしく「タダよりも高いものはない」で、それから先が大変でしたけどね。すぐに強烈な赤字が発生したので総合サービスは断念し、将来的に伸びていく分野であると同時に僕たちが勝てる分野だけに絞り込んでいきました。その結果、医療の分野に特化する格好となったわけです。10数人いたスタッフも2〜3人に縮小し、医療系以外はすべて撤退したうえで、その分野でナンバーワンをめざしました。もう1つ、徹底的に進めたのがサービスのロボット化です。いわゆるアフィリエイトなのですが、ロボット(ソフトウェアロボット)の導入によって効率化を追求しました。

小林:そうしますと、セグメントという子会社が御社のRPA事業のユーザーともなっているということですね。

高橋:その通りです。まさしくRPA革命を自分たちのアドテクという事業において体現したわけです。

小林:RPAを導入すると、どれだけビジネスの効率化を図れるのかをその効用を証明してみせたということですか。

高橋:そうです。だから、僕はアフィリエイト事業だとは思っていません。あくまでロボット事業であると、自分の中では位置づけています。

小林:一方、リーマンショック後に立ち上げた3事業の残る1つは、子会社のリーグルが展開しているセールスのアウトソーシングですね。

高橋:ええ。それぞれ苦労する場面もありましたが、3事業はいずれも成功に導くことができました。

小林:同じくリーマンショック後に挑んだ中国への進出はいかがでしたか?

高橋:当初は好調に推移していたのです が、途中から苦戦するようになりました。どうしても中国では日本企業が劣勢に立たされ気味で、いろいろと手を打ったのですが、3年前に撤退するという意思決定を下しました。

RPAを文房具感覚で使いこなす時代が訪れる!?

小林:この辺りで、御社の主力事業であるRPA事業のほうへ話を戻したいと思います。RPAは注目を浴び始めていることもあって、世の中にはいろいろなツールが出回ってきていますが、御社はすでに高いシェアを獲得しているようですね。たくさんある中で御社が選ばれるのは、どういった理由からなのですか?

(RPAホールディングス「成長可能性に関する説明資料(1/2)」より)

高橋:その答えは非常に簡単です。まず、2016年の時点でRPAを手掛けている他のプレイヤーは存在しませんでした。それに、FA(ファクトリー・オートメーション)も然りなのですが、ツールに関するテクノロジー以上に肝心なのは運用です。低スペックのロボットを用いていても、それらを適切に運用することで生産ラインを効率化し、生産計画を大きく変えられます。現場においてノープログラミングで誰でも簡単に運用できることこそ、最も求められているものです。

小林:そうすると、ユーザーが選別するうえでのポイントは、ツールよりも運用面にあるということですね。

高橋:そうです。運用にあります。あとは、ロボットのガバナンスですね。経理に総務、人事などといった業務の違いによって、ロボットがどこまで踏み込んで処理を行うべきかが異なってくるものですから。業務に応じて、適切なロボを選択することも重要となってきます。

小林:そうしますと、すべてを自社開発にこだわるのではなく、外部のツールを上手く組み合わせて最適化するという運用面を最重視するアプローチだったのでしょうか?

高橋:その通りですね。ロボットが止まってしまうこともありえますから、そういったトラブルへの対応まで含めた運用面が僕たちの強みです。

(RPAホールディングス「成長可能性に関する説明資料(2/2)」より)

小林:顧客のニーズに応じて様々なツールを統合してパッケージ化していくという意味では、イメージ的にキーエンスのビジネスにも近い気がしますね。ただ、RPAに関して、ユーザーとなる企業側にもそれなりのリテラシーが求められてくるのでしょうか?

高橋:ウェブなどと同じで、使うこと自体は簡単ですよ。文房具のような感覚で、まずは気軽に使ってみていただければと思っています。使うと、すぐにその効果がわかりますから。30年前のPC、20年前のネット、10年前のスマホのように、最初はある種の違和感があったとしても、次第に手放せない便利な道具になっていくはずです。

労働人口が減少する日本にロボットは不可欠

小林:1つの業務に導入してその効果を目の当たりにしたら、他の業務にもどんどん広げていきそうですね。

高橋:おっしゃる通りです。足元でも紙の資料にまつわる新製品など、サービスのさらなる拡充を図ろうとしています。

小林:なるほど。OCR(光学的文字認識)系の技術ですね。御社のRPAを導入する企業のイメージとしては、やはり大量の書類を扱う金融機関などがすぐに思い浮かぶのですが、実際のところはいかがですか? 雑多な処理が求められる中小企業までカバーしているのでしょうか?

高橋:ご指摘の通り、最初の頃は金融機関が中心でしたが、最近は業種に偏りが見られなくなってきました。それから、バックオフィス業務だけでなく、営業系の業務でも採用が進んでいますね。

小林:RPAという分野において絶好のポジションに位置づけている御社にとって、脅威となりうるのはどのようなことなのでしょうか?

高橋:僕たちが一番恐れているのは、目の前のRPAブームで導入された企業様の期待値と大きく乖離した結果、いわゆる失敗事例が多発して、ブームから幻滅期に入る事です。始まったばかりの技術なので、提供者側のノウハウにも大きく左右される事もあり、インターネットブームの時と同様に、多くの失敗ケースが発生する事になるかと思います。我々のチャレンジは、幻滅期を乗り越えて本当にお客様に使って頂けるものにしていかなければならないという事です。

小林:いわゆる「幻滅期」を経て本格的な「安定期」に入るという事ですね。では、御社の今後の成長戦略の方向感としては、どのようなものを思い描いていますか? 新規導入件数をどんどん増やしていくのか、それとも、すでにユーザーとなっている企業において運用の範囲をさらに拡大させていくことを優先するのでしょうか?

高橋:新規契約獲得のための営業やコンサルティングに関しては、パートナー企業との協業が始まったばかりの段階です。まずは、個々のユーザー様に提供しているサービスを着実にスケールさせていくために努力してまいります。そのうえでも、RPAの適用領域の拡大にも力を入れていくつもりです。

小林:今後の事業構成比のイメージとしては、いずれのウエートが高くなっていくのでしょうか? やはり、RPAということになりますか?

高橋:何と言っても、ロボット事業ですね。ロボットは圧倒的に生産性が高いですから。24時間、365日、つねにリアルタイムで監査業務を行うことさえ可能となります。とにかく、ロボットを導入すると生産性が30%、40%といったレベルで向上するわけです。日本では労働人口が減少の一途を辿っていくだけに、僕たちはロボットによって生産性を最高水準まで高めていきたいと考えています。

小林:先程、「アドテク事業も実はロボット事業である」とおっしゃられたように、御社はあくまでも、すべての事業においてロボットによる生産性向上を希求なさっているわけですね。ある意味、御社にとって最高のユーザーは御社自体だと言えるかもしれません。本日は貴重な話をお聞かせいただき、本当にありがとうございます。

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