INTERVIEW

【ロードスターキャピタル】フェアな不動産マーケットを作る挑戦 Vol.2

2017.11.15

クラウドファンディングの不動産マーケットを作る

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):御社がRenren社との縁でクラウドファンディング事業を始められたというエピソードは非常にユニークですね。 近年、国内外でソーシャルレンディング事業者に対する信用問題も生じ、ソーシャルレンディングの一時の盛り上がりもやや減速しているように感じますが、そんな中、ロードスターキャピタルのOwnersBookは着実に成長していますね。個人的には、御社の金融プロフェッショナルとしての着実なやり方に時代が追いついてきたという印象を受けますが、この点についてはどのようにお考えですか?

岩野達志(ロードスターキャピタル株式会社代表取締役社長。以下、岩野):ソーシャルレンディングがある種のブームで、かつまだ業界全体的にそれほど大きな問題が生じていなかった頃は、「ロードスターは利回りが低すぎる」という声もありました。ところが参入業者が増え、行政処分を受ける会社も出てきたことで、少し雰囲気が変わってきたのかなと感じます。そうやって管理が杜撰な会社が出てくると、投資家もリスクについてより注意するようになりますよね。ただ、今だと規制上、商品設計の内容がどうしてもブラックボックスにならざるを得ません。投資家の立場としては、運営会社がしっかりしているかどうかでリスクを判断するしかない状態です。

我々はもともと、上場する予定はなかったんですが、運営会社がしっかりしているということを客観的に理解してもらうためには、上場というプロセスを経て、公開企業として適正な監査を受けて情報を開示するしかないと思ったんです。それが、クラウドファンディング自体の発展にも寄与すると考えていました。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表):上場の理由として「社会からの信用を得るため」というのはよく聞く話ではありますが、御社ほどそうした理由に納得感のある上場は珍しく感じますね。

村上:1~2年待っていれば、今御社が仕込まれているエクイティ型クラウドファンディングなど、いくつかのマイルストーンにミートするタイミングが来るのに、なぜ敢えて今の時点で上場したのかを伺おうと思っていたんですが、そういう理由だったんですね。

岩野:確かにロードショーを回っていて、機関投資家さんに「1年待てばちゃんとバリュエーションがつくのに、なんで待たないの?」という質問も受けましたね。でも、我々からすればクラウドファンディングのマーケットを作ることが優先なんです。自分たちがエグジットしたいわけじゃありません。たとえバリュエーションが低くても上場して、不動産のクラウンドファンディングに対する世間の認知を高め、お客さんを開拓してマーケットを作りたかったんですよ。まあそう説明しても、投資家さんからは「じゃあうちじゃ、そんなに評価できないね」と返答されてしまうんですけどね(笑)

村上:短期的なバリュエーションではなく、長期的な視点に立ち、少しでも早く上場しようと考えられたわけですね。

岩野:まずはクラウドファンディングのマーケットを作ることが第一です。皆さんが思っている以上に、不動産のクラウドファンディングのマーケットは大きいと我々は考えているんです。日本の不動産業界は、REITだけでも10兆円を超えているマーケットなんです。そのうちの何%かがクラウドファンディングに回れば、数千億円のマーケットには成長するわけですよ。だから、そこの資金調達の仕組み作りさえできればものすごいチャンスがあると考えています。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より

しかも、個人の方もクラウドファンディングに興味を持ち始めていて、マーケットを作るタイミングとしてはバッチリ合っているわけです。だから、上場して信頼できる事業者として業界を切り拓いていくことがマーケットの発展にも繋がるし、結果的に自分たちにも返ってくるんじゃないかと考えています。

不動産投資を個人にも開かれたフェアなマーケットに

村上:不動産業界のプロフェッショナルな方々と対面でやりとりするコーポレートファンディング事業と比べて、個人の方とオンラインでやりとりするクラウドファンディング事業はどのような特徴がありますか?

岩野:個人がコーポレートファンディングのような投資をしようと思っても、現状ではそういう商品がありません。日本のREITのコンセプトは長期保有してその利益を配分するビジネスモデルなので、1年や3年でバリューアップする機関投資家向けの商品のようなものはないんです。 株式やFXといった金融商品は、ネットの力でよりフェアなマーケットになっていますよね。機関投資家も個人も、デイトレードをした際のトレーディングの格差ってほとんどないのに、不動産だけは非常に格差が大きいわけですよ。

我々は不動産の世界においても個人が参加できるようになるように、情報公開も含めてフェアなマーケットを作りたいと考えています。そのための仕組みづくりをしているんです。エクイティ型の商品にしても、個人はワンルームマンションを買って、アパートを買ったら次はREITしか投資対象がありません。この間がないんですね。銀座のオフィスを100万円で買うという選択肢があっても良いだろうと思うのですが、今はその選択肢がない。そこで、クラウドファンディングを通じたマーケット作りをしてその間を埋めていきたいんです。

村上:不動産投資を長年見てこられた、御社の経営チームの方々ならではの視点ですね。世の中の不動産の中には、個人にとって投資しづらいものがあると。日本にJ-REITが登場してから15年余り経つわけですが、次の段階として新たなマーケットが立ち上がるのは必然的な流れなのかもしれませんね。

岩野:そうですね。海外の動向、ITのコンセプト、不動産の特性といった点から考えても、確実に作ることのできるマーケットだと考えています。ただ、拙速に進めると、ファンドビジネスが全部クラウドファンディングに取って代わられるリスクもありますし、悪意を持ったクラウドファンディングの事業者がいたら、個人投資家から集めたお金を持ち逃げされてしまうリスクもあります。いろいろ影響が大きい変化ではあるので、監督省庁がそうしたリスクを気にしているのは十分に理解しています。我々としては慎重に広めていこうと思っています。

貸付型からエクイティ投資型へ、着実に広がる不動産クラウドファンディング市場

村上:御社の「成長性に関する説明資料」を見ると、今後はエクイティ投資型クラウドファンディングに参入していくと述べられていますよね?エクイティ型は貸付型に比べてリスクも高い一方で、リターンもより大きな投資商品であり、ニーズも非常に大きいのではないかと思います。どうしてエクイティ投資型よりも先に貸付型からクラウンドファンディング事業を始められたのでしょうか?

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より

岩野:貸付型のライセンスを金融庁が比較的早めに交付したといった事情によるものです。ただ、貸付型のクラウンドファンディングの内容も、当初予定していたものよりは複雑になってしまっています。例えば、貸付先は特定してはいけない(「覆面化」)とか、貸付先は複数にしなければいけない(「複数化」)といった行政からの要請があるんですね。要は貸金の仲介ではなくファンドとしてきちんと運用しなさいという方針が定められているのです。ただこのやり方だと、どのような貸付先に融資をしているのか、案件の内容を隠すことができるので、逆にそれを悪用することもできてしまいます。案件を全て覆面化・複数化することが本当に良いことなのかどうかといった判断は、将来的に変わっていくかもしれません。 これがエクイティ型になると全く逆で、案件の全ての情報を開示せよということになります。我々はその方が健全だと考えていますし、マーケットが広がり出せばエクイティ型の方が広がる余地があると思っています。投資対象物件が特定できる方がシンプルですし、投資家にとってもわかりやすいですよね。日本の不動産市場は世界的に見ても優良かつ恵まれたマーケットなので、エクイティ型の案件が広まっていけば、5%や10%の利回りの商品はどんどん出てくると思います。

村上:そのためには、国からお許しを得る必要があるということなんですね。

岩野:はい、エクイティ型の案件を提供できるよう関係省庁との調整を続けています。エクイティ型の案件としては、例えば第一種少額電子募集取扱業者のライセンスのもと、株式投資型のクラウドファンディングサービスを行っている他社さんはすでにありますが、そのライセンスでは一人50万円までとか年間1億円までといった少額要件が設けられています。我々がやりたいのは、そのような少額要件のないエクイティ型で、投資家にとってお好みの案件があれば金額要件に縛られず投資できるような仕組みづくりです。 とはいえ、前例の無いビジネスモデルですので、関係省庁もどうしても審査に時間がかかってしまうというのが現状なんです。

【ロードスターキャピタル】不動産屋からクラウドファンディング事業者へ Vol.1

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