INTERVIEW

【ジーニー】リーンからグロースへ。世界をハックする戦略 Vol.3

2018.01.17

「アドテクノロジーで世界を変える。」をミッションに掲げるジーニーの工藤社長に同社の可能性を伺うインタビュー(全3回)の第3回。前回の記事はこちらです。

空白地帯の東南アジアから世界へ

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):かなり早い段階で海外、具体的には東南アジアに進出されていますね。なぜあの段階で海外、しかも東南アジアを目指されたんですか?

工藤智昭(ジーニー代表取締役社長。以下、工藤):実はもともと、日本でアドテクのビジネスをやりながらメールとスカイプだけで海外に営業していて、拠点を作ればすぐに黒字化できるだけの売上を持っていました。それをどう伸ばしていこうか、という議論の結果、海外に進出する決断になったのですが、シンガポールと同時にニューヨークにもチャレンジしていたんですよ。

村上:え、そうだったんですね。

工藤:アメリカは難しいと一瞬で気づいてやめました。同時に、東南アジアの方は空白地帯だということもすごく感じました。

村上:外部から見れば進出タイミングが早く見えているだけで、実はすごくリーンに売上を立ててみるということをやっていたんですね。更に「世界一を狙う」とも仰ってますが、それはどのような意図があってのことなんでしょうか?

工藤:ファースト・プライオリティは、東南アジアやこれから展開したいと考えているインドで勝ち抜くことに置いています。実際にセールスで色んな国に行って、パブリッシャーや顧客の声を聞いて、競合がどれくらい強いかを体感すると、インドは結構大変そうなんです。インドのローカルな企業はすごく優秀だし、世界的な企業からお金も集まってきているので、展開する際は本腰入れてやらないといけないなと思っています。

一方で、我々のプロダクトの競争力が上がってきているので、以前よりはアメリカでも通用するようになって来ているという手ごたえもあります。先々を見ればヨーロッパやアメリカでもやれるだろうとも思っているんです。

ジーニー「成長性に関する説明資料」より

村上:アドテクで地域拡大を考えれば、地域ごとに旬の技術が違うこともあると思います。地域ごとの技術トレンドの変化やローカライズにはどう対応されていますか?

工藤:確かに東南アジアにおいては、トレンドのタイミングがずれますね。日本で通じたプロダクトが海外でも強力だと思われる場合もあるし、日本でしか使えない場合もあります。プロダクトを強くしていくことがそのまま海外での成長に密接にリンクしているわけではないんです。

村上:ローカライズが必要だとすると、中期的なトレンドを見極めてフォーカスするというお話ですが、地域別にフォーカス課題を見つけて対応するマネジメントが必要になるということですね。

工藤:そうですね。今は、1年後を重要なマイルストンとしておいていますが、安定してくると2年後のグロースのためにどこを取るのが一番いいか、という議論になる可能性もあります。そうすると海外ももう少しやりやすくなるのではないかと思っています。

上場をてこに世界戦略を加速させたい

村上:このタイミングで上場された理由はどうしてなのでしょう?

工藤:いくつか理由があるんですが、国内のアドテク事業の継続的な市場シェア拡大が見込めており、安定的に成長して利益が出ている、つまり収益の基盤が安定していること。それから海外も伸びていて、ほぼ黒字化の水準になってきていること。新規事業だったマーケティングオートメーションも伸びてきて黒字化が近づいてきており、今後、中長期で継続的なグロースを目指せることです。それらを考え、今がベストのタイミングだと考えました。

村上:なるほど、基盤事業の安定性と成長性のバランスがよい頃合いと判断されたのですね。ところで、当期純利益が赤字になったのは投資有価証券評価損が原因だと思いますが、何への投資だったんですか?

工藤:海外で営業組織とテクノロジーを確保するために買収をしていたんですが、その際の株式の評価損です。その件を通じて、買収の難しさがわかりました。「勉強」と言うと怒られますけど、買収において何が大変かわかりました。

でも、今後M&Aをやらないということではありません。先ほどは自社開発が優先というお話をしましたが、一方で特に自社で持っていない要素や技術を持っている会社や、ユニークなプロダクトを持っている海外の会社があるかもしれません。だから、M&Aという手段を活用しないと上場の意味がないだろうなと思っています。

「世界一を狙う」成長戦略

村上:今はSSP、DSPが主軸だと思います。MAJINも海外戦略もあります。今後の成長を見据えて、本当にフォーカスしていきたい部分はどこでしょうか?

工藤:DSP、SSPの市場はまだまだ伸びると思っていますし、マーケットシェアもまだまだ取れると思っています。それに、メディア側は儲かっていない会社が多いので、広告主にとっても付加価値の高い取り組みをしながら、業界に還元していきたいです。

ただRTBの市場は1000億程度なので、その先を考えてマーケティングオートメーションなどマーケティングの新しい分野に進んでいる感じです。

村上:ソフトバンクさんのようにOEM型でプラットフォームを提供されているケースもありますが、その場合データは共用してやられているんですか?というのも、OEMの狙いがデータにアクセスすることなのか、それとも売上を作るのに手っ取り早いからなのかお聞きしたいと思いまして。

工藤:相手先によって、共有している場合としていない場合があります。

OEMを積極的に展開しているのには色々な理由があります。海外でもOEMをやっているんですが、その場合、提供先の営業組織やグループのメディアを使えることもあり、自社の直販でやっているより伸びが速いと言うのはあります。

村上:他に成長戦略として、例えばIoT分野。この分野でアドテクがどう貢献できるとお考えですか?

工藤:屋外広告がデジタルになってインターネットに繋がったり、タクシーの中で時刻や位置情報に合わせてアドが出せるようになったりしていて、今後も色々なデバイスがインターネットにつながって広告がデジタルに置き換わっていくだろうとは思います。なので、ある程度は期待していて、その時に色々な会社と連携してやっていくんだろうなという展望はあります。例えば、電車の中に配信するなら鉄道会社と連携が必要ですし、今の日本ではいろいろな企業がそれぞれの分野でシェアを持っているので、そういう企業と組んでいくことが大切だと思います。

村上:最後に「世界一を狙う」ための心構えのようなものがあれば教えていただけますか?

工藤:ちゃんと価値のあるものを作っていって、それが受け入れられるから世界に広がっていく。その積み重ねで世界一に到達したいと思います。

村上:本日はありがとうございました。経営チームとして技術や世界にアンテナを張りつつ、中長期の視点を大事に経営に取り組まれているのがよくわかりました。ジーニーの世界戦略、今後も期待しています。

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