INTERVIEW

【クックビズ】飲食業界で高い収益性を実現する人材ビジネス Vol.1

2018.01.26

「フード産業を人気業種にする」をビジョンに掲げ、飲食業界に特化した人材サービスを展開するクックビズ株式会社。世の中に人材サービスを展開する会社は数多ありますが、「飲食人」の志向に寄り添った情報提供を行うことで、強い支持を集めています。「日本の飲食は世界で勝ち続ける産業になれる」という信念をお持ちの藪ノ社長に、クックビズの人材サービスや「食」のSNSアプリ「Foodion」を通じた今後の可能性について、お話を伺います。 事業の詳細については、「成長性に関する説明資料」をご参照ください。

藪ノ賢次(やぶの けんじ)

大阪府出身。2004年大阪府立大学工学部卒業後、すぐに起業。2007年クックビズ株式会社を設立。「フード産業を人気業種にする」をビジョンに、飲食店とそこで働く人材のミスマッチを無くすため採用活動・転職活動を支援する人材サービスを行う。また、飲食人材のプロによる『食』のキュレーションサイト「クックビズ総研」、飲食のプロをつなぐ「食」のSNSアプリ「Foodion」を運営。多角的な方面からサポートを行う。

2007年創業のクックビズ株式会社は、飲食業界に特化した人材サービスを提供する企業。大阪を中心に東京、名古屋に拠点を設けて、事業を展開中。『フード産業を人気業種にする』のビジョンの下、人材サービスのみに留まらず、様々な事業開発にも取り組み、SNSアプリ「Foodion」の提供や研修事業サービス「クックビズ フードカレッジ」も展開。2017年11月に東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たし、今後も業界の発展に寄与すべく、積極的な事業展開を進めている。

未成熟な飲食業界の転職市場に狙いを定めた

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):まずはクックビズがどのようなビジネスを手掛けているのかをお聞かせください。

藪ノ賢次(クックビズ代表取締役社長 CEO。以下、藪ノ):やっているのは飲食業界に特化した人材サービスです。会社を立ち上げたのは2007年で、その当時、医療や介護といった分野で特化型の人材サービスが活況だったんです。それを見て、他の分野でも特化型の人材サービスは出来ないかと考えました。「日本といえば食でしょ」という本当にシンプルな発想で、日本で飲食業界特化型の人材サービスを創れば、世界を狙えるサービスになるのではないかと思ったんです。

また、飲食業界の一番の課題は人だという考えも持っていました。飲食業界の人材サービス、というとアルバイト向け情報サービスのイメージが強いと思いますが、それに比べて、転職者向けの情報サービスはコンテンツが乏しかったので、そこで何か価値を提供できるのではないかと考えたんです。飲食業界の転職ではミスマッチが原因と考えられる離職が多かったので、まずは人材紹介というエージェントサービスによってミスマッチを防ぐことを考えました。

飲食業界では求人企業にも採用ノウハウがなく、また求職者にも転職ノウハウがありませんでした。面接の冒頭でいきなり「いつから出勤できますか?」といった会話が交わされるような状況だったんです。職務経歴書を書くというような、ホワイトカラーの転職市場では当たり前の転職の作法も知られていなかったので、まずはそういった作法を伝えることから始め、コンサルティングを行ってきました。この10年間、不満足な転職・採用を減らすことが我々の介在価値だという考えに基づいて、経営をしてきました。売上で言うと、全体の6割強を基幹ビジネスである人材紹介が占めており、それ以外に求人サイトも運営しています。紹介と情報サイトの両方をやっているのが我々の特徴だといえます。

ホワイトカラーが利用するような転職エージェントは人材バンクを持っているわけですが、そこに飲食業界のデータはなかったので、自分たちで求人サイトをつくって応募者を募り、応募してきた人たちのデータを集積することで、我々オリジナルのデータベースをつくっていきました。そうすることで、企業が求職者を直接スカウトする機能も提供できるようになったのです。

朝倉:大学を出られて比較的早い段階で起業されていますが、昔から起業熱のようなものをお持ちだったんですか?

藪ノ:そうですね。父親が兄弟で20人くらいの町工場をずっとやっていて、自営業の一家で育ったこともあり、卒業後の進路を就職に限定する感覚はなかったですね。大学を卒業して1年くらいフリーターをしていたのですが、やっぱり起業かなと思い、まず有限会社を作ってECサイトや携帯電話の代理店などいくつかの事業をやってみたんですが、どれも面白くなくて、たどり着いたのがクックビズだったんです。

収益性の高いビジネスモデルへの進化

朝倉:初期は関西中心に事業を展開されていったと思うんですが、そこから地域を拡大していこうと思ったのはいつのタイミングだったんですか?

藪ノ:2012年が一番の転機でしたね。地域拡大という意味では、2012年11月に恵比寿に拠点を出しました。2012年には、他にも、求人広告事業の立ち上げも行い、求人サイトのフルリニューアルも行い、ジャフコからのファイナンスを入れ……、と、多くの出来事がありました。その時に打った施策が5年くらい経って花開いたという感覚があります。

朝倉:目論見書を見ると、2012年と2013年の11月期は赤字がギリギリないくらいの範囲内で推移していますが、翌年に大きく赤字を掘って、その翌年からぐぐっと成長しています。このときはどのような状況だったんですか?

藪ノ:新規事業も展開していたし、そのタイミングで人が爆発的に増えたというのもありましたが、利益が出にくい体質だったというのも事実です。人材ビジネスは手数料で売上を立てているわけですが、年収が高ければ手数料率も高くでき、手数料も多くなります。しかし飲食業界は年収も低くて手数料率も高くしづらかったので、平均の紹介単価は50万円程度でした。通常のホワイトカラー転職の場合、紹介手数料は200~300万円になると思うので、その水準からすると我々の手元に入る手数料は4分の1くらいでした。

そこで、どうやって収益性を高めていくか考えて取り組んだのが分業制でした。人材紹介のビジネスモデルは、コンサルタントが一気通貫で、企業側の対応も求職者の対応もするのが一般的です。クックビズではそうした工程を4つの職種に分割しました。まず応募があったら本社のコールセンターで一括して連絡を受け、全国の応募者に架電をして面談の設定を行います。面談をするのはコンサルタントで、コンサルタントは応募承諾を取るまでが仕事です。そこから営業に渡して営業が企業側の対応をします。コンサルタントと営業には、それぞれアシスタントを付けて事務方の仕事を処理します。

この4職種に分けることで成約数を上げて行こうというのが狙いでした。ホワイトカラーの人材紹介の場合、コンサルタント1人が月に2~3人くらい成約するんですが、我々は平均成約数をその3倍くらいに上げました。分業化して一人あたりの成約数を最大化することで、ナレッジが溜まりやすくなり、それが後から採用した人の育成の早期化にもつながります。こういった、色々な掛け算によって、ここ2年くらいで収益が大きく出たということだと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上): KPIを細かく分解して収益モデルをつくって経営されてきたということですね。結果的に当時の想定を超えて成長されてきたと思いますが、その実現の原動力となったKPIはなんだったのでしょうか?

藪ノ:一番想定より伸びたのは単価ですね。人手不足で年収も紹介料も上げないと人が採れなくなったんです。クックビズからの紹介実績が積み上がり、顧客の信頼を得たことに加え、市況が追い風となりました。結果、ホワイトカラーと遜色のない紹介料率にまで引き上げられたことが、利益に繋がっています。

村上:外部環境の後押しもあっての伸びだったんですね。飲食という人材サービスでは未開拓の市場だったからこそ、紹介料率を引き上げるチャンスが潜んでいたということですね。コンサルタント当たりの経験件数を引き上げたことで、コンサルタントのクオリティも向上し、クックビズの評判とともに収益率が上がるという好循環が生まれたんですね。

藪ノ:我々は、市場の単価が上がる前に参入して、トップシェアを取れていたので、「飲食の人材紹介ならクックビズでしょ」という評判は得られていました。競合もいたんですが、彼らはシステムに投資せず、いずれ売上も頭打ちになったと聞いているので、我々はシステム投資をしたことで再現性が上がったことが競争優位になったんだと思います。コンサルタントが入ったら何ヶ月でこれくらいの売上が立つっていうのがほぼ読めているので、非常に精緻な予算が立てられるんです。

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